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夕暮れの帰り道 届いた手紙 張りつめた糸を解きほぐす音楽

BUMP OF CHICKENの楽曲 Gravity が気づかせてくれた事


 BUMP OF CHICKENから新曲が届いた。
 あまりにも長い間待ち続けていたから、聞くことが怖くて、配信から少しだけ時間をおいて、恐る恐る、聞いた。心を動かさないように気をつけて、少し遠い所から眺めるように、曲を流した。
 静かな、落ち着いた、でも少し独特で違和感のあるリズム。
地味…かな 大丈夫 これなら普通に聞けそうだ。

 そう思って、少し心の距離を縮めて聞いてみた。
 3回目くらいだろうか、歌詞の意味がまだ届いていないうちに、先に涙があふれてきた。ことん、ことんと、鼓動のような繰り返しのリズムと、とことんやさしいメロディが、胸の奥を苦しいくらいにかき乱す。
 ああ、そうか、私はずっとこの音を待っていたんだ。
 
 今年の3月、感染症の世界的な流行によって私たちの生活は大きく変わってしまった。外出もままならず、人と会う事も出来ず、何より大切な、音楽を楽しむ場所が、感染を広げる危険な場所となり、黒く大きな×をつけられて、私の生活から削除された。
楽しみにしていた音楽イベントやライブが中止になって、テレビの音楽番組もなくなり、大好きなラジオ番組までお休みになって、歌う事、大きな声を出すこと、集まることは全て「自粛せねばいけないこと」となっていった。
仕方がない、命より大切なものはないのだから、自分と、周囲の大切な人を守る為に、迂闊な行動をするわけにはいかない。感染リスクの高い職場での勤務も、知らず知らずのうちに自分を追い詰めていた。

怖かった。
大好きな音楽に直接触れることが出来る大切な場所が、もう二度と戻ってこないのではないかと、大好きな人の声が二度と聞けなくなるのではないかと本気で思った。
とても怖かった。

 いつからだろう,気付いたら,呼吸の仕方も分からなくなり,ずっと息を吸い続けているような,吐き方を忘れてしまったような,そんな苦しさが日常になっていた。
 
 少しずつ規制が緩和され、日常が戻りつつあるように見えたけど、感染状況が落ち着いていない地域に住む自分は、相変わらずマスクをして人と会う事を控え、遠くに行く事も出来ず、明らかに以前とは違う暮らしを続けている。
 張りつめた糸のようなキリキリとした日常に、Gravityが小さな音で、そっとやさしく入ってきた。とても慎重に、壊さないように、ゆっくりと、時間をかけて、私の心の糸をほぐして緩めてくれた。何か月ぶりだろう、ほっと息を吐くことができて、自然に涙があふれてきた。
私はずっと、この音を、声を、メロディを待っていた。

懐かしい夕暮れの風景
まだもう少し一緒にいたいのに、「夕方のサイレン」が「空を割る」
気づきたくないのに、時間に気づいてしまう。
帰りたくない、離れたくない、どうかこのままここにいさせてほしい。

 今もまだ、会う事が出来ない友達の事を思い浮かべる。もし、会う事が出来たなら、一緒にいる時間が終わってほしくなくて、さようならを言いたくなくて、こんな風に黙ってしまうだろう。丁寧に描かれた一つひとつの情景が、人と触れ合う時間のあたたかさを思い出させてくれる。会いたいな、そう思ったら涙がこぼれた。

「見つけた言葉いくつ 繋げたって遠ざかる
 今一番伝えたい想いが 胸の中 声を上げる」

文字だけで、言葉だけで、伝えようとしていたけど、いくら文字数を重ねても、本当の想いは伝わらない。直接会って言いたかったたくさんの言葉が、今、胸の中にいっぱいにあふれている。
でも、もし願いが叶って、会う事が出来ても、想いが溢れすぎて、きっとうまく話せなくて、泣きながら笑う事しかできないだろうな。

いつになったら、私たちは、
音楽を真ん中にして、また、自由に会える日が来るんだろう。

会いたい、会って話したいよ。
一緒に絵をみたり、星をみたり、ご飯を食べたりしたかったよ。
私は、みんなとまた、ライブに一緒に行きたいんだよ。

不安でいっぱいだった時、本当は言いたかった、でも言えなかったことがたくさんあった事に、今頃になって気が付いた。

夕暮れの帰り道を歩いているだけで、いろんな想いが頭をめぐる。私の側に今、「視界の隅っこ ほとんど外」にすら、「君」の影はないけれど、会いたい人、会えない人、遠くにいる友達、過ぎ去ったけど大切な時間を思いながら歩いていると、すぐそばに、あたたかい温度が感じられる気がして、何度も何度も、歩きながらGravityを聴いてしまう。

ちゃんと寂しくなれてよかった。寂しいと気づくことができて、今自分がほしいと思っているものに気づくことができた。怖かったり、悲しかったり、悔しかった気持ちに気づけてよかった。Gravityの音と旋律とことばに、緊張してガチガチだった肩と背中を、やさしくさすってもらって、頑張ったねえって言われているような、そんな気がした。

長く音信不通だった友達から、手紙をもらったみたいだ。この手紙は何度も読み返して、大切に、大切にしたいと思う。
いつかまた、きっと、笑顔の4人に会える日が来るまで、4人の音楽を真ん中にして、集まることができる日まで、私はこの曲を傍らに、生きていこうと思った。

「一緒じゃなくても 一人だったとしても
また明日の中に 君がいますように」

BUMP OF CHICKENに会える日が
「また明日 明日が ちゃんときますように」
 
文中の「」はすべてBUMP OF CHICKENの楽曲「Gravity」より引用
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