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ローリング・ストーンズという生き方。

ロックすることは生きること。

私は1984年生まれである。洋楽を聴くようになったのは中学、高校のときだった。ローリング・ストーンズを聴き始めたのは、高校一年のとき。その時点において、ストーンズが出していた最新アルバムは、『ブリッジズ・トゥ・バビロン』だった。1997年のこのアルバムは、当時キャリア30年以上のバンドの音にしては現代的で、やや後追いで聴いた私も、大いにのめり込んだものだった。2002年に、当時のベスト盤である『フォーティー・リックス』がリリースされた。当時、ストーンズはキャリア40年の節目に、「リックス・ツアー」を敢行。ミックは、「チャーリーは1963年まで参加していなかった」ため、「40周年ツアー」という呼び方をしなかった。「フォーティー・リックス」に収録された名ナンバーももちろん素敵だが、にわかなファンとしては、最新のオリジナルアルバムをリアルタイムで受け止めたかった。

2005年、『ア・ビガー・バン』がリリースされるとストーンズのオフィシャルからアナウンスされる。8月31日、札幌のタワレコでCDを買った。冒頭の「ラフ・ジャスティス」から、圧巻のグルーヴに圧倒された。とても60過ぎたジジイのボーカルには聞こえなかった。キースのギターも、チャーリーのドラムスも、熱い臨場感に満ちており、聴いているこちらも圧倒されるのだった。彼らはまったくムリをせず、おしまいのキースの『インフェミー』が終わったあとも、演奏を続けるかのごとき勢い。とてつもない生命力に、元気のない大学生は圧倒された。その中で絶品だったのが、キースの『虚しい気持ち』だった。「お前抜きでは虚しい」と歌うキースは、まさに生ける伝説だ。近年はミュージシャンが還暦過ぎて活動するのは珍しくないが、ミックも、キースも、チャーリーも、70を過ぎても活動するんじゃないか、と聴いているこちら側が心配になるほど、呆れるほど元気だった。

実際、2014年に、70歳になったミックはストーンズとして来日している。2012年に出たベスト盤の『GRRR!~グレイテスト・ヒッツ1962-2012』に入っていた「ドゥーム・アンド・グルーム」「ワン・モア・ショット」には圧倒された。枯れる気配がない。これまであらゆることを受け入れて生きていたバンドが、これからもあらゆることを引き受けるぞ、といわんばかりの、現役表明だった。実際、最新のベスト盤『HONK』には、デイヴ・グロール、フローレンス・ウェルチ、エド・シーランらとの共演が収まっている。フローレンスが歌う「ワイルド・ホース」が特に素敵だった。1971年の曲なのに、古い感じがまるでなく、2010年代のストーンズのナンバーになっているのには、驚くしかない。

「良い曲はワインのように、時間が経つほどよくなっていく」とキースは言っていた。1965年の「サティスファクション」も、発表されてから50年以上経った今でも演奏されている。『HONK』に収録されている、デイヴ・グロールとの「ビッチ」も、発表当時より素敵になっていた。それは、ストーンズ史において「名盤」とされているレコードに限らない。駄作の部類に入るかもしれない『ダーティー・ワーク』『アンダーカヴァー』の曲も、しっかりとストーンズの曲であり、彼らのクラシックだ。『アンダーカヴァー』の「シー・ワズ・ホット」も、スコセッシの映画『シャイン・ア・ライト』の中で演奏されていた。

どうして私はストーンズを聴き続けるのか、と自問してみた。ストーンズの曲や、ストーンズの生き方が、我々市井の人間に共感されやすい為ではないか、ということに思い至った。生きるためには、学校に行ったり、仕事に行き、食事をつくり、寝る、という人間の等身大の生活を、ストーンズは裏切らないのだ。黒人音楽を学び、カバーし、オリジナル曲をライブで演奏する。ライブに来てくれた客には、最大のサービスと敬意を払う。そういった、バンドの基本をけして逸脱しない。さすがに2020年になり、彼らも年齢が年齢なので、オリジナルアルバムを作るのは体力的に無理かもしれない。2016年の『ブルー&ロンサム』はカバーアルバムであった。

60年代から黒人音楽を演奏してきた彼らは、ルーツを重んじ、演奏することが大事だとわかっている。彼らが80歳になったら、さすがに活発なライブ活動は無理になってくるだろうけど。それでも、ストーンズは終わらない。16歳から彼らを聴いてきて、彼らがいなくなることなど、考えられない。もうこの世でロックをやる人は激減しているが、ロックンロールは終わらない。等身大の人間の生活と、ロックのありかたが乖離したとき、ロックは終わってしまうだろう。私たちの生きる現実を、ロックは映し出している。市井の人間の生活が終わるということは、ロックが終わるということだ。ロックが終わるということは、ストーンズが終わることである。どれだけ金を稼いでも、ストーンズはいつまでも反体制で、ならず者である。私たちがストーンズを聴くのも、理不尽な現実に抗おうとしているためである。抗いつつ、日々の生活は送らねばならない。ストーンズは生き方である。生きて、日常とたたかうことこそ、ロックなのだ。間違っても、ドラッグに溺れたりすることはロックではない。私たちがあきらめずに、自分の力で生きて、理想を追い求めつつ現実とたたかうこと、それこそがロックなのだと、ストーンズは私に教えてくれたのだ。
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