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ロックバンドが街にやって来ない

UNISON SQUARE GARDENとの不明瞭で不確実でもたまんない繋がり

4月18日、いつもの様に朝に目を覚ます。昨日は金曜日だったし、夜更かししすぎたので、もはや昼前といった方が適当だけど。

昨今のコロナ騒ぎで仕事も在宅勤務になり、休日はこんな風にゆったり過ごす時間が増えた。

相変わらず油断できない毎日だけど、疲れもストレスも溜まりにくい状況になり、穏やかな気持ちでいることが増えたのは少し助かっている。

ほぼ日課となったSNS巡りも、自粛期間の影響で賑わうことは少なくなったが、この日は少し違った。

みんながライブに対して思いを紡いでる。

そこで思い出す。

ああ、今日はftHの最終日だったか。

本来ならば、この数時間後にはライブハウスにいるはずだった。
今はちょうどバタバタと準備を始めてる頃だろうか。

4月18日、Zepp Osaka Baysideで行われる予定だった、UNISON SQUARE GARDENの自主企画「fun time HOLIDAY8」に参加するために。

けれどそれは残念ながら開催を見合わせることになってしまった。理由は前述で触れたコロナウィルス流行のためである。

このfun time HOLIDAY8(以下:ftH8)は、UNISON SQUARE GARDENが親交のあるバンドをゲストで呼び、いわゆる対バン形式で行われるライブだ。

ユニゾンが今一番ライブをやりたい相手を自分たちのフィールドに招き、ともにライブを作り上げる。
普段のワンマンでは見ることのない熱量で、パフォーマンスをぶつけるバンドを見ることができるのが魅力の企画である。

ライブツアーとは一線を画す立ち位置ゆえに、普段はやらないレアな曲を披露してくれたりもする。

とはいえ僕自身はワンマンライブに夢中で、時間的だったり、地理的な理由だったりで今回のftH8が初参加となる予定だった。

対バン相手はgo!go!vanillas、一度フェスで見た程度の知識しかなかったが、ちょっとした縁で見ることができるライブに対して期待値は低くなかった。

何よりUNISON SQUARE GARDENとの化学反応が一体どういった作用をもたらすのか…このライブならではの楽しみもあって、数ヶ月前から待ちきれない気持ちが溢れていた。

UNISON SQUARE GARDEN自身も昨年の15周年イヤーのお祝いムードから一転して、16年目の今年は"いつも通り"の彼らに戻ることを高らかに宣言していた。

今回はそんな通常営業の彼らを久々に見ることができるライブだった。
祝福のなかでの多幸感によって頭の隅に隠れていた、あの"ちょうどいい温度感"を思い出せる空間は、きっと今の僕が一番求めている場所であったと思う。
    
ロックバンドが街にやって来ない。

改めて文字にすると、その悲しさや悔しさが浮き彫りになってしまう。

僕のようにライブを生きがいにしている人間からすれば、この事実はけっこう重たい。

ベットでゴロゴロしながら聴く音楽も、お酒を飲みながら見るライブ映像も、確かにこれはこれで悪くない。

でも、大好きなバンドが目の前にいて、最高に楽しい音楽を鳴らしてくれる。
この幸せに勝るものはまだ見つけられそうにない。

ユニゾンの楽曲の大半を作詞作曲している田淵智也(Ba.)は、よく"街"という言葉を多用する。歌詞でもそうだし、普段の言動でも当てはまる。

「ロックバンドは君の街でライブをしなければならない」

田淵のブログでの発言であり、普段からよく似たことを口にしている。
そのためにまだ行けてない街のライブを組むし、新たに追加公演だって設定してしまう。

ライブが大好きだからこそ、その楽しさを知っている、もしくは知ろうとする人たちのための環境を最大限に整える。

決して「来てくれ」「待ってる」なんて言わないけれど、ライブに行きたい人が自由に参加できるようなやり方を常に模索しているのだ。

それはもちろん僕らのためじゃない。
彼の「どうだ、ロックバンドは楽しいだろう?」という思いを、他者と共感、もしくは知って欲しいというまさしく自分本位な考えからだ。

けど、そんな思いに心動かされる人が多いのは事実であるし、実際に取り組みも成果としても現れている。

何より自分本位でも、それを叶えるために相手視点で物事を考えることができる。
そんな田淵のやり方が僕は大好きだ。

音源を作り、リハをして、僕らの街でライブをする。それが楽しい。

UNISON SQUARE GARDENの活動の根幹である。

"僕の住んでいる街のライブハウスやホールに来てくれる。"

