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時を越えて、13年前の私が会いに来た

嵐 ~2020/11/3 アラフェス2020 at 国立競技場~

2020年11月3日、国民的アイドルグループ「嵐」が無観客配信ライブを国立競技場で行った。

2008年頃まで私は嵐のファンだった。ファンと言っても、片田舎の子どもにできるのは、番組を観たり、雑誌を買ったり、レンタルCDをカセットテープに録音して擦り切れるほど聴くくらい。最近の(と言ってもここ10年)嵐のことはほとんど分からないため、無観客配信ライブも「あぁ、やるんだ」くらいにしか捉えていなかった。しかし、記念すべき20周年のライブだから見てほしいと友人に言われ、ファンクラブ会員でもなかった私も運よく観ることができた。

今回の配信ライブは2部構成。1部はファンクラブ限定、2部は誰でも観ることができる。知っている曲たくさんあるな~と懐かしがりながら見る私に、聞き覚えあるイントロが流れてきた。「『Still...』だ」すぐに分かった。そして私は2020年から2007年9月に戻された。



2007年9月。

彼女は嵐の『Happiness』というCDがどうしても欲しかった。それまで大好きな嵐でもCDが欲しいとまでは言わなかった。しかし今回は、なぜか、自分のもとにCDを置いておきたい、そう思った。店に着いた彼女は1300円を握りしめてCDが置いてある2階へと一目散に駆けて行った。緑の背景に嵐の5人が並んでいるジャケット、これだ。1枚選び、レジへと持っていく。幸せそうな姿。「お母さん!すぐ聴きたい!」そう言って車に乗り込むと、すぐにCDを開け、プレーヤーにCDを入れた。初めて買う嵐のCD、宝物だった。

1曲目の『Happiness』が終わる。そしてすぐに2曲目が流れる。『Still...』だ。


「いつか…」 君が言った 忘れそうなその言葉を思い出していた
道の上で季節を呼ぶ 風が止まる
そして君の声で我に返る いつもの暮らしは続いている
何もかもが輝いてたあの日から

扉を閉ざしたら 消えてしまいそうなことばかりだ
素直になれなくて去って行った儚い毎日

たぶんあの時僕らは歩き出したんだ 互いに違う道を
いつかあの想いが輝き放つ時まで
車輪が回り出したら 旅は始まってしまうから
もうはぐれないように 過去をそっと抱きしめる


中学1年生の彼女には全ての意味は理解できなかった。でも何となく歌詞が好きで、それからずっと『Still...』を聴いていた。母親と買い物に行くときも、家族と遠出するときも、塾に向かう車の中で忘れていた宿題を解いているときも、友人とケンカして落ち込んでいるときも、どんなときも『Still...』がいた。『Happiness』を聴きたくて買ったCDだったが、正直、カップリングの『Still...』ばかり聴いたと彼女は笑う。



2020年11月3日。

新国立競技場で流れた『Still...』は、13年の時を越えて私の大切な日々を思い出させてくれた。13年前買った、たった1枚のCD。カップリング。この曲との出会いがあったから、奥底にあった記憶もよみがえった。これから何十年経っても、『Still...』は私の人生の1曲になるだろう。



13年前は1枚で我慢したCD。今では就職をし、自由に買えるようになった。特典目当てで100枚以上買うこともある。しかし、購入したものは未開封で眠ったままだ。
幼い頃、自由にCDが買える大人が羨ましかった。初回限定盤、通常盤、全部ほしい。たくさん買いたい。そう何度願ったか。

13年前の自分を思い出し、私はひとつ疑問に感じた。果たして、今CDを100枚以上買える私のほうが、幼い頃の私より幸せなのだろうか。お年玉と毎月のお小遣いだけでやりくりをして、やっと買えた1枚を大切にし、人生の1曲を見つけている幼い頃の私のほうが音楽を楽しめているのではないか。


きっと2007年の私は、2020年の私を幸せだと言うだろう。幸せの価値は環境で移ろう。「1枚しか買えなかった過去」と「たくさん買える現在」どちらも経験した上で、2007年の私と対峙できたからこそ、自分の価値を疑問視することができた。


次に『Still...』を聴いたときも私は2007年のことを思い出すだろう。そしてきっと、2020年にこんな思いになったことも思い出すだろう。そしてその時も自分の価値に疑問を感じるだろう。


『Still...』にこんな一節がある。

車輪が回り出したら 旅は始まってしまうから
もうはぐれないように 過去をそっと抱きしめる


私の人生の旅路は立ち止まることができない。前に進んでいく中できっと過去も忘れてしまうだろう。これからも『Still...』を聴くたび、過去を思い出し、大切な思い出を抱きしめながら、また一歩ずつ歩んでいきたい。
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