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ユーミン世代オヤジのラブソング考察と新作は名盤と断言する理由

少年はユーミンの歌で愛の刹那を知った。新作は時代が変わっても普遍的愛を唄う名盤になる予感がする

先日、実家にトンボ返りで、墓参りに行ってきた。
僕は心疾患があり、この1ヶ月で、急速に体調が悪化してので、伸ばしていた手術を受けることにした。その前に、オヤジの墓参りと母親の顔を見ておきたかったので、実家に帰ることにしたのである。
 
隠密行動だった。この感染症で、田舎には自粛警察があるようなので、母親と相談して、帰ったことは、秘匿しておいた方がいいだろうということにした。別に法律も何も犯してないのだから、堂々としてればいいのだが、なんかこの頃の閉塞感というのは息苦しい、おかしい、僕が感じる閉塞感は、日本独特の閉塞感のような気がする。
 
そんな変な緊張感のなかで、何をBGMにして帰省するかとというのは、重要な問題だった。ポンと最初に買ったクルマでよく聴いていた記憶が鮮明な松任谷由実さん(以下ユーミンと記述する。荒井由実時代は荒井由実と記述する)が浮かんだのでそうすることにした。その頃の気分で新鮮な気持ちを思い出したかった。
 
ユーミンは時代を一足先に、予言する預言者のような作品を世に送り出してきた。10代、20代に、ユーミンと出会った俺、俺世代の皆さんは、以下のようなことを経験し、また、想像したことがあったと思う。
 
クルマが欲しいけど、貧乏学生には買えない現実。卒業したらクルマを買おう、あるいは助手席に乗りたいと思っていませんでしたか?出来ればそれは、Corvett 1954がいいと思っていませんでしたか?

Corvettは無理だったけどクルマを手に入れて
 
横浜の山手のドルフィンに行ったことはありませんか?ソーダ水の中から貨物船なんか見えないことに現場で気が付いたことはありませんか?

苗場プリンスに行き、スキーをしたことがありませんか?苗場のユーミンのコンサートのチケットをゲットするためにチケットぴあに必死に電話をしたことがありませんか?

中央高速を八王子方面に向かい、クルマで飛ばしたことはありませんか?実際は、真っ暗闇で、今は見学施設になっている某マヨネーズで有名な会社の工場の光が1番眩しく、夜の競馬場はどこにあるのか必死に探したことはありませんか?

晴海埠頭にドライブしたことはありませんか?レインボーブリッジもない頃は、遠くに光が見えるだけで、本当にここで恋が芽生えるか、ロマンチックな場所なのかここはと思ったことはありませんか?

スポーツはラグビーかサーフィンを選択すれば良かったと思ったことはありませんか?そんな彼を応援したいと思ったことはありませんか?
 
そういう考えを持ったことがある人、実践した皆さんは立派なユーミン者と定義する。

女性、OLの恋愛の教祖的に語られるユーミン。

が、その歌詞の世界は、かつての男子、つまり、俺のような、中年オヤジにとっても同じである。強烈に影響を受けた。男の俺にとってもやはり恋愛の教祖、歌詞はバイブルだった。
俺世代の20歳前後の頃は、とにかく何をするにもHow To雑誌が山ほどあった。雑誌の黄金期。が、それはあくまで、男目線で語られているのもで、俺がユーミンを必要としたのは、女性目線での恋愛、女性からみた男というのを教えてくれたからだ。世の中にツバをはくことも、やりたいこともはっきりせず、ぼんやりと、東京に来た俺は、都会での素敵な恋愛を経験したいとは思っていた。そして、前述の質問は、数十年まえに俺が恋愛で実践したリアルな自分の思い出である。皆さんも、1つでも思うところがあれば、きっとその場面で、脳裏にユーミンの歌が流れていたに違いない。

俺は、基本的には活字人間なのだが、最も好きな読み物は、ミュージシャンのインタビューだ。作品についてのインタビューをよく読む。インタビューが好きなのは、俺が中坊の頃、洋楽のインタビューは本当になくて、レコードを買っては、ライナーノーツを暗記するほど読んだからだ。インタビューに飢えていた。今、インタビューがあるのは本当に有難い。インタビューによって、その作品の本質に深く触れることが出来るし、気がつかなかったところを示唆されて音楽の世界観が広がる。

そんなインタビュー好きの俺は以前、ユーミンのインタビューで四畳半フォークという言葉を作ったのは自分であり、また、ニューミュージックという言葉も自身が自分の音楽が全く新しいものであるから、作った造語だというのを読んだことがある。言葉のセンスが違う。絶妙、巧妙なネーミングだ。言葉の魔術師である。

ユーミンの予言通り、日本の音楽事情はユーミンと井上陽水さんの登場で、大きく変化したと俺は思っている。四畳半フォーク時代は終わり、ニューミュージックになり、シティポップになった。

名前が出たので、井上陽水さんにちょっと触れる。井上陽水さんの歌詞の素晴らしさは、言葉の選び方の独自性だ(四畳半フォークを完璧な歌にした『心もよう』は、多分、井上陽水さんの世界観とは異なるし、あの完璧な四畳半フォークで、四畳半フォークは死滅した。しかし、四畳半フォークっていうネーミングが絶妙だな。俺はあのジメジメ感がいやだ)。『この頃、妙だ』と歌い、大ヒットアルバムの『9.5カラット』の次にバブルに浮かれ、ポジティブに生きようという時代に『Negative』というアルバムを出して大コケする。大コケは井上陽水さん自身もわかっていただろう。が、歌詞の世界は、negativeにならないでねという意味を込めている。
つまり、井上陽水さんの歌詞には、常に<世の中、妙だぞ、おかしいぞ>という精神がある。これは親友だった清志郎さんの歌詞も同じだ。だから二人は親友だったんだきっと。名曲『傘がない』を例にすると、歌の始まりと終わりの結論がまるで正反対になっている、こういう歌詞が多く、正解も結論もない。個人個人の受け取り方に委ねているんだけど、“物事には多面性があり、色々な見方があり、それぞれの視点で現実を考えよう”というのが根底にある。その歌詞の世界を簡潔に表現しているのが名曲『東へ西へ』だ

『東へ西へ』
作詞 井上陽水


月は流れて東へ西へ


当たり前だけど、俺はどこに行けばいいの? 歌詞が面白いのだ、これは、また別に書きたい。

俺は、若い頃、今以上に自分が嫌で、聴く音楽は、暴力的か、都会的な音楽と規定していた。そして必死に勇気を出して、俺は、東京砂漠(笑)という未知の世界に暴力的な気分で、飛び出して違う世界を満喫していた、いや満喫しようとして足掻いていた。

ユーミンの明るい都会的な世界は憧れだった。
 
最近のユーミンのツアーは立て続けに行っている 〖松任谷由実コンサートツアー 2013-2014 POP CLASSICO〗 〖宇宙図書館 2016‐2017〗そして、一昨年、ユーミンのアニバーサリーツアー 【TIME MACHINE TOUR Traveling through 45years】に友人と行った。彼とは年に数本のライブに出かける。が、今年は、一本も行けなかった・・・。毎年、年末は矢沢永吉さんの武道館ライブを観て、新しい年を迎えるのが、ルーチンだが、今年は無理そうだ・・・このままだと今年は1月に観たQUEENのライブが最初で最後ということになりそうだ。
 
ユーミンの現在のところの最新ツアーの【TIME MACHINE TOUR Traveling through 45years】は(ライブに行ったファンも多いだろうし、既に、映像も発売され、衛星放送でも放送したから、観た人も多いだろうけど)、ユーミンのライブの歴史を振り返るというコンセプトで展開されるスペクタルなアリーナライブ。過去のステージの再現をコンセプトにしていたので、ステージの演出に重点を置いているのか、僕の趣向からすると不思議な選曲もあったが、その規模、クオリティは圧倒的だった。
20代で観た苗場プリンスの狭いステージの臨場感とは全くの別のアプローチで自身を観客の前にさらけ出すプロ根性、エンターテイナーぶりには脱帽だ。センターステージで、360度の観客の視線を浴びるという挑戦的なステージ。さすが、日本で、ライブに多くの仕掛けを持ち込み、エンターテイメントに仕立て上げたオリジネーターである。

数年前、神保町付近の有名レンタルCDショップが閉店するという記事を読んだ。マニアが涎を流す超レアなCDがあるという。神保町付近の大学に通っていた人たちには有名な店なのだろうけど、僕は学校が西方面で、西方面に愛着があり、現在でも、あまり、東京駅より東側はコンサートぐらいしか行かないので知らなかった。で、行ってみたら、現在は手に入れることは不可能な超レアものCDで溢れていて、結局、閉店まで2カ月ぐらい通い詰めた。レアものはレンタル料金も高かったが、二度とお目にかかれないようなCDは借りまくった。
俺の一番の目的のCDは1986年に限定発売された松任谷由実名義の唯一のライブ盤である幻の『YUMING VISUALIVE DA・DI・DA』(ライブ盤『Yumi Arai The Concert with old Friends』は荒井由実名義)。中古市場でも滅多に出ないし、俺にはとても手が出る値段ではない。が、さすが伝説の老舗レンタルCDショップである。ありました、ありました・・・初めて目にしました。この発見は、数十年ぶりに開催された同窓会で憧れの話もしたことのない初恋の女性に出会うって感覚はこういう気分なんじゃないかと思わせた。

聴いてみたかったのは、1978年に発売された 松任谷由実名義の2枚目のアルバムにして、名盤の『流線形'80』に収録されている『キャサリン』のライブヴァージョンである。想像以上のクオリティで、貴方は変わってしまったと虚無感のある歌詞にユーミンのノンビブラート唱法が見事にハマり、ライブでより一層迫力を増していた。

【TIME MACHINE TOUR Traveling through 45years】で俺は、80年代のライブでは豪華なセットで見せ場で、シンガー ユーミンの凄みを堪能できる『キャサリン』を観たかったのだが、演奏しなかった。これは残念だった
 
俺は『流線形'80』からユーミンはリアルタイムで聴いている。『流線形'80』は、荒井由実時代に顕著なProcol Harum(Procol Harumとユーミンは日本で共演してライブを行っている。衛星放送で放送してくれたので観たのだが、素晴らしいライブで行けば良かったと本当に後悔したライブである)的なプログレ感、宗教的なパイプオルガン(ひこうき雲、翳りゆく部屋に顕著)と文学少女の少女性を感じる歌詞という表現の軸が、リゾート感覚と恋愛の場面を組み合わせた現在の非常にポピュラーなユーミン像へと大きく舵を切ったアルバムである。
現在、言われるところのシティポップの元祖的なアルバムで、ソウル的なサウンドを導入し、歌詞はサーフ&スノウの世界観へと変化している。78年に80年代を予言してみせたアルバムだと思う。
名曲、『ロッヂで待つクリスマス』、『埠頭を渡る風』、そして俺の大好きなアメリカの都会を思わせる来生たかおとのデュエット『Corvett 1954』、前述の『キャサリン』等が収録されている。

このアルバムの最も有名なナンバーは『埠頭を渡る風』だろう

『埠頭を渡る風』
作詞 松任谷由実


白いと息が 闇の中へ消えてゆく
こごえる夜は 私をとなりに乗せて
ゆるいカーブで あなたへたおれてみたら
何もきかずに 横顔で笑って


恋愛の教祖ユーミン時代の幕開けにふさわしい、ラテン風味のナンバー。
この歌は、ユーミンの恋愛観が顕著になっているといっていい。
同じ世界観≠男性女性の位置づけをした名曲が『中央フリーウェイ』だ。
 
『中央フリーウェイ』
作詞 松任谷由実


中央フリーウェイ
片手で持つハンドル 片手で肩を抱いて
愛してるって 言ってもきこえない 風が強くて


クルマでドライブしている歌詞である。そして、クルマを運転するのは、恋愛対象の男性である。勿論、時代もあるのだが、女性は助手席が指定席なのである。

俺が思うに、俺と同世代のユーミンの心酔していた彼女たちと恋愛に、俺は色々と準備が必要だったのだ。自身には自信がないので、プレッシャーのかかる歌であるのだ。それが冒頭の文章である。

ユーミンには星の数ほどのヒット曲、有名曲があるが、最も有名な曲の1つが『守ってあげたい』だ。

『守ってあげたい』
作詞 松任谷由実

So,you don't have to worry, worry,
守ってあげたい
あなたを苦しめる全てのことから
'Caouse I love you,'Caouse I love you.


ここだけを切り取ると、これは慈愛に満ちた歌詞のように読める。
見守るというのは、愛ではあるが、その夢を私も一緒につかむために努力する、苦労するとは言わないのである。これがユーミンである。

このユーミンの世界観の象徴的な歌が、『DOWNTOWN BOY』だ。

『DOWNTOWN BOY』
作詞 松任谷由実

  略
あなたは素敵なDown Town Boy
不良のふりしている
気まずいことがおこっても
私をあきらめないでね

中略

勝気な瞳のDown Town Boy
未来を夢見ていた
どこかで恋をしているなら
今度はあきらめないでね
  


ドライだ。徹底してドライだ
要は男は捨てられた、言い過ぎた、ふられたのである。

なかなか都会に馴染めなかった俺は、人間関係の刹那な感じを学び少しずつ変化していったと思う。

刹那
 
そして、ユーミンの作詞家としての凄みは、その感情、愛情を一瞬の奇跡的な風景として切り取って、描いたことである。風景を描くことにより、その感情は刹那的になり、同時に普遍的に演出してみせた。天才ユーミンである

時代が前後するが、荒井由実時代の 『海を見ていた午後』 が一番わかりやすい

『海を見ていた午後』 
作詞 荒井由実

あなたを思い出す この店に来るたび
坂を上って きょうもひとり来てしまった
山手のドルフィンは 静かなレストラン
晴れた午後には 遠く三浦岬も見える
ソーダ水の中を 貨物船がとおる
小さなアワも恋のように消えていった


このレストランには行ったことがある。当時、カーナビなんてないから、方向音痴の俺は、地図をひっくり返しながら、やっとの思いで、クルマでたどり着いた。ソーダ水を飲み、何か食った。何を食ったのかは忘れた。何故なら、すごく複雑な狭い道で、到着したときには、疲れきっていて、会話もする気がしないし、ましてや風景など観る気力もない。が、三浦岬が観えないことと、貨物船がソーダ水を通して見える場所でないことだけははっきり覚えている(席が悪かったのかもしれないので、観えた人がいたら教えてください)
女性=妻 は大満足である
OLの恋愛の教祖と言われるユーミン。僕と同世代の女性はその歌詞に強烈に影響を受けている。
そして、同時にここまで書いてきたことは、その世界観というのは同世代の【俺たちにも大いに影響があり、俺の俺世代の恋愛のバイブル】だったということだ。
俺は、俺たちは、恋愛の場面でその世界観を実践、実現しなければならなかったのだ。これは無言のプレッシャーだった。
そして、俺は、恋愛を経験し、大人になり、今は中年になり、そろそろ初老にさしかかった。ユーミンの歌で、色々なことを学んで、それなりに頑張ってきたのではないか。

すごく、妄想的で、受動的な俺の経験を書いたけど、俺は、ユーミンの歌で恋愛をし、家族を持った。なんだかここまでさえないオヤジになるとは思っていなかったけど、まぁまぁ俺にしては上出来じゃないか。

そう俺はモラトリアムから抜け出し、現実を感じるようになり、ユーミンの歌で大人になったのである。
  
先日、ユーミンのニューアルバムの『深海の街』の発売と来年のツアーのニュースを読んだ。ニューアルバムの発売はともかく、この微妙な時期に大々的なツアーの発表をするとはさすがユーミン。誰かがスタートしなければならない。そんな義務感があったかどうかはわからないし、アルバム発売、そしてツアーというのは、ミュージシャン ユーミンにとっては当たり前のルーチンなのかもしれない。

で、シングルでも先行発売しているのだろうと思って、サブスクで検索。「深海の街」のビデオクリップを観た。ユーミンが、強烈に社会的、政治的メッセージに踏み込んでいる。コロナ時代、現在の問題をメタファーする映像も素晴らしく、サウンドは、原点のソウルミュージックテイストに溢れていながら、最先端の音になっている。これはユーミン第二章か第三章か何章というべきか、とにかく、新ユーミンの登場であると興奮した。
素晴らしいアルバム、素晴らしいツアーになると興奮していた。
情報を更に検索すると、このナンバーは某報道番組の主題歌として去年発表されていることを知って、更に驚いた。報道番組の主題歌だからとはいえ、1年前に、現在を予言しているとしか思えない。アダムとイブに始まり様々なメタファーに使われる、リンゴが重要な役割を果たしている映像も素晴らしい。

一番驚いたのは、冒頭のシーン。駅のベンチでユーミンが新聞を広げる。語学が出来ないので調べた。

新聞の見出しは、仏語で〖NOUVEAUX JOURS〗新しい日々

これは新作に期待して待ちきれない。とプログレ者の俺は早速に長年の性癖で、変な深読みをする。実はフランス語圏の新聞なのかもしれないが、そうだとしても凄い。これは凄いことになったと最近、ユーミンばかり聴いている。こんなにユーミンを聴いたのは初めてだ。
常に時代の一歩先を読むユーミン。その眼力、ミュージシャンとしての凄みは衰えていない。それは、『深海の街』でも発揮されている
もうすぐ発売されるアルバムはきっと素晴らしいアルバムだ。次のツアーはライブ友達と行こう。

社会的なメッセージに踏み込んだ今後のユーミンが、どのような世界を俺にみせてくれるか楽しみにしている。

常に時代の一歩先を読むユーミン。その眼力、ミュージシャンとしての凄みは衰えていない。それは、『深海の街』でも発揮されている。

映像でリンゴを少女に渡すシーンは、物質主義を歌ってきたユーミンが、コロナ後の【新しい日々】を生きる次世代へのメッセージのメタファーである。個人を描きながら、大きな愛を描くのではないだろうか?

もうすぐ発売されるアルバムはきっと素晴らしいアルバムだ。次のツアーはライブ友達と行こう。
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