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どこよりも小さく、どこよりも早い夏フェス

[Champe]と[Alexandros]と、ファンとで作り上げた有観客ライブ

7月9日、[Alexandros]が8月14日と15日にライブハウスZepp Hanedaにて、有観客での対バン夏フェスイベント「THIS SUMMER FESTIVAL 2020」を開催することを発表した。この頃から、ようやく“無観客”での配信ライブを検討・実施するアーティストが増えてくる中、“有観客”で実施というのはとても勇気のいる決断だったと思う。その告知を見た時、私個人としてはとても嬉しかった。行けるか行けないかは分からないが、好きなバンドがお客さんの目の前で生音を鳴らしてくれるという事実を知っただけでも、ただただ嬉しかった。
ところが、発表のタイミングが悪かったのだろう。その頃は東京都においてコロナウイルス感染者が再び増えつつある状況だった。ざっとSNSに目を通すだけでも、色んな声があった。有観客ライブを心待ちにして喜ぶ声、現地には行けないが配信で楽しむという声、感染拡大のさなかなのに有観客でライブをすることを批判する声。前者が多かったが、少数でも後者のような意見が目に入ると、心が痛んだ。もちろん、職業や居住地などによって人それぞれ感じるところはあるだろうけど。
私自身はコロナ禍において会社を一度解雇された身であるため、経済を回すことの大切さや仕事が無いことの虚しさは身に染みて分かっているつもりだ。感染のリスクをゼロにはできないが、手洗い、うがい、消毒、マスク着用、換気、行き帰りのけじめなど一人一人が徹底して対策をすれば感染は防げるはず。そしてそれ以上に得られるものがあると、個人的には思っていた(医療従事者はじめコロナウイルス対応に尽力している方で不快に思った方がいたら申し訳ありません)。

以上のような状況であったから、本当に有観客で開催されるのか、直前まで心配だった。それは[Alexandros]本人も同じだろうし、なんだったら私たち以上にひやひやしていただろう。だから無事に開催されただけでも、ほっとした。
有観客ライブといっても、定員は500人。会場であるZepp Hanedaは本来なら3000人ほど収容できるようだが、今回はその約6分の1の人数。政府が定めたガイドライン以上に厳しい基準だ。メンバーもMCで触れていたが、どこよりも小さく、どこよりも早い夏フェスだった。私はチケットが外れてしまったので、配信で観ることになった。

本編。オープニングのMCはサトヤスこと庄村聡泰(Dr)さんから。約1年2ヶ月ぶりにステージに立つということだが、進行役としてのあいさつや諸注意に、一ひねりも二ひねりも加えたそのトーク力は衰えることがない。「皆さんは発声ができないので、どん滑ることが確定している」と視聴者に笑いを誘う。そしてやはり滑るので、二重に面白い。

前半は[Champe]という、どこか[Alexandros]の面影があるバンド。服装、楽器、アンプ、メンバーのキャラクターなど、当時を再現(と言ってはいけないが)していた。MCにおいて川上洋平(Vo・G)さんと磯部寛之(B.・Cho)さんは、つい「当時の○○」と言ってしまったり、「演じなきゃ」「このライブ難しいな(笑)」とこぼしたり、上手くなりきれていない部分もあってそれがまた面白かった。会場にいる観客も、笑って声が出そうなのをこらえようとしたり、代わりに強く手を叩いたりとリアクションがあった。「いつか[Alexandros]みたいにいっぱいアンプ並べられるように頑張ります」と、素直さと対抗心が混じりながらも今の自分たちに活を入れるようなこの一言に、色々と感じるものがあった。演奏でも特に、磯部さんの曲中の叫びや白井眞輝(G)さんのギターソロなどを聞いても、言葉以上の力で心が揺れ動いた。最後の曲は、「皆さん次の[Alexandros]さん目当てに来ていることは分かっているんですけど」と前置きして演奏された「Untitled」。高みを目指して這い上がっていくロック魂を見せつけ、伝説のバンド[Champe]は去って行った。

