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聴かず嫌いの先にあったもの

銀杏BOYZ初心者がアルバムと向き合う

 結論から言う。
 今回の銀杏BOYZのアルバムはめちゃくちゃいい。だからみんな聴いてみて欲しい。

 とか言っている僕は、実は今回のアルバムでやっと銀杏BOYZのよさに気づけたくらいに、銀杏BOYZ初心者である。銀杏BOYZ初心者にもこのアルバムのよさは伝わるし、なんならこれまで聴いてこなかったことを後悔した。もっと早く聴くべきだったと。
 もちろん銀杏BOYZは知っていたし、有名曲は聴いたこともある。聴いてきた有名曲はいい曲だとも思った。ただ、じゃあ銀杏BOYZ好きか?と言われるとそれは違ったし、アルバム聴いたことあるか?と言われると正直それはなかった。なんで聴かないの?と自分に問いただしてみても特に理由はない。強いて言えば、食わず嫌いのように、聴かず嫌いだったのだと思う。そんな僕だから、今回アルバムを聴いてみた理由も待ちに待ったリリースだから!!などではもちろんなく、SNSで絶賛してる人多いから試しに聴いてみるか〜くらいの軽い気持ち。こんな軽い気持ちで聴いてみたら、ガツンとやられて痛い目を見たから、最初の結論になった。

 しかし、最初から受け止められた訳では無い。1曲目の“DO YOU LIKE ME”のイントロ。アルバムのスタートこんな感じなの?と思うくらい、音に対してビビってしまった。ヘッドホンの中で割れながら鳴る音たちに、少し構えてしまった自分がいた。けれども、そんな音の中で歌われる歌詞は、曲調とは異なり、繊細で不器用な印象で、僕にも近い存在のような気がした。あえてジャンルで分けるなら草食系の歌詞。内側では思ってることはあるけれど、それを表面化させることのハードルは高いから、内側に留めてしまう自分と近しいものがあると1曲目の歌詞から思えた。虚勢を張っているだけで、実はすごく分かり合えるのが銀杏BOYZ、そして峯田和伸なんじゃないかと。

 そんな感情を抱きながら、聴き進めていくと自分にとって、最大のポイントがはやくも訪れた。アルバム3曲目。

“大人全滅”

 この曲からは1曲1曲の歌詞の重みをしっかりと受け止め、時間をかけて向き合わないといけないような、背筋の伸びる感覚がした。この曲では2曲目までと音の印象も変わってくるが、人としての共感がどんどん押し寄せた。人間誰しもが持っている「生きること」と「死ぬこと」への想いが、叫びのように歌われる始まりで、これまで聴かないできたことを申し訳なく思った。ここで、完全に人として分かり合えると確信した。自分も「生と死」を小さい頃から深く考えることがあり、願うこともある。そんな自分にとっても、正解のない問題への答えの1つを、この曲が与えてくれたと思っている。

《このうたにこころをこめて くずどもにささげてみます
 じゆうなんてことばは ぼくはしんじない
 いつのひにか ぼくらがこころから わらえますように》

 まっすぐで、あたたかさのある歌詞を聴かず嫌いでスルーしなくて本当によかった、と今は思える。これからの生き方の宣言のようであり、祈りのようでもある。正直、ここまで人としての距離感が身近に感じたアーティストも初めてかもしれない。みんなを代表して立ち向かってくれているような感覚もあり、みんなの理解者であることは間違いない。銀杏BOYZ初心者の自分でもそう思えたのは、アルバム2曲目までで、こちらとの距離感を縮めてくれたからだと思う。人として信頼できると分かると、もうすんなりと言葉たちが入ってくる。

 1曲目から8曲目までは多様な音の中で感情を揺さぶり、歌詞の意味と向き合わせ、考えさせられる曲たちが続いていたと感じていた。胸の内を赤裸々に、素直に、取り繕わずに、言葉に熱を込めて想いを伝えようとしているのだと思い、僕も歌詞を噛みしめながらじっくりと向き合った。向き合った結果として、1曲ごとに自分に対して問われている気持ちになっていた。

「こんな気持ちと君ならどう向き合うんだい?」と。

 そんな中で大きい変化があったと感じたのが“生きたい“だった。この曲も「生きること」に対する峯田和伸の考え方、想いがこれでもかと伝わってくる。しかし、これまでとはどこか違う。

《 生きたくってさ。
  生きたくってさ。
  生きたくってさ。
  生きたくってさ。
  醜いものだろうと。見えにくいだろうと。
  生きているだけで
  輝いてみせるよ。 》

 僕はこの歌詞を峯田和伸という男の覚悟と感謝ではないかと思い、受け取った。そして、開放的な曲でもある、と。聴いている僕らに向けてのようでもあり、家族や身内、友人などの大事な人に向けてのメッセージとしても受け取った。まさにアルバムタイトルのように。8曲目までの曲たちのイメージとしてあった、どこか内向的で不器用な人が、この曲からは大きな決断をする転機の曲として、アルバムの大事な立ち位置の曲になっている感覚が聴いていてあった。これまでは言いたくても言えなかったことを、勇気をだして伝えてみたような画が浮かんできた。「俺ならこうするよ。」と、不器用ながらもまずは手本を見せてくれたような、そんなイメージをこの曲から受けた。背中で語ってくれる男の頼もしさがそこにはあった。この曲がこの位置にあることで、光に差す方向を示しているようで、前を向けた。

 それを超えた先に待っている日々は、明るい光のさす世界のようが待っているのかなと思うくらい優しい2曲が、希望のように耳から伝わってくる。
 特に、アルバムラストの“アレックス”はアルバムの中で最も美しかった。
 歌詞からは、旧い自分との別れの画が浮かび、身体も含めて生まれ変わろうとしているようだった。アルバムが1つの作品として、そして生涯の終わりをむかえていることを象徴していた。まるで走馬灯のような歌詞から、終わることへの切なさと去り際の寂しさは曲が終わっても耳から離れなかった。自分も最後にこんな風に思うのかな、最後にちゃんと《だいすきだったよ》と曲のラストのように伝えることができるかな、と先への期待と不安がよぎった。「生きること」の難しさと「生き抜くこと」の美しさを、ラストのアウトロも含めて11曲を通して成立させたのだと、銀杏BOYZ初心者の僕は受け取った。

 今回のアルバムの中では、人としての成長記録を追っているように感じた。少なくとも自分はこのような感情を抱いて、約1時間の作品を聴き終えた。正直、これが峯田和伸がアルバムに込めたことの的を射ているかは分からないし、銀杏BOYZをめちゃくちゃ好きな人たちからしてみたときに、浅はかな考えになるのかもしれない。
 ただ、自分はこの作品を通して、自分と同じように胸の内に秘めた言いたくても言えない想いや「生と死」についての想いを抱いている人が絶対にいて、アルバムを通じて確かに出会えたこと。そして、それらを考え抜き、振り絞って伝えた先には違った見え方ができる世界があるのではないか、という光を見せてくれた。恋や愛、生と死、出会いと別れ。色んなテーマが詰まっていたのがこのアルバムで、君ならこの気持ちとどう向き合うのか、いざその時になったら君はどうするのか、強く投げかけられた作品だったと感じている。現実感が強く、リアルな世界観に包まれた曲たちを通して、向き合うきっかけと勇気をくれたと思えた。聴きながら真剣に考えたからこそ、最後は優しい気持ちで聴き終えたし、人としての峯田和伸、銀杏BOYZを好きになれた。不器用で飾らない姿と垣間見える男らしさが共感と憧れを抱かせているんだと思う。少なくとも自分は、アルバムからそう届いたし、僕はどんなことがあっても最後まで「生き抜きたい」と思えた。

 こんなに内容が詰まりながらも自分とも向きあえるアルバムを僕は知らなかった。だから最初の結論に至ったのだ。
 僕はまだ銀杏BOYZを知らなすぎる。これから、どんどん銀杏BOYZ、そして峯田和伸という男を知れることが楽しみでしかない。背中を追いかけていきたいと遅ればせながら感じている。まだ僕にとっての銀杏BOYZとの出会いは、始まったばかりなのだから。
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