4729 件掲載中
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

信頼の成分

ゴールデンボンバーに見る、スターのかたち・ファンとの関係

「芸能人」、「スター」と聞いてどんな人を思い浮かべるだろうか。

星は天高く、気高く、届かない場所にある。テレビの中のスターも、崇めると言えば大げさだけど、キラキラとしていて、まったくの別世界にいる存在…

そう思っていた。


✳︎


ラジオにゴールデンボンバーのボーカル・鬼龍院翔さんが出演されていたときのこと。「とがった活動をしていても、ファンから愛される理由は何か?」という問いに鬼龍院さんは、どんなときも「正直」でいる旨を一貫して述べていた。

「正直」。

きわめてシンプル。けれど、人は素直になれず、たびたび苦悩する。ましてや有名人。常に正直でいることは、決して容易なことではないはず。だが、鬼龍院さんの「正直」な姿勢は驚くほど徹底されていた。


✳︎


「トラブルが起きたときもなるべくすべてをオープンにする」と、鬼龍院さんは話す。トラブルさえ正直に話すということは、イメージを売る面を持つ芸能界ではときにリスクにもなることだ。しかし、事務所側に「この件はブログに書かないでくれ」と言われたようなことも、押し切ってブログに書いてきたのだそう。もちろん非があれば素直に謝ることもしたという。

すべてをさらしてしまえば、失望したファンが離れてしまう危険性がある。実際に離れていったファンもいるかもしれない。誹謗中傷だってきっとあったはず。それでも、鬼龍院さんは「正直」でいることを貫き続けた。それは弱気になったときも同様で、ブログやツイッターには弱気な発言やへこんだ気持ちがそのままつづられていたりもする。

そうして落ち込んだときでさえ正直に気持ちを吐露していると、いつしかファンの反応に変化が起きたのだそう。それは「ファンが心配してくれる域にまで達した」という変化だった。落ち込んだ原因となったトラブルうんぬんよりも、「鬼龍院さんのメンタルが心配だ」という声が聞こえてくるようになったのだとか。

心配って、信頼を超えて愛情だ。けれど、こうしてだんだんと信頼が得られるまで実に6~7年の歳月がかかったという。


✳︎


元気なときは元気な気持ちを、病めるときは病める旨を素直につぶやく。そんな自分という存在について鬼龍院さんは、「成長物語ゲームの中の人間だと思ってやっている」と表現した。例えば「たまごっち」の中のキャラクターのように、「みなさんのスマホにお気に入りのアーティストを飼っている感覚」なのだと———

この解答に至っても、鬼龍院さんはあまりにも正直で。清々しいくらい媚びていないし、ファンよりもメンバーよりも事務所よりも誰よりも、鬼龍院さんは「鬼龍院翔」を俯瞰している。

補足しておくと、100%正直でいることは不可能だと思うし、もちろんその必要もないと思う。なぜなら、私たちファンが見ている姿はあくまで「一部」だからだ。アーティストとファンの心の距離がいくら近くても、身内でも友人でもない私たちは、大部分を知らない。

「自分は成長物語ゲームの中の人間」であるという概念も、スター的・キャラクター的要素が含まれていると感じる。憧れるような、届かない存在。

……でも、それにしても、人間くさい。

実際の成長物語ゲームでも、主人公は苦悩やマイナスポイントを口にする。だが、ノンフィクションな存在である鬼龍院さんの言動からは、泥くささや葛藤、努力がリアルに垣間見えてしまう。人間だから、とがった感情やダークな側面だってある。ときに落ち込みながら、前を向きながら、私たちと同じように生きているんだなと思える。そんな姿に、励まされる。

成功すればするほど、アーティストの仕事は商業主義になっていく。でも、アーティストもファンも、ひと皮めくれば日常を生きる同じ人間だ。

彼らは私たちの地続きに生身で生きているということ。そう気づいたとき、そこには決して機械的ではない「温度」がある。たとえそれが、本人をかたちづくる一部にすぎないとしても。


✳︎


アーティストとファンってなんだろう。

憧れの存在?

うん、それは昔も今も変わりない。

利害関係?需要と供給のビジネス繋がり?

いやいやその前に人と人。

「信頼」の成分は、たぶん、「正直」でできている。



「正直」でいることは、ときにリスクや恐怖がついて回る。「こっちの方がラクじゃん」と、安易な道に流れていくのではなく、丁寧に着実に、一歩ずつ進まなければならないいばら道。

ファンからの信頼を得るため、現にゴールデンボンバーの場合は6〜7年という膨大な時間がかかっている。でも、鬼龍院さんやゴールデンボンバーを見ていて感じた。

「正直」でいることは、一番の近道なのかもしれないと。
  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい