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新たな時代の目撃者たち

UNISON SQUARE GARDEN 「"LIVE (on the) SEAT"」を見て

来たる10月25日、私は今までにない気持ちでその日を迎えていた。

今日はUNISON SQUARE GARDENのライブの日。これまで何度も迎えてきた日のはずなのに、今日は一段と緊張する。

そう、今日は新型コロナウィルスが流行してから初めてのライブなのだ。
自分なりに感染対策はしっかりやってきたつもりであったし、(なんせこちらは家族や職場のほかに大好きなバンドを背負っているのだから当たり前だ。)楽しみが99%なのだが、どこか拭いきれない不安が1%。
座ったままで、1時間しかないライブを心から楽しめるのだろうか。
そんないつもとは違う少しの不安と高揚感を胸に抱え、私は会場へ向かった。

手指消毒をしっかり行い、手すりを拭いてくれるダスキンの方を横目に見ながら席に着くと、まばらな客席が目に入る。しかし今日は(後にMCで言及されていたが)初めてのsold out公演のはずだ。いつもなら始まる前に聞こえる談笑も、今日は聞こえない。
そう、チケットは一人一枚しか購入できず、座席は最低一席前後左右が空いているのである。

何をするでもなく、美しいホールの天井を見つめながら開演を待った。
ものすごく静かな客席を3階席から眺めながら、本当に今日、ここでUNISON SQUARE GARDENが見られるのだろうか…という不思議な気持ちになったのを今も覚えている。

そんな永遠とも思えるような待ち時間が終わる。アナウンスののち、客席がふっと暗くなる。
その瞬間、今までの静まりかえった客席が嘘のように、割れんばかりの拍手が鳴り響く。
今の私たちには喜びや、ワクワクや、待ち焦がれていたこの想いを伝える方法が拍手しかないのだ。
私も同じように手が痛くなるくらいの拍手をする。ここにまた帰って来れたんだ、その気持ちが高まり自然と涙があふれていた。

いつもならイズミカワソラ「絵の具」のSEが流れ、メンバー登場という流れがお決まりだが、今日は違う。
何も見えない真っ暗な空間の中、ボーカル斎藤宏介の歌声が、暗闇に突如響き渡った。

『12時 時計塔の下新しいワンピースで 軽やかに、それは軽やかに走り出す』※1

クローバーだ、そう認識する間もなく美しい歌声が何も見えない暗闇に響く。視覚から得る情報が何もない分、小さなブレスや透き通る高音が私たちの耳を直接刺激する。

『「また、会おう」って言ったフローリア』※1

1番の最後、たっぷりの間を持たせて歌われたフレーズで、私たちはこの曲が一曲目である理由を理解する。

涙が止まらないまま、幕が上がると、そこには私たちが待ち焦がれたUNISON SQUARE GARDENの3人がいる。こんなに美しいライブの始まりを、私は知らない。

ベースとドラムのサウンドが力強く、だけどどこか優しくホールに響き渡る。
ホールの全体を見渡すように立ち上がる、ドラムの鈴木貴雄が見えた瞬間、待ち焦がれていたのは私たちだけではなかったのだと少し嬉しくなる。

クローバーの美しいアウトロが終わった瞬間、鳴り響くポップでエネルギッシュな音。フルカラープログラムだ。
緊急事態宣言後、初めて行われたオンラインライブ「LIVE ( in the ) HOUSE」の本編ラストを飾ったこの曲。思い入れがないファンの方が少ないだろう。ベース田淵智也のアグレッシブな動きとともに、イントロから会場のボルテージが一気に高まるのがわかる。

『ふざけろ!「いつか終わる、悲しみは」 どうか忘れないでよ』※2

そんな力強いフレーズで締め括られるこの曲は、開演前に抱えていた緊張や不安から私を一瞬にして解き放ってくれた。

次に畳みかけるように「フィクションフリーククライシス」、そして「誰かが忘れているかもしれない僕らに大事な001のこと」が続く。
フィクションフリーククライシスでは、小気味良いリズムと手数の多いドラムで会場が一気に熱を帯びていくのがわかる。
音源と同じ部分で手拍子が自然発生する。いつものライブハウスが思い出されて嬉しくなる。

