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限りある未来を搾り取る日々

スピッツが歌う未来

 幼い頃、家で流れていた音楽は、家族の顔と同じくらい僕の心に刻まれている。スピッツの音楽は特にそうだ。母が家でよくかけていたスピッツの名曲たちは、今も僕のお気に入りであり、大切な存在なのである。

 中でも90年代を代表する名作「ハチミツ」と「空の飛び方」は、母のお気に入りであった。2枚のアルバムは、僕に実家の空気感を思い出させてくれる。そんな「ハチミツ」に収録されている一曲「愛のことば」は数あるスピッツの名作の中でも、最高級の名曲と言えるだろう。

 そして、今回僕が注目したいのは冒頭の歌詞で表現されている「未来」である。

 「限りある未来を 搾り取る日々から 抜け出そうと誘った 君の目に映る海」

 映画の中の世界にでも吸い込まれそうなイントロ。
 草野マサムネの声が、僕を懐かしい世界に連れていく。でもその世界に僕はもう戻れない。

 10代、20代の僕には、未来は無限にあった。あるように感じていた。失敗もいつか報われると信じていたし、未来はきっと明るく美しいものだと感じていたのだ。当時の僕は、この曲が持つ美しさ、というか深みのようなものをしっかりと理解できていなかったのかもしれない。と今は感じる。

 33歳の今、僕は「限りある未来を 搾り取る日々」を過ごしている。暮らしている。30代なんてまだまだ若いじゃないか、なんていう人もいるだろうけど、違う。未来は無限ではないことを僕は知ってしまったのだ。

 未来は限りがあるからこそ、無駄に時間を過ごしてはいけない。そう思いながらも、無駄に時間を過ごしている。目指す未来すら不明になり、それでも僕はなまぬるい風に吹かれながら、煙の中で探し続けている。

 スピッツの名作「ハチミツ」が発売されて今年で25年。限られた未来を搾り取ってきた毎日。

「愛のことば」を聴きながら、僕の魂は溶けていく。まるで絞り取られた未来という絵の具と混ざりあうように。
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