4143 件掲載中 月間賞毎月10日発表
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

BUMP OF CHICKENからの贈り物

「Gravity」を聴いて

先日、BUMP OF CHICKENの新曲「Gravity」のMVが公開され、昨年のツアーの映像化が発表された。
そのツアー映像から、オープニング曲「Aurora」のライブ映像も同時に公開され、待ちに待ったBUMPからの新情報に、私も含め多くのファンの心が躍ったことだろう。
 
久しぶりにBUMP OF CHICKENの楽曲たちをじっくりと聴いた。

どんなときも心の片隅に居て、私を見守っているような、心の中核部分を支えてくれるBUMPの楽曲たちは、空に浮かぶ星のような存在だ。
いつもそこにあって、真っ暗で何も見えない夜、心が取り残されそうなときには、膝を抱えて小さくなっている私の上で、きらりと瞬く。

随分抽象的な表現になってしまったが、BUMPの楽曲は、私に一定のヒーリング効果をもたらす治療薬なのである。

毎日、浴びるように聴くことはなくとも、ふとしたときにBUMPの曲を聴くと、重くなった心と身体がふわっと浮上するような。

彼らの楽曲は私にとっての“ヒーラー”だ。
個人的には、BUMP OF CHICKENはそういう立ち位置のバンドである。

そんなこんなで、久しぶりに触れたBUMPの楽曲は、変わらず私の“ヒーラー”であり、私の中核を担う存在だった。
 
まず最初に、昨年のツアーでの「Aurora」のライブ映像から視聴したのだが、最初から涙腺が壊れていて、ライブの開演を待ちわびる会場の様子を見ただけで、泣きそうになったが必死に堪えた。
しかし、ボーカルの藤原基央が歌い出した瞬間、堪えていた涙があっさりとこぼれた。

こぼれた涙の理由は、自分でもよくわかっている。
アーティストとファンが同じ空間にいて、同じ熱量を感じて、双方に想いの橋が架かる。生の、ライブだった。
会場は違えども、昨年のツアーで「Aurora」を聴いたときの感覚が一気に蘇った。
久しく感じられていないその感覚が嬉しくて、泣いたのだ。

アーティストが趣向を凝らして、生のライブとは違った楽しさを生み出してくれているので、オンラインライブに不満があるわけではない。
むしろ、ライブに行けなくなってからは、オンラインでもライブが見れるという状況に随分と救われている。

ただ、やっぱり、開演を待つ会場のわくわくとした空気感や、各々が好きなように身体を揺らし、腕を掲げ、時には口ずさみながら、その曲を楽しむ様子、それを受けて楽しそうに演奏するメンバーたちを見ることができるライブが大好きで、大切だから。
その気持ちが溢れて、初っ端から涙腺が壊れてしまったのだ。

そして、嬉し涙の理由はもう一つある。
対策を充分に整えた上での、生でのライブが少しずつ増えてきていることが、私の中ではとても嬉しいのだ。

まだまだ、満員の会場でライブをするのは難しく、安心はできないが、客数を多少減らすことになったとしても、ライブが開催できる、ということ自体が嬉しい。

また会場で、この映像のような幸せな空間が見られる日も遠くないのかもしれないと思うと、心があたたかくなった。

「Aurora」は、リリース当初から歌詞に強く惹かれた楽曲だったが、今、改めて聴くと、また違った一面が垣間見えて、とても興味深い。
 
“お日様がない時は クレヨンで世界に創り出したでしょう”

“考え過ぎじゃないよ そういう闇の中にいて 
勇気の眼差しで 次の足場を探しているだけ”

(BUMP OF CHICKEN「Aurora」から抜粋)
 
コロナ禍の今、個人的には、この部分の歌詞が特に心に残った。
今は“お日様がない時”のような気がしていて。
そんな時、私がいる“闇の中”を照らしてくれるのは、やっぱり彼らの楽曲なのだ。

ライブならではのアレンジはもちろん、メンバーが嬉しそうに、楽しそうに演奏する姿を見て、あたたかくて、幸せな気持ちになれた。

もう一つ、楽曲を聴いている観客の表情がとても幸せそうだったのが印象的だった。
本当に心からライブを楽しんでいる表情に、こちらまでそのわくわくが伝染してくるようで。

ライブ会場でよくある、お互い名前も知らないけれど、わくわくする気持ちや楽しさを共有しているような不思議な感覚を、映像からでも感じられて、とても楽しく見ることができた。
  
やっぱり、BUMP OF CHICKENのヒーリング効果は凄いなとひとり感動しつつ、新曲「Gravity」のMVを続けて再生する。

ショートフィルムを見ているような、ストーリー性のあるMVにぐっと引き込まれた。
「Aurora」のMVを撮った林響太朗監督が、今回の「Gravity」も撮影したということで、「Aurora」の時にも感じた映像の繊細な色彩の美しさが印象的だ。

優しいメロディーに、どこか懐かしいような感覚さえ覚えるような、あたたかい楽曲だなと感じた。
そして、歌詞の節々に感じられる、BUMP OF CHICKENらしい表現に、毎度のことだが強く心を惹かれる。
 