彼らが飽きるか死ぬかでバンドをやめない限りは、当たり前にそれが続くと思っていた。

だけど、そんな考えは唐突に否定された。

今まであったものが突然なくなってしまうのは、やはり寂しい。

自分のために音楽を鳴らし続ける彼らに、途方もなく勇気をもらっていたから。

目まぐるしく変わる現実のなかで、自分の日常の象徴である"ロックバンド"を求めるのはある意味必然なのかもしれない。

もしかしたら事態が収束しても、今まで通りライブを楽しむことができないのかもしれない。
そんな不安を振り払いながら。
    
とはいえ、このご時世でも視点を変えれば、見えるものはたくさんある。

例えばライブハウスでの無観客での配信だったり、動画サイトで過去のライブ映像を投稿したり。

アーティストによっては、家で一緒にセッションできる動画を作ったりするなど…様々な工夫を凝らして、家にいるしかない僕らに楽しみを提供してくれる。

平常でいられない現状のなかで、少しだけ誰かの希望になることができる…逆境でも音楽の力が垣間見える瞬間だ。

そんななか、UNISON SQUARE GARDENはどうしてるいるんだろうか。
単刀直入に言えば、表立って特別なことはしていない。

メンバーが他バンドや個人で何かを提供していることはあるが、ユニゾンとして現状に向けての発信は今のところない。

もちろんこれからに向けて、水面下で何か動いてる部分はあるのだろう。
ただ、このライブができない状況に対する"救い"のようなものは存在しない。

それが僕にとっては、たまらなく嬉しかったりする。

ああ、こんなときでも"ちょうどいい温度感"が心地よいなって。

誤解がないように記しておくが、この状況に対して、自分ができることに全力で取り組むのはそれだけで素晴らしいと思う。

動かなければ何も変わらないし、後悔だって残るだろう。
きっと大半の人間はそう感じてしまう。

けれど、それは否が応でも自分の生き方に"変化"と"適応"を求められてしまう。

当たり前にあったものが一時的にでも消えてしまう…字で表すだけでも悲しいことだ。

逆にこんな世の中でも、変わらないものがあれば…それが"救い"になる人間もいる。

いつかのラジオで、「世界の終わりにライブをするか?」というメールが来ていた。

そこで田淵は決まっているライブならやる、と答えていた。

最後にやる曲について聞かれると、決まったセットリストで行うと話していた。
社会的現象には左右されないと。

僕たちは今変わることを求められている。当たり前にできていた外出はできないし、ライブに行くなんてもっての外だ。

リアルタイムで苦しんでいる人もいるだろう。

隣の誰かが明日いなくなる不安もあるだろう。

その不安が他人への批判に繋がってしまうことも。

もちろん楽観的な視点でいるだけでは危ないし、きちんと現状を受け止めるだけの知識と準備は必要だ。(田淵的にいえば正しく恐れる…だろうか)

それをした上での"普段通り"に行き着く、必要以上に恐れない…僕にとってこれほど頼もしい事実はない。

ずっと彼らは自分たちにとって、"面白いこと""ワクワクすること"をやろうと15年間バンドを続けてきた。

時代や流行に縛られることなく、自分たちの音楽を研ぎ澄ませてきたからこその現在がある。

だから、きっと"今日が辛いから明日も辛いままだなんて思うな"ぐらいの気持ちで、未来の"面白いこと"に目を向けている。

ロックバンドは明日も明後日も生きている。強い決意に満ち溢れた存在だから。

もちろんこれから時代に合わせた変化は数多く求められると思う。

それが"面白いこと"に繋がっていくなら、彼らはきっと受け入れるはずだ。

でも、根っこの音楽性とか考え方はきっと変わらないだろう。

それは僕が最も彼らを愛している部分だ。

どんなに大変な時代でも、自分の好きなものが残り続けると信じられる。
これほど生きていく上での活力はない。

僕と彼らは、言葉や文字で何かをやりとりすることは今後ないと思う。

ただ、彼らが勝手にでかい音を鳴らし続け、僕がそれを勝手に受け取る。

そんな"不明瞭で不確実でも たまんない"繋がりは早々途切れることはないと断言できる。

今はそれだけで充分だ。
    
そうは言っても、再び彼らの音楽に触れるためにも、僕だって準備をしなくてはいけない。

とりあえず音楽聴くのにもお金はいる。

節約のために自炊でもしようか。

…何だか急に現実的な話になってしまった。

そうだ、前々からやりたかったギターでも始めてみよう。

楽器なんてロクにやってこなかったけれど、練習すれば曲の受け取り方が変わるかもしれない。

もしかしたらユニゾンの曲を弾けるようになるかも?

…一体いつの話になるやら。

おっと、いつの間にか未来の楽しいことにも目を向けられるようになってきた。

"まだ世界は生きてる"

もうちょっとだけ愛することができそうだ。
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