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コロナじゃなくて恋の魔法

ー太陽とシスコムーン及びJuice=Juiceによる「Magic of Love」を聴いて

コロナじゃなくて恋の魔法
―太陽とシスコムーン及びJuice=Juiceによる「Magic of Love」を聴いて

 今のところJuice=Juiceの最新シングルである「ポップミュージック」の冒頭の歌詞に「最初に聞いとくけど ポップってどんな意味?」とある。確かにポップとかロックとかの線引きはすごく難しい。だけど無理やり考えてみるとポップとは“ねぇ、僕たちこんなキャッチーな曲も書けるんですよ。だから聞いてくださいよ”というパッケージのものであると思う。それに対してロックは”自分たちはこんな曲しか書けないんでよかったら聞いてください“というパッケージのものだと思う。

ポップ感を生むにはノスタルジー、懐かしさを刺激するのも有効である。よく自分の好きだったアニメの主題歌がCMに使われている経験が僕には多いが、それは自分が1972年生まれで団塊ジュニア世代という人口比が一番多い世代に生まれているからだと思う。モノを売るにはウチらの財布を刺激すればいい、ということだ。

もうちょっと詳しくポップからテーマを絞ってアイドルポップスについて言うとアイドルポップスは“作る”ものだ。レコード会社で方針を立ててそれに合った作詞家、作曲家、アレンジャーを集め、今のアイドルはみんな見た目重視だから、曲に合った衣装を作り、振り付けを練習し、MCを考え、ようやく舞台に立つ。これは作られたものだ。これに対してロックは“壊す”ものだとも言える。才能があればギター一本で世界を壊す可能性がある。音楽ではないが、象徴的なロックは皆さんも世界史で習ったであろう1989年のベルリンの壁の崩壊である。あれは確かにロックだった。壊した先に光が見えた。

現代に話を戻すとこんな言い方もできる。例えば“ポップの衣をまとったロック”とは耳当たりのいいメロディに辛辣な歌詞が載っているようなもの、つまりJAPANに載るほとんどのアーティストだと思う。それに対して“ロックの衣をまとったポップ”はBABYMETALだったりBiSHが挙げられるんじゃないかと思う。バックトラックはメタルだったりパンクだったりするが、歌メロは覚えやすいしカラオケで歌いやすい。そして裏に大人の影がある。

 皆さん覚えがあると思いますが、YouTubeでお気に入りの曲を聴いているとその曲と関連した曲が“マイミックスリスト”に挙がったりしますよね。そしてある時、僕はリストの中に「Magic of Love」という曲名を見てびっくり。早速見てみると曲は確かに「Magic of Love」だったけど歌っているのがアイドルのJuice=Juiceだった。

ここでJuice=Juiceについて書く。すっかりロックから関心を失い、アイドルを好きになるも“ももクロ”とか“BEYOOOOONDS”とか一癖あるアイドルばかりを好きになる。なんかもっとノーマルなアイドルがいないか、と思っていたところで出会い頭にぶつかったのがJuice=Juice、中でも高木紗友希のヴォーカルだった。Juice=Juiceの自己紹介ソングとも言える『GIRLS BE AMBITIOUS』で高木は「この声があれば向かうところ敵なし! カモン!」と高らかに歌う。高木の歌い方は和製英語で言うところの“フェイク”でありグーグルで調べるとメロディやコーラスではない間奏部分などで即興的に歌ったり無言歌を入れること、とあったがまさに高木はその通りのことをやってのける。

おかげで高木はフジテレビ系列「Love music」の「ハロプロ大集合」で見事“ハロプロで一番歌がうまいアイドル”に選ばれた。(ハロプロとは「ハロー!プロジェクト」というモーニング娘。から始まった、Juice=JuiceやBEYOOOOONDSが所属するアイドル集団)。他のメンバーの証言では毎回高木は「Magic of Love」をアドリブで歌っていて、聞くたびに違うので聞き逃すことが出来ない、とのことである。

通算 何回笑ったろう/
何回Kissしたろう/
何回ジェラシったろう/
A Ha Ha U Fu Fu

この“通算”という言葉をラブソングのサビに使ってしまうのはつんく♂にとってはお手の物だったと思うが、もともと「Magic of Love」とは太陽とシスコムーンというグループの曲だった。ちょうどつんく♂の才能が爆発していた時に結成された四人組で、つんく♂のモーニング娘。で出来ないことをやろうという思いから結成したグループだ。(ちょうど秋元康がAKB48の公式ライバルグループとして乃木坂46を作ったようなものである)。特徴をあげると良い言葉で言えば個性的、悪い言い方をすればあまりモテなさそうなメンバーだった。しかも活動期間が一年しかなかった。(「月と太陽」とか良い曲いっぱい出してたのに、である)。しかし歌詞で、モテなかろうが自分の恋愛を振り返り自分を肯定するのは、この曲が発表された1999年にはきっと響いたと思う。

少し歌詞を引用する。
「少し派手目に/お化粧直しするわ/街のGAL達になんか/負けない Yai Yai Yeah/少しファンデーション/厚いくらい いいじゃんダーリン/久しぶりのデートだもん」。恋にときめきと恥じらいをもたらす、なんとなく恋愛の勝者にはなれなさそうな主人公である。でもこの歌詞には女性の可愛げが詰まっている。それが超絶メロディに乗るとぐっと心に迫るのだ。

つかこうへいが自分の最高傑作を聞かれて以下のセリフをあげた。
「30過ぎた男女の恋愛はガッツよ、ガッツしかないわ」。この曲が歌っていることにとても近いように思える。余談であるがつかは自分のお芝居の中に入れる選曲勘がすごく秀でていた。例えば立ち回りのシーンで舞台上の一人の女優にレベッカの“フレンズ”を歌わせたりした。つかが「Magic of Love」を聴いていたら自分のお芝居に採用していたのかもしれない。

閑話休題。この曲からは恋愛は時代や世代や年齢で考えるべきものではないことが伝わってくる。そういった尊大なテーマをさらりと下敷きにして、明るいけれど切々と恋愛感情を書くつんく♂はやっぱりすごいと思う。

そして時は流れて今は令和3年。「Magic of Love」はJuice=Juiceのライブの定番曲になった。みんなかわいいので太陽とシスコムーンのような重さはない。むしろ「あれ、こんないい曲だったかな?」という印象を受ける。聞けば聞くほど味がある、言わば“スルメ曲”である。去年は、いや現在進行中であるけどライブはほとんど開かