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立ち向かうことの美しさ

2019年夏のBABYMETAL名古屋公演『Shine』

今にして思えば、あれは、二人の決意だったように思う。

それは、2019年夏のBABYMETAL名古屋公演。
ちょうど一週間前の横浜公演で、アベンジャーズを含めた三人編成により、新たなスタートを切ったBABYMETALは、この日の名古屋公演でも、三人でのパフォーマンスを披露していた。
代表曲である『Road of Resistance』で始まったコンサートは、新曲を含めたヒット曲が次々と演奏されていった。

やがて、コンサートが終盤を迎えた。
ステージに登場したのはMOAMETAL。アコースティックギターを静かに演奏し始めた。
観客の大歓声が沸き起こる。スクリーンには黒い金環日食が映し出され、ギターの音色に導かれて、徐々に明るくなっていく。
闇から光へ。

何かが起こりそうな予感がした。
すると、SU-METALとMOAMETALの二人でのパフォーマンスが始まった。
「えっ」 どうして、二人なの?

その時、二年前のシーンを思い出した。
2017年12月、広島グリーンアリーナでのSU-METAL聖誕祭。
あの時もBABYMETALは二人だった。
でも、あの時は、不測の事態による二人での編成。
最初から二人での編成を前提としたパフォーマンスではなかった。

なのに、名古屋公演の終盤で、敢えて二人でのパフォーマンスを行った。
曲は『Shine』、初披露の新曲。
静けさと激しさが交差するドラマティックなナンバー。

SU-METALの歌声は、ある時はビロードように艶やかで、ある時は激しく力強い。ゆっくりと風が流れたかと思うと、嵐のような叫びが耳に飛び込んでくる。
MOAMETALのダンスは繊細でダイナミックで美しい。一心不乱に舞っている。

その時、私の頭の中で何かが弾けた。
何時もと違う。何か何時もと違って、二人のパフォーマンスを支配している別の何かがある。二人は何かに突き動かされている。何かに突き動かされて、歌い舞っている。
そんな感じがした。

一体、何なのだろう。

私は昔のことを思い出した。
今から、およそ四十年前のことになる。
当時、学生でロック・バンドを組んでいた私は、ある時のコンサートで、何時もと違う雰囲気を感じて演奏をしていた。
演奏中に、まるで自分の体が勝手に動いているような感覚に陥ったのである。
楽器を演奏しているのは自分のはずなのに、勝手に体が音楽に反応して動いている。
音楽が、自分の体を動かしている。音楽が自分を支配し、突き動かしている。
そんな不思議な体験が一度だけあった。

名古屋公演での『Shine』のパフォーマンス。
この時、二人は音楽に突き動かされていたのではないだろうか。
音楽の魔法に掛かっていたのではないだろうか。

音楽の魔法に掛かる瞬間、それはパフォーマンスに集中している時に起こる。
何も考えずに、ただただ、音楽に集中すること。
そうすると、音楽が勝手に乗り移ってくる。
自分の体が音楽に支配され、魔法に掛かったように体が動き出す。
四十年前の私は、そんな感じだった。

でも、そんな瞬間は、そんなに滅多には起こらない。
音楽に集中し、音楽と一体となった時に、初めて、魔法に掛かった瞬間が生まれる。
名古屋での『Shine』のパフォーマンスは、二人が音楽に集中し、音楽と一体となった奇跡的な瞬間だったように思う。

ここで、『Shine』の歌詞について、少し話しをしたいと思う。
『Shine』の歌詞には、いろいろな思いが込められていると感じている。
でも、私の中では、『Shine』とは音楽そのものを指しているように思えてならない。

  巡り会えた 奇跡 信じて
  僕らは行く 君のもとへ

この歌詞を聴いた時、「僕ら」とは「音楽を愛する全ての人たち」であり、「君のもと」とは「音楽」そのものを意味しているように、私は感じた。
つまり、先述の歌詞は「音楽に出会えた奇跡があって、私たちはずっと音楽を愛して追い続けていく」ということを歌っているように感じたのである。

  Shining in my heart
  Shining in your heart
  Shining forever

これは『Shine』の最後の歌詞。そこに込められた思いは、
「音楽は私たちの中に常に存在し、これからもずっと私たちの中にある」
そういう力強いメッセージに感じられた。

そのメッセージと共に、
「BABYMETALはこれからも音楽を歌い続けていく。SU-METALとMOAMETALの二人の絆の中で」 そんな、二人のみなぎる決意を感じ取ることができた。

名古屋公演での『Shine』のパフォーマンスの最後は、二人が光の中に進んでいくところで終わった。
それを見た時、2017年の広島公演の最後で、二人が光の扉の中に吸い込まれていく場面を思い起こした。あの時、光の扉の向こうには、誰かがいるような気がした。それは、二人の大切な仲間ではないかと思った。暖かい光に包まれて、二人ともう一人の仲間の姿が見えたような気がした。

『Shine』の光の向こうには、誰がいるのだろう。

『Shine』の演奏が終わる時、スクリーンには再び、金環日食が映し出された。

金環日食は、かつて、「希望のリング」と呼ばれたことがある。
2012年5月のことになる。129年振りに日本で金環日食が観測された。
その時、被災地福島の五万人の子供たちに、目を保護する「観察用シート」が配布された。
配布したのは、天文関係者のグループ。
彼らの思いは、子供たちに「ひとときの天体ショーに将来の夢や希望を見いだしてほしい」ということだった。

金環日食は「希望のリング」であり、『Shine』は音楽の希望である。
希望を抱いた多くの人たちが、『Shine』の光の中に包まれていて欲しい。
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