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私達の帰る場所

THE BACK HORN、おかえりなさい

8月2日の夜、私はなかなか眠れないでいた。部屋の外からは月明かりが差し込む。空は曇っているけれど、満月に近いからだろうか、真夜中なのに、他の家の屋根や外壁、山の峰と空との区切りも見て取れる。風が通るように開けた窓からは、鈴虫の音が聴こえてくる。隣の部屋からは、母のいびき。

そう、私は今、確かに家にいる。
だけれど、なかなか眠りにつけない高揚感は、いつものライブ後の「それ」だ。

初めてTHE BACK HORNのライブに行ったあの日、結成20周年の武道館ライブがあったあの日、急遽駆けつけたカルペ・ディエムツアー鳥取米子laughsのあの日。

色んなライブを思い返しながら、ライブ後はいつもなかなか寝つくことが出来なかった事を思い出す。なかなか寝つけず、宿泊先のホテルで、ついスマホを触り、その日のライブの感想をツイートしたり、同じファンの感想を読み漁ったあの日。

その日々を思い出しながら、今日の高揚感を噛み締めて、改めて思う。
 
あぁ、THE BACK HORNの音楽が、ライブが帰ってきたんだな、と。

8月2日、THE BACK HORNの配信ライブ「KYO-MEI MOVIE TOUR SPECIAL スタジオ編」が行なわれ、それを観た私は強くそう思っていた。

前日に開催された、銀河遊牧会というファンクラブイベントで披露されたアコースティックミニライブも、アレンジが素敵でとても良いライブだったが、8月2日の配信ライブは、「これぞTHE BACK HORNのライブだな」という熱量のこもったもので、家で観ていても、ライブを観たという満足感は充分に得られるものなんだと実感した。

約8ヶ月ぶりとなる、THE BACK HORNのライブ。
 
一曲目は何の曲から始まるのだろうか。
ドキドキしながら、ライブが始まるその瞬間を待った。

メンバーがスタジオに入って、スタンバイをする。

白いシャツを着た将司を見て、懐かしさを感じる。白シャツは若い頃の山田将司の戦闘服だ。一時期、ライブではいつも白シャツを着ていた。ライブ前に白シャツにアイロンをかける将司の様子がDVDに収録されていた事を思い出す。アイロンをかけ、白シャツを着てライブに臨む。それが一つのルーティンだったのだろう。近年では、マニアックヘブンというマニアックなイベントでしかお目にかかる事の出来ないレアな服装になっていただけに、ついその衣装を、久しぶりのライブで着用した事に、何か勝手に意味があるのではないかと深読みしてしまう。

しかも、ライブの一曲目は、THE BACK HORN結成時に1番最初に出来たオリジナル曲「冬のミルク」だったから、尚更だ。

バンドを結成した頃、他のメンバーに「曲は作れるのか」と問われ、菅波栄純が作ってきた曲・冬のミルク。
この曲が生まれ、バンドが初めて演奏したその日、THE BACK HORNというバンドに本当の意味で命が吹き込まれたのではないだろうか。

だからこそ、夏なのに、一曲目に「冬のミルク」を持ってきた事には、驚いたと同時に、「この曲からTHE BACK HORNは始まったんだ」という強い想いを感じずにはいられなかったし、バックホーンのライブを画面越しだけれど観れている事に胸がいっぱいになった。

2曲目からは、アップテンポな曲を中心に、「これぞバックホーン!」と思わせる曲が盛り沢山で、バクホン濃度120%!!くらいの濃いセットリストでライブが進んでいく。私は、呼吸する事も忘れそうなくらい、画面を食い入るように見つめていた。
 
全体的に、「生きるということ」にフォーカスしたようなセットリストで、その中でも前向きでオーディエンスに寄り添うような曲が多く感じたのは、こんな時代だからだろうか。
いつも以上に、歌詞が心に突き刺さる。

「生と死」に真正面から向かい合い、全身全霊でライブをする4人を観て、バックホーンにとってライブをするという事はこういう事なんだと思い知る。
画面の向こう側でライブを観ている人達に想いよ届けと言わんばかりに、力を込めて歌う将司や、演奏するメンバーの姿。
スタジオで、メンバーが円形になって向かい合う形でライブをするのは、多分初めてだけれど、どんなスタイルで演奏しても、山田将司のボーカル・菅波栄純のギター・岡峰光舟のベース・松田晋二のドラムが揃えば、それはたちまちTHE BACK HORNの音楽として、ライブとして私達に届くのだ。
気づけば私は、いつものライブのように、栄純と光舟 +オーディエンスが歌う部分は、部屋の中でも自然と歌っていた。

約8ヶ月、THE BACK HORNとして音を鳴らす事の無かった彼ら。その分のエネルギーも爆発したように、畳み掛けるようにライブが進んでいく。
全力投球100%どころか、120%、150%くらいの熱量なんじゃないかとさえ感じられて、少し心配にもなる。
プロ野球の先発投手だって、毎投球毎に150km/hを出すわけではないし、一度登板したら、次の登板は中6日。
バックホーンのライブは、タイトなツアー日程の中でも、一曲一曲が自己最高速度・ストレートど真ん中を投げているかのようだな、と思い、それが彼らの魅力であるのは間違いないけれど、それだけが魅力というわけではないんだよ、と、個人的なお節介だなと自覚しつつも、つい伝えたくなる。
こんな事を思っていても、バックホーンが選んだ道ならば、私はどこまでも応援するし、ついていくのだろう。

ライブ後半のMCでは、9月6日にライブハウス編として、ライブハウスからの配信ライブが開催される事も告知された。
コロナの影響で、顔を突き合わせてライブをする事はまだ出来ないが、その代わりに過去のライブ映像を配信するムービーツアーの開催、MVの公開、新曲の配信、ファンクラブイベントの開催、ライブ配信と、色んな楽しみを与えてくれる彼らには感謝しかない。
 
ライブ終盤では、最近のライブの定番曲になってきた「シンフォニア」
 
" 帰る場所ならここにあるから何処へでも飛んでけよ"

このフレーズを2019年年末のライブでは、"帰る場所ならTHE BACK HORNにあるから"と歌った将司。

今回のライブでは、"帰る場所ならライブハウスにあるから" と将司は歌った。

どちらのライブでも、新曲・瑠璃色のキャンバスで、ライブハウスを「僕らの場所」として表現したように、THE BACK HORNと私達ファンの帰る場所として歌ったのかも知れない。

ただ、今回のライブをTHE BACK HORNの復活ライブだと思いながら観ていた私は、「年末に帰る場所ならTHE BACK HORNにあるからと歌った将司が、今日、THE BACK HORNに帰ってきたんだ。そして、今度はメンバーと一緒に、THE BACK HORNとしてライブハウスに帰るんだな。」と感じた。
そして、同じくシンフォニアの中で "たくさんの想いを傷つけて悲しませても ここにいたい 許されなくたって" のフレーズ。「ここにいたい」と力強く叫んだ将司の声に胸が締め付けられる。
歌の表現の一つだったのかも知れないけれど、彼の心の声だったような気がして、将司がバックホーンでいたいと願ってくれているのなら、ファンとしてもこんなに嬉しいことはない。

改めて、将司、お帰りなさい。
THE BACK HORN、お帰りなさい。

そして、またいつの日か、ライブハウスで会おうね。
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