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ロックバンドが一番かっこいい

MONOEYES『Between the Black and Gray』に寄せて

 ロックバンドが一番かっこいいと確信させてくれる最高のロックアルバムである。コロナ禍であろうとなかろうと、MONOEYESなら必ずそう思わせてくれる作品を届けてくれるであろう。でも、やっぱり今回のコロナの問題は僕の人生において大きなストレスやショックを与えていることが多い。だから、たとえ同じであったとしても『Between the Black and Gray』の音と詞は、2020年の僕にとても突き刺さるモノになっている。
 『Between the Black and Gray』というアルバムタイトルからして最高ではないか。2色を使ったタイトルといえば、黒や白、赤や青などといった明暗や対比がはっきりしたものを目にすることが多い。が、MONOEYESは違う。黒とグレーである。白黒はっきりさせない・できない世の中や自分自身のことを表現しているようだし、ロックならではのノイズや棘を感じることができる。僕は、アルバムタイトル発表時点でワクワクしていた。そして、最高なタイトルのアルバムの音と詞は、タイトル同様やっぱり最高なのである。
 1曲目の「Bygone」は、聴いた瞬間から嬉しくてニヤニヤが止まらなかった。ホワイトノイズのギターから、ドスッドスッと腹にパンチを喰らうような重い、でも問答無用で体を揺らす強力なリズム。その後のスピードアップではベースが休符をうまく使いながら曲によりスピード感を与えている。ギターは8分音符で鳴っており、こういう時はだいたいベースもギターに合わせて8分音符を鳴らすアレンジを僕は今まで多く聴いてきた。が、MONOEYESは違う。ベースという楽器の旨味と面白みを表現した最高のベースアレンジだと思う。ブレイク部分ではドラムのスネアがまるで音階を奏でるように鳴っている。僕が今まで聴いてきたブレイクは、ボーカルとギター、ギターのみ、というアレンジのモノが多かった。が、MONOEYESは違う。スネアがギターとボーカルと一緒に絡まるように鳴るブレイクを僕は今まで聴いたことがなかった。ドラムの新しい鳴りが聴けるとても新鮮で最高なアレンジだ。その後の3回目のAメロのギターは、ハウっている部分があるのだが、これ普通なら録り直すこともできたはずである。が、MONOEYESは違う。かっこいいと思ったテイクは、ハウリングしていようがちゃんと残すのである。その姿勢がかっこいいし、流石ロックバンドである。このギターのハウリングが「Bygone」での僕のハイライトである。聴いている者の胸ぐらをつかむような荒々しいボーカルともとてもマッチしている。歌詞も音とマッチしており、ボーカル・ギターの細美の歌詞には珍しく「俺」が出てくる。でも、確かにこの音は「僕」ではない。

俺は実用主義者
バーチャルな一体感なんていらない
遠くで炎が燃えている
君もこの匂いには目を覚ましたほうがいい

いまや誰もがハイウェイを行く
俺をレースに出させたいのは誰だ
俺は人の命令なんて聞かない
思い通りにはならないぜ

Bygone 対訳

 「俺」の見ている世界観や人生哲学が表現されたような歌詞に、音同様の強さを感じるし共感する。

 「Bygone」同様、『Between the Black and Gray』の曲で、細美の作詞・作曲のモノは「Noting」以外は、キリッとした突き抜けたような強い姿勢を感じる。
 「Fall Out」や「リザードマン」では、外的にも内的にも今の現状から抜け出すんだという強いメッセージを感じる。注意や意識をしないと「奴ら(悪い自分自身を含む)」はいつの間にかスッと思考や時間に入り込んできて、僕を本来自分が行きたくないところに引きずっていく。そっちの方が楽だからと僕の方から「奴ら」の方に行っていることもある。でも、本当に自分の望む自分になるためには、正直な自分になるためには、自分の意思を持って生きるには、「奴ら」に従わず、自分を律し続けなければいけない。それは簡単なことではない。けれど、細美がよくライヴでオーディエンスに投げかける「いこうぜ」が歌詞として目に見える「リザードマン」からは、それが可能なんだよという勇気を貰う。もちろん、MONOEYESのメンバーの曲のアレンジや細美の天才的なメロディーメイクや声だからこそ、その勇気を感じれるのは間違いない。

足掻け
ひきずれ
僕の抜け殻
ここには
帰る場所はない

四月の雨なら
寒くはないよね
今ならまだ追いつけるはずさ
きっと

リザードマン 歌詞
 
 「Interstate 46」は、歌詞も音もコロナ禍の今聴くと印象が変わった。以前は過去の楽しかったライヴや思い出のことや1人の主人公の決意の歌のように捉えていたが、今はそれに加えて、コロナで開催されなくなってしまった、行けなくなってしまったライヴやフェスへの思いもイメージとして頭の中に浮かび上がってくるようになった。そして、でも大丈夫、またいつかあの場所に戻れるから、と言われているように感じるようになった。ラストのサビ前のギターフレーズはそんな感情にリンクして、心にグッとくるようになった。こんな感じ、コロナ前はなかった。
 
 『Between the Black and Gray』では、新しいMONOEYESがいろんなところで聴けるのだが、ボーカル・ベースのスコットが作詞・作曲した曲たちが、今までのスコットの曲とは違う一面を見せてくれていて、とても新鮮で素晴らしい。
 スコットが作る曲といえば「Borders & Walls」の様にガッツ・パワー・スマイルを感じさせるモノが多かった。歌詞は怒ってたりしてたけど。しかし、今回のスコットの曲はとにかくエモい。「Iridescent Light」の晴れた日の雪化粧された景色の様な繊細で眩い光を放つギターのイントロは、これ本当にスコットの曲なのかと思うほど以外で驚くものだった。歌い方もいつもの元気で張りのあるのスコットの歌声と違って、元気な中にもしなやかさや繊細さや切なさを感じさせる。歌詞も映像が頭の中で描けそうなくらい、イマジネーションを刺激する言葉で溢れている。それは、音にも同じことが言える。そして、前向きなんだけど、どこか切ないメロディ。特に「Castles in the Sand」は、イントロのエモ過ぎるギターフレーズで泣く。歌詞は、何度でも立ち上がる決意の大切さを教えてくれるのだが、それが砂の上って・・・。もうその感覚に共感できすぎて泣く。スコットの曲でこうした感覚になるとは思っていなかったので、驚くとともに新鮮さに喜びを感じた。

計画通りじゃなくたって
それも僕らの描く軌跡
また新しく築くのさ
砂の上に僕たちの城を

決意を新たにすればいい
どんな状況でも
また新しく築くのさ
砂の上に僕たちの城を

Castles in the Sand 対訳

 『Between the Black and Gray』を聴いていると、音の1つ1つに新しい発見があって面白い。多分、聴き続けることでまだまだ新しい発見があると思う。曲の構成も普通じゃなくて面白いし。歌詞もコロナ禍だから余計に刺さる所もあるけれど、コロナ禍以降も聴いた人の心に突き刺さる時代を選ばないモノだ。そして、このみずみずさとカタルシスは今後も変わることなく僕の人生を照らし続けてくれるだろう。しばらくMONOEYESのライヴには行けないけれど、この最高のロックアルバムがあれば、ライヴに行けるその時まで待つことができる。そもそも最高のロックアルバムには飽きがこない。だから、そもそもライヴに行けるその時が来るのか分からないけれど(明日死ぬかもしれないし)、この最高のロックアルバムがあれば僕の人生は楽しい。2020年、生きてて良かった。
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