続いて、照明の雰囲気が変わると先ほどとは打って変わって激しくギターがかき鳴らされ、一瞬で意識がロックナンバーに占拠される。始まったのは「セレナーデが止まらない」
イントロとともに田淵がステージを駆け回る。ふわっとしていた空気がかき鳴らされるロックサウンドとともにグッと締まるのがわかる。

このバンドのライブはこういったギャップがたまらない魅力のひとつだと思い出す。私は確かに、UNISON SQUARE GARDENのライブを見にきているのだ。

その空気はそのままに、続いては新アルバムのリード曲でもある「世界はファンシー」と、息つく間もない怒涛のような展開だ。
MCもほとんどなく、暗転すら少ないにも関わらず、少しも置いてけぼりにされている気がしない。むしろ、一曲一曲が濃密で、楽しくて、愛おしくて仕方ない。それと同時に、あっという間に時間が過ぎていくことに寂しさを覚えてしまう。時間が止まってほしい、ライブ中何度そう思ったことだろうか。

そんな私の気持ちを読み取ったかのように、
ステージに淡いオレンジ色が灯る。
「君はともだち」
斎藤の今までとは打って変わって優しく透き通るような歌声に、田淵・鈴木のやわらかなコーラスが重なる。怒涛のようなライブの流れから心を一旦落ちつかせてくれる。

そんな優しすぎる曲の後に、斎藤が口を開く。
普段は争奪戦になる地域もあるライブチケットが、今ツアーでは今日が初めてのsold outだということを聞かされる。改めて、現実の厳しさを思い知る。

「せっかくだから、新しいアルバムから一曲」
そう締め括られて始まったのは、「夏影テールライト」。
少し切なさのあるメロディーと歌声に思わず目を瞑ってしまう。
「またアルバムツアーも改めて回ろうと思っている」
そうさらっと告げられた言葉が、どれだけ嬉しかったかわからない。

『幻に消えたなら ジョークってことにしといて。』※3

「夏影テールライト」ののち、アルバムの曲順通りに「Phantom Joke」が始まったとき、まだ見ぬツアーを絶対に待ち続けると決めた。

そして熱を高めるようなセッションののち始まったのは「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」、そして「ライドオンタイム」。会場のリミッターが一気に外れるのがわかる。

辛かったはずの日々や、鬱屈とした毎日が思い出せなくなるくらい、キラキラしたステージ。曲に合わせてくるくる回る鈴木のドラムスティック。斎藤に近づきエフェクターを踏む素振りを見せ遊ぶ田淵。メンバーの溢れんばかりの笑顔。思い思いに音を楽しむ観客。
私たちが愛してやまない、いつものUNISON SQUARE GARDENのライブがそこにあった。

キラキラ光る余韻とともに、美しいイントロが流れる。「harmonized finale」だ。
汗と涙と笑顔がぐちゃぐちゃの顔でステージを見つめ、音と歌詞の一つ一つを噛み締める。

当たり前が当たり前でなくなってしまったこの世界で、ただただライブが見たいと懇願した日々の先に、UNISON SQUARE GARDENのライブがあってラストにこの曲がある。
こんなに幸せなことがあるだろうか。
またいつライブができなくなるかもしれない。明日からは鬱屈とした日々が続いていく。それでも私は願ってやまない。

『今日が今日で続いていきますように』※4


ステージの明かりがふっと落ち、斎藤が一人照らし出される。

『何回だってI'm OKまだ立てるから 君を追いかけるよ その未来まで』※4

アウトロのギターの一音が静かに消えてしばらくすると、もうステージには誰もいない。
背景には大きく「SEE YOU NEXT LIVE」の文字。
ああ、終わってしまったんだ。呆然と誰もいなくなったステージを見つめる。そこに不思議と悲しみはない。きっとまたこのロックバンドは音を届けにきてくれる。そう思えたからだ。

規制退場ののち、外に出ると、琵琶湖を背景に花火が上がっていた。先程演奏された夏影テールライトを脳裏に描きながら私は帰路につく。
またきっとここに来よう。
そう胸に誓いながら。






※1.「クローバー」※2.「フルカラープログラム」※3.「Phantom Joke」※4.「harmonized finale」(すべてUNISON SQUARE GARDEN)より引用。
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