後半は[Alexandros]。一曲目はAdventure。<Hello Hello Hello/以前どこかで/Hello Hello Hello/お会いしましたか?>と前のバンドからバトンを受け取ったかのように幕を開ける。曲間のMCでは、「色んな苦難や大変なことがあると思う」「運がなさそう」と自身の歴史を振り返りながら、過去の自分たちにエールを送る、しかしそれも実際に起きたことという、なんとも感慨深い演出だった。日本武道館でバンド名を変えるなんて後にも先にもないような出来事、彼らにしかできない対バン。ピンチをチャンスに変えるというか、逆境をも追い風に変える強さを改めて感じた。そのような生き様も含めて本当にかっこいい。
Dracula Laでは配信組に #おーおーおーの書き込みを呼びかけたり、月色ホライズンやGirl Aではジャンプを煽ったり、観客が歌えないのを分かっているのに観客にマイクを向けたり。そして会場にいる観客も、声以外のあらゆる手段を使ってステージからの煽りに応えていたし、曲中は自然と手拍子があがり、演奏後は溢れんばかりの拍手が巻き起こる。配信組も会場組も一体となって盛り上がっていた。

誰かの言葉が 傷をえぐっても
But after all it’s nothing more than a mosquito bite
(せいぜい蚊に刺されたぐらいなもんだ)
-Mosquito Bite

この曲を聴くと、自分が今まで浴びせられたきつい言葉にも負けることなく、前に進めるような元気がわいてくる。今回に限らず、時には誰かの言葉が彼らを傷つけてきただろう。それでも彼らは、自分たちの信じる道を突き進んできた。その生き様もまた、かっこいい。

本編最後のMosquito Biteが終わると早々に舞台を去る。間も無く、会場組からはアンコールの手拍子が鳴り始める。配信組も怒濤の書き込みでアンコールを求める。その間、メンバーが再登場するまでの時間はものすごく長く感じた。

Thunder[Bedroom ver.]を披露した後、川上さんは、言葉を選びながら、「色んな声があって、有観客での開催は迷ったけど、我々のファンなら大丈夫だろうと、決心しました」という内容を語ってくれた。何度も、ファンに、感謝の言葉を述べていた。[Alexandros]の音楽は、ファンと一緒に作り上げていくものなのだと、改めて認識した。今回はできなかったが、ファンがシンガロングしたり歓声を上げたり、このようにして[Alexandros]のライブはできてきた。ファンがいたからこそ、成り立つ音楽であり、感動であった。今回、声はステージの上からのみではあったけれど、確かに気持ちのキャッチボールはできていた。ファンを信頼しての開催決定と、当日のパフォーマンスだった。ここでいう「ファン」というのは、会場に足を運んだ500人の観客だけではなく、配信で観ている人、この日に初の有観客ライブを迎えたZepp Hanedaはじめライブを裏で支えるスタッフ、そしてメンバーでありながら最強の[Alexandros]リスナーであるサトヤスさんも含むだろう。

スタジアムやアリーナを埋め尽くすほどのバンドで、こんなにも早い時期に、“有観客”でライブを決行するバンドが[Alexandros]以外にあっただろうか。最初に何かを始める時には、やはり賛否両論あがるだろう。しかし一歩踏み出すためには、やはりお客さんを前にした生のライブが必要だし、ファンと同じ空間にいるライブをやってこそ[Alexandros]だ。色んな声を受け止め、それでも前に進む。もちろん、万全の対策をして。スタッフ側の対策、観客への事前の注意喚起、当日のお互いの立ち振る舞いなど、みんなが「絶対に感染者を出させまい!」ととにかく徹底していた。そのようなルールやマナーを守った上で、溢れんばかりの拍手、曲中の手拍子、全身を使ってのボディランゲージで楽しく盛り上がっていた。お互いがお互いを信頼してできあがった、最高のライブだった。

そして彼らは、また必ず会うことを約束していた。

When the world comes backまた会えるように(また会いましょう)
-rooftop
ありもしないストーリーを いつかまた会う日まで
-ワタリドリ
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