“雨でも晴れでも 空のない世界でも
また明日 明日が ちゃんときますように”

“一緒じゃなくても 一人だったとしても
また明日の中に 君がいますように”

(BUMP OF CHICKEN「Gravity」から抜粋)
 
印象的なフレーズはいくつもあるが、一番最初に惹かれたのは、曲を締めくくるこの部分だった。

コロナ禍で募る不安に加え、豪雨や台風による災害により、当たり前に思えた“明日”が来ないことがある、というのを痛感させられた私たちにとって、この言葉はとても意味のあるものだと思うのだ。

また、個人的には、昨年家族を亡くしたこともあり、以前より、当たり前に存在しているものなんて、実はひとつもないのではないか、と考えることが増えた。
だからこそ、この祈りにも似た言葉に、自身の想いを重ねてしまうのかもしれない。

他にも印象的だった歌詞がたくさんあって、選びきれないほどだ。
その中でも、藤原基央というひとりの人間の感性に強く惹かれた部分をいくつか挙げてみる。
 
“君の影の 君らしい揺れ方を
眺めているだけで 泣きそうになったよ”

“わりと同時に くしゃみしちゃうのが
面白かったよ 泣きそうになったよ”

“見えない涙拭って 謝るように笑って
触ったら消えてしまいそうな 細い指の冷たさが
火傷みたいに残っている”

(BUMP OF CHICKEN「Gravity」から抜粋)
 
“君の影の 君らしい揺れ方”。
このフレーズだけで、主体である“わたし”と“君”の親しい関係性が伝わってくるだけでなく、“わたし”が“君”に抱いている優しくて、あたたかい気持ちまで表現してしまう言葉の選び方に、感動と尊敬の念を抱いた。
本当に、彼の言葉のチョイスには、いつもはっとさせられる。


二つ目の“くしゃみ”についても、そうくるか、と驚いた。
「リボン」の歌詞で、“あくびのユニゾン”という表現が登場した時にも感じたが、彼は、日々のなんてことない些細な瞬間を、とても大切にしているのだと思う。

その瞬間の幸せな感情と同時に、ふと過る、それらを失うかもしれないという切なさが、このフレーズにぎゅっと詰まっていて、嬉しい時ほど泣きたくなったり、幸せな時ほど不安を感じたりする、私たちの複雑な内面を丁寧に描いていると感じた。
 
三つ目は、私がBUMP OF CHICKENの歌詞の表現の中でも、特に気に入っている表現方法が使われている。

彼が紡ぐ歌詞の中では、一見すると辻褄が合わないように感じる言葉が繋がっていることがあり、それらを、私たちの知っている感情に違和感なく落とし込む、という巧みな表現が使われているように思う。

今回引用した部分で言うと、
“見えない涙”と“拭って”、
“謝るように”と“笑って”、
“細い指の冷たさ”と“火傷みたいに”
の三つの表現が、個人的には気に入っている。

基本的には、見えないものは拭えないし、謝るときは笑わないし、冷たさを火傷みたいと表現することはあまりない。

でも時々、涙が流れていないのに泣いているように見えたり、申し訳なさそうに眉を下げて微笑んだり、冷たすぎるものに触れて火傷しそうな気がしたり…喜怒哀楽のどれか一つでは表現しにくい感情が湧き上がることがある。

彼は、日常の隅々にある、一言では片づけられないような繊細な感情や感覚を拾い上げて、とても丁寧に表現する。

だから、彼の紡いだ言葉は、私たちの身に覚えのある、でも、上手く言い表せない感情や感覚にリンクして、すんなりと心の隙間を埋めていくのだろうなと感じた。
 
また、最初の部分の、時間経過の描き方も流石だなと思った。

“君が鼻をすすった”というフレーズや、“蝙蝠”という単語で、日が暮れて涼しくなってきた、もしくは、肌寒くなってきたような空気を想像させる。
そこに、さらに“空を割る夕方のサイレン”というフレーズが入ることにより、聞こえてくる音までもはっきりと脳内で再生されるのだ。

曲の中の“わたし”と“君”が感じている風景を、ほんの数行の歌詞で、こんなにも明確に想像させてしまう言葉の並びに、今回も震えた。
  
BUMP OF CHICKENの楽曲は、聴けば聴くほど味の出る、スルメ曲が多いが、今回の「Gravity」もきっと、たくさんの人々に長く愛されて、大切に心に仕舞われる一曲となるのではないかと思う。

次に彼らのライブが見られるのはいつかはわからない。
もしかしたら、そんな未来が訪れないことだってあるのだ。
明日だって、来ないかもしれない。
 
“今日が明日 昨日になって 誰かが忘れたって
今君がここにいる事を 僕は忘れないから”

(BUMP OF CHICKEN「Gravity」から抜粋)
 
それでも、そんな不安に襲われても、こう歌う彼らが居てくれるなら、私も、明日が来ることを一緒に願いたいと思う。
  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい