4404 件掲載中 月間賞毎月10日発表
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

愛したわりには愛されなかった恋をした時、コレサワが教えてくれた事

絶望するな、私たちにはコレサワがいる

手痛い失恋をしたことがある。
理由は簡単。好きな人に好きな人ができたのだ。

愛したわりには、愛されない恋だった。

若気の至り。誰にでもあること。一言で片づけることもできるけれど、当時の私にとっては生きる意味を失うほどの出来事だった。自分至上最大の喪失。だからこそ、コレサワというシンガーソングライターとの出会いは衝撃的だった。コレサワに出会うためには、あの失恋は必要だったとすら今でも思う。

“あたしを彼女にしたいなら”のフレーズで、注目されたコレサワ。

可愛い声とは裏腹に、彼女の書くラブソングの歌詞は正直、決してポジティブではない。
歌詞のあちこちに、恋愛にまつわる皮肉と悲しみが散りばめられている。それは「会えない」とか「告りたいのに告れない」とか、恋愛独特のドキドキするものではない。

恋をする自分との闘い。そんなイメージだ。

例えば、『君とぬいぐるみ』

誕生日を迎えた彼女が、大金はたいてゲームセンターで取ったぬいぐるみをくれた恋人に向かって書いた曲。

“無駄金じゃなかったよ そう言ってぬいぐるみくれたの
可愛いね これどこに飾ろうかな
それよりあんたさ そんなに使ってさ
あたしになんか 別にいいのに“

恋人のそっけなさと優しさに振り回される彼女が、最終的に行き着く場所は「相手を称え、自分を責める」という何とも哀しい愛おしいおセンチな乙女心である。

さらには冒頭の『あたしを彼女にしたいなら』

“あたしを彼女にしたいなら スッピンまで愛してね
あたしを彼女にしたいなら 夢ばっか見せないでね“

“「生まれ変わっても一緒」 「この手は離さない」とか
ダサイからマジでいらない 映画の予告で泣いちゃうくらい
泣き虫ですけどいいですか?
君がいま持っている恋心 返却するなら今のうちよ“

相手を失わないように。でも、自分自身も見失わないように。
誰かを愛するには悲喜こもごも付き纏う。それを歌う曲は数え切れない。

しかし、コレサワのラブソングは、一味違う。ひとりの人間として愛される権利を歌い、「わたしはわたしでいたい」という根本的な希求に迫っているのだ。

だからこそ、失恋して生きる意味を失っていた私に、一筋の光をもたらした。


コレサワの曲に、あまりにも真理をつきすぎて戦慄すら覚えた歌詞がある。
それは『いたいいたい』

“自分のこと大切にできていないのに
誰かに愛されるわけがないでしょう“

「はいはいはいはい!私は彼の思考に沿って自分を変えちゃう人間ですわ」と、泣きながら笑った。大変辛い失恋だったけれど、とても無理をしていたことに気付かされた。遅刻されても怒らなかったし、一度も本音なんか言えなかった。自分のことを一切大切にしない恋愛の行き着く先は、はじめから見えている。コレサワが教えてくれたこと。

それでも、聴く者を「ふふふ」と笑わせて前へと進ませ、「でも好きだったんでしょ?いいじゃん!」と脆い恋心を肯定してくれる。
ポップで秀逸な励まし方だ。


恋愛をすると自然と自分の本性が出てしまう。
醜い自分に出会い、消えてしまいたくなる。相手との価値観の違いを、突き付けられる。自尊心の低さが露呈されるし、恋情だけではどうにもならない人間の心の脆さに打ちのめされる。

コレサワが書くのは、恋愛を通じて現れる真の自分との格闘だ。

誰かを好きになることも勿論大切だけれど、そこから自分がどのように成長して、どのように変わっていくか。一瞬一瞬に彼女は意味を見出し、真摯に向き合っているから、他のラブソングと一線を画すのだ。

以前、テレビで「誰かと付き合って自分のなかのルールが変わってしまうのが嫌」と言っている学生がいた。
それに対して、相談相手のタレントが「相手を通して変わるから恋愛は素晴らしい。変わらなくていいなら恋愛をしなくてもいいんじゃないですか?」と言っていた。

なるほど、恋愛には、自分が変わる大きな覚悟が必要だ。コレサワはきっといつもこの覚悟に真剣だ。向き合っている。命を懸けている。
私は、あの恋に傷だらけになっても命を懸けていたから、彼女の曲に励まされたのだ。

『SSW』という曲では、付き合っていた恋人に対しての未練と思慕を糧に、前を向く心情を、ナナメな視点から歌っている。

“そうよあたしはシンガーソングライター
君に話してた夢が
ひとつ叶ったんだよってどうにか伝えたいのに
アドレスはどこにもないわ あの時の強がりのせいで”

“そうよあたしはシンガーソングライター
君に話してた夢が
ひとつ叶ったんだよってどうにか伝えたいから
いまここで夢を歌うわ
この声が 探してる 
君にまで 届くといいな“ 

コレサワは決して、「君」を責めない。
なぜなら、自分と関わったひとへの深い愛が、振られた悲しみを凌いでいるからだ。
『SSW』のMVの中で、失恋で出来上がった「心のナイフ」が、夢がかなった証である「ギター」に変わる瞬間には、涙すら出る。
かく言う私も、あの経験があったから、今これが書ける。傷がペンに変わった。
傷が傷だけで終わらないのが、人生だ。

コレサワの曲で励まされた私も、これから励まされる誰かもきっと、恋をすることより更に果て、「愛すること」へ足を踏み込んでいるんじゃないかな、と思う。
いくらでも「好き」なんて言えるけれど、恋愛の枠はそれだけでは収まらない。命を懸けた真剣勝負に挑んだ者だけが辿り着く光が、コレサワの歌には詰まっている。
死んでしまいそうだった私が、あの時の自分に「ありがとう」と言えるのは、そして「生きよう」と思えたのはコレサワのおかげなのだ。

恋せよ、乙女。
  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい