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ロックスターは死なない

セッションプロジェクト「YGNT special collective」・山中拓也という人物

ライブの生音からは随分と遠ざかっている。だがオンラインでのコンテンツも日進月歩。
時代に置いていかれないように、私達受け手側も必死に追いかけている。
 
映像コンテンツの良いところのひとつに、「誰でも気軽に視聴できる」ということがあると思う。アンダーグラウンドなイメージのあるMCバトルや、自分には敷居が高く感じる洒落た雰囲気のライブも気軽に見ることができる。
わたしは特に後者の恩恵を受けていると思った。

近年新設された音楽施設がいくつもあるが、その中にBillboard Live YOKOHAMAという場所がある。そして当該施設のオープンを記念したセッションプロジェクトが始まった。
THE ORAL CIGARETTES・山中拓也(Vo)を中心とし、
ヒグチアイ(Vo/Pf)・GOMESS(RAP)・山岸竜之介(Gt)・SWING-O(Key)・DUTTCH(Dr)from UZMK・鈴木 渉(Ba)・Hiro(Cho)&Kana(Cho)from The Soulmatics
の総勢9名が参加している。

会場での公演は新型コロナウイルスの影響で中止になったものの、リモートで制作されたMVやBillboard Live YOKOHAMAにて演奏を収録したものがYouTubeに公開された。
いつもライブハウスに行くような気分では行けない場所であり、映像コンテンツのありがたみを感じた。

パフォーマンスは全5曲。
Shala La / THE ORAL CIGARETTES
じれったい / 安全地帯
Poetry / GOMESS
ほしのなまえ / ヒグチアイ
そして、今回のセッションの為に書き下ろされた
蝋燭の私 / YGNT special collective
どれも少し落ち着いた曲調の中に情熱的な核の部分があり、グッと心を掴まれる。
 
Shala La / THE ORAL CIGARETTES
オリジナルの原曲よりももっと妖艶さを感じる。そして愛も夢も、今ここにあるものが全てだと思わされた。振り回されたりむやみに手を伸ばしても掴めるわけではない。原曲にアレンジが加わり、より世界観の強い曲となったがラップのリリックも相まってむしろかなり現実的な力強いメッセージであった。やり直したいこと、巻き戻したい時間が嫌というほどあるが、不可逆なものばかりだ。とにかく"今"を大切にするということ。
 
Poetry / GOMESS
この曲でも一貫して"今を生きる"ことが歌われている。"今生きるそれが歌になる"と、ミュージシャン側が発信してくれていることにとても感動してしまった。悲しいニュースが続いている今日この頃、良くも悪くも命は平等なのだと痛感した。気持ちを言葉にすることさえ苦しく思ってしまうとどうしても塞ぎ込んでしまうのかもしれない。けれどやっぱり生きてこそだと思わせてくれるのがこの曲だった。画面の向こう側、音や声を生み出す側の人たちの苦しみは私には分からないけれど、こちらも共に生きているということを伝えたくなった。己の価値や世間一般の当たり前・普通の価値観がわからなくなったりもするが、日々生きているというほんの少しの実感さえ持てればいいと思った。昨日も今日も生きているし、明日を諦めないように。本当にそれだけだ。
 
じれったい / 安全地帯
私が産まれる前からある曲だった。曲名・アーティスト名はもちろん知っていたが実際に原曲を聴いたことはなく、こうやって音楽が生き続けていくのかと腑に落ちた。コーラスとのハーモニーと艶のある低音のレトロ感と間奏の激しいギターのパートの今っぽさが絶妙で癖になってしまう。"傷つくほど 愛している"というこれ程ストレートな歌詞は最近あまり無いのではないかと思った。何十年前からあったものだとしても私にとっては「最近知った曲」なので、新鮮な気持ちで聴いている。
 
ほしのなまえ / ヒグチアイ
原曲では自分という人間、ひとりの人間の始まりと終わりという印象だったが、
今回のアレンジではさらに広い世界の中の自分、というテーマに思えた。
誰かと競うことや相対評価を必ずしも避けることはできない。だからこそ誰にも負けない強みが欲しいと思うわけだが、その先に幸せがあるのかないのか。とても考えさせられた。また、"変わること怖がらないで 変わらないもの信じ続けて"というフレーズが物凄く響いた。人間として成長していくこと、そのうえで忘れたくない信念。その両方が自分を自分たらしめるものなのだと思った。
 
蝋燭の私 / YGNT special collective
季節を記憶するような曲だった。強がりだけれど繊細な叙情がとても切ない。山中拓也の書く詞はとても暖かい。人と人との間にある大きな気持ち全てを愛情と呼んでいる気がする。恋愛モノの曲、と一言で片付けてしまうのは勿体ない繊細な曲だと思う。"もう大丈夫、強くなれた"と言いつつ、"強がりで傷ついて馬鹿みたい"とひとりで泣き崩れているような最後のサビは聴くと物凄く感情的になってしまう。"愛しているのに じれったい"と歌った前述の「じれったい」と同じ人物のストーリーなのではと結び付けたくなる部分もあった。男声・女声のハーモニーもとっても切なくなる。この曲のラストは言葉で説明するのにはどうしても限度がある。そう言い切ってしまう程、感動的だった。
 
普段、THE ORAL CIGARETTESのボーカル・ギターとして活躍している訳だが、今回のセッションでは勿論それとは異なる雰囲気だった。
私自身バンド単位でしかミュージシャンを認識することが無かった為、演奏家の方々やソロのアーティストに関してはかなり疎かった。観に行くライブはいつも同じような世代が集まる決まったものばかり。なので自分が知り得ない情報の方が圧倒的に多かった。無意識に自分の興味の範囲が狭くなってしまっていた。

だが今回のセッションプロジェクトでは、全てが私にとって新鮮だった。
良いものは良いと、今まで私の中にあった様々な物差しを全て取っ払われてダイレクトにそう叫ばれているような感覚になって痺れた。
こういう影響力のある人物を"スター"と呼ぶんだろうなと思った。私の中で紛れもなく彼がロックスターだ。
これから先も永遠に生き続ける音楽が生み出されていくことを願う。
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