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この距離が縮まることを信じて

ONE OK ROCKの"生"のメッセージ

最近"生"について考えることが増えたように思う。
生きると死ぬの"生"もそうだし、人と人とが生で触れ合うことの"生"もそうだ。

私は医療従事者の1人である。働いている病院でもオンライン面会が導入され"生"で触れ合う、話すことが難しくなった。

そんな状況の中でコロナで亡くなる人、今まで経験しなかった状況の中で自ら命を絶つ-。そんな選択をする人も出てきて、なんともいえない雰囲気が漂う。「"生"とは-?」考えることも多くなったのではないか。

予想もしないコロナが流行し始めたのは3月頃。私は社会人2年目を迎えていた。
新しい環境や状況に悩み、壁にぶつかるといつも私を勇気づけてくれるのはONE OK ROCKの音楽だった。

"100点じゃないこの僕に100点つけるのは 他でもない僕自身だ!!"
(未完成交響曲/ONEOKROCK)

"I'm not alone. I'm not alone
We're not, We're not, We're not alone"
(欲望に満ちた青年団/ONE OK ROCK)

自分を肯定すること、1人でないことをストレートに伝えてくれる楽曲が多い。
いわゆるネガティブのネガであるタイプの私に彼らはいつも前を向かせてくれる。

私がONE OK ROCKを"生"で観たのは2016年の渚園だ。フェス好きの友達に連れられて初めて参加した。なんとなく「ロックバンドのLIVE=怖い」という食わず嫌いのような印象があったのが正直なところであった。
そんな気持ちを一掃し、私の心を奪ったのがONE OK ROCKだった。

「こんにちは、ONE OK ROCKです。」

たしかそんな挨拶から始まったLIVEでのTakaさんのオーディエンスを虜にする声、それを包むToruさんのカッコいいギターやRyotaさんの楽しそうにベースをかき鳴らす姿、Tomoyaさんの重厚感あふれるドラムに一瞬にして心を奪われてしまった。
会場にいた5万5千人もの観客全員を一つにしてしまうONE OK ROCKというバンドのファンになった瞬間であった。
あの日の帰り道の私はきっと人生で1番うるさかったに違いない。

あれから約5年間、私は開催されるLIVEにはかかさず参加して"生"で勇気や元気をもらい、日々のパワーをチャージしていたのである。

しかし、この2020年はコロナで様々な事が制限され、あらゆるものの状況が変化した。それは私の働く病院もそうであるし、音楽業界もまたしかり。「今年は"生"で観れないのかなぁ」なんて残念に思うだけだった。

8月。本来であれば私が1番楽しみにしている季節だ。
なんといってもフェスやLIVEで"生"でアーティストがかき鳴らす音楽、会場が作り出す一体感が大好きだからである。
自分が「生きている」ことを感じ、その空間で共有できる感情がなんとも言えないほど心地よいからだ。

だが、今年はフェスはもちろん〈密〉な空間を作り出すことが
まるで悪なのかのように軒並みイベントは中止された。

自分も医療従事者の端くれであるから仕方ないことは十分理解しているし、我慢しなければいけない。そう分かっている、分かっている…頭では理解しながらも好きなことが全くできず、医療に携わる者として人一倍感染リスクにおびえ、ただただ仕事をこなす日々が続いていた。

そして世間では徐々に自粛ムードが緩和され始めた。
人々の移動も多くなり、まるで元の日常が戻りつつあった。
ニュースでは日々感染者数が発表されるが、ある意味相反する政策もなされ、世間とは同じように外に出てはいけない、患者や周りに迷惑をかけまいと人一倍思っている医療従事者の私からすれば少し腹立たしい、そんな状況だった。

自分の妬ましい気持ち、自分の弱いところが出てきはじめ、芸能界でも命を絶つ人が出てきて、心が揺らぐ。何かをすり減らしながら日々を送っていた中で嬉しいニュースが届いた。

『ONE OK ROCK無観客でのオンラインライブ開催』

生で見れないことは覚悟していたし、有観客であっても見に行けないであろう私にとってはこの上ない楽しみであった。
すかさず配信のチケット購入ボタンを押した。

迎えたLIVE当日。
18時の開演に合わせ、小さなiPhoneの画面を見つめていた。

「どーも、こんばんは、ONE OK ROCKです。」

少し興奮しているようにも見えるTakaさんのMCはいつものようにLIVEの始まりを告げた。
画面越しであってもメンバーの熱量は凄まじいものだった。

どの楽曲も心に響くものであったがひときわこの時、私の中で心に残った楽曲がある。自粛中に制作された[re:]projectの『もう一度』だ。これはONE OK ROCK個人の楽曲ではないが、Takaさんや清水翔太さんが声を上げ制作されたものだ。

"当たり前に あった世界が壊れそうな今
誰のせいにしようか 僕は 考えていた
悲しいニュースに 目眩さえして"

"僕は君を痛いくらい抱きよせて
嵐が去って晴れたら
もう一度手を繋いで歩こう"

(もう一度/[re:]project)

アーティスト達の素晴らしい歌声にも感動したがこの歌詞を聴いてすっと涙が溢れた。どうしようもないのに誰かのせいにしたくて、誰かを妬んで悲しみに沈む毎日。前を向くのは簡単ではなくて行き場のない気持ちを抱えた私にストレートに入ってきた。

そっと寄り添ってくれた気がした。
抱いている気持ちを否定するでもなく、あくまで未来を信じて今を生きて行こう、1人ではないのだと。

LIVEが自分たちの軸であるといつも言っている彼らはきっとこのオンラインライブの開催にあたり、試行錯誤を重ね、悩んだのだろう。ゲストや演出など細かなところまでこだわり、画面越しでも今という"生"を伝えてくれた。

そして彼らは幾度となく画面越しの私たちに生きる勇気を投げかけてくれていたかのように思う。

「頼むから、頼むから生きてくれよ。絶対に。」

LIVEの終盤にTakaさんが言っていた。こんなにストレートに、ダイレクトに伝えてくれるアーティストはいるだろうか。

きっと彼らも悩んだ時期があっただろう。人前に出る職業の人が人前に出られないもどかしさ、しんどさは私には計り知れない。

それでも画面越しから必死に語りかけて、音楽を通して生きる、前を向く、背中を押してくれるONE OK ROCKというバンドはあのとき"生"のメッセージを確実に届けてくれたように思う。画面越しという距離はあれど、同じ時間を共有し"生"であることを感じさせた。

「この距離はきっと縮まります。」

そういってLIVEを締めたTakaさんの言葉が現実になる日を私は信じて、今を"生"きることを心に誓ったそんな夜だった。
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