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映画が先か、主題歌が先か

ふっと現れた、JUJUのHold me,Hold you

 私は、好きなアーティストが手掛けた主題歌を劇場で聴きたい、という単純かつ不純な動機で映画を観に行くことがある。映画ファンの方々からすれば、邪道であろう自覚はある。
 原作は読んでいたので内容は把握していたが、それが映像となり主題歌とどう溶け合うのか、大きなスクリーンと共に聴いてみたいと劇場に足を運んだ「永遠の0」(『蛍』サザンオールスターズ)。ただただ、その歌声とバンドの音が劇場に轟くのを体感したい、エンドロールでクレジットが流れてくるのをこの目で見たいと思う一心で行った「のぼうの城」(『ズレてる方がいい』エレファントカシマシ)。宮本さんが「ズレてる方がいい」と歌った意味も腑に落ちたし、大音量で流れる主題歌にも感激した。

主題歌ありきの映画鑑賞。
が、今回は違った。

 今年の5月、「愛していると言ってくれ2020特別版」が放送された。すっかり忘れてしまっていたけど、25年前、当時も夢中になってこのドラマを観ていたし、主題歌の「LOVE LOVE LOVE」も何度も何度も聴いた。あっという間に第2次トヨエツブームに陥った私は、彼の作品を片っぱしから借りまくり観まくった。その中で1番最初に観たのが「娚の一生」だった。
 52歳独身の大学教授と、もう恋はしないと決めた女性の大人のラブストーリー。主人公のつぐみは都会の生活に疲れ果て、田舎の祖母の家でひっそりと暮らし始めるのだが、最初は「まあ、よくある設定だな…」と思いつつ観ていた。物語が進むにつれ、心を閉ざしていた主人公がゆっくりと心を開き、求愛をする大学教授に寄り添っていく様に、いつしか私も引き込まれていった。
 そして、ハッピーエンドの余韻が冷めやらぬまま、エンドロールで主題歌が流れ始めた。胸の高まりのようなイントロ、ハッピーエンドのその先まで連れていってくれそうな伸びやかな歌声、主人公の2人が穏やかな顔で寄り添っている姿が目に浮かんでくるような曲。JUJUの「Hold me,Hold you」だった。初めて聴いた曲だったが、1発で好きになってしまった。エンドロールが終わるとまた聴きたくなり、何度も巻き戻しては繰り返し聴いた。聴くたびに、主人公はもちろん、チャーミングな登場人物たちや風景が頭に浮かんでくる。誰かと寄り添い生きることってどんなに素晴らしいか、「心 溶けたよ」の歌詞の通り、心が解放されていく、そんな気がした。映画を見終わってから主題歌を好きになったのは初めてかも知れない。
 今、誰もが予想もしていなかったコロナ禍で、失ったものも多く、どう足掻いてもどうしようもないことも増えた。価値観も変わり、1度立ち止まらなくてはならない状況になったが、そのことによって、呼吸困難寸前で、いかに今まで気を張って生きてきたか気付くこともあった。そんな時にふっと現れた、やさしいメッセージに包まれたこの曲に救われた気がした。映画が先か、主題歌が先か、そんなことはどっちだっていい。こんな出会いもあるんだなあ…今、この曲に出会えて良かった、と思っている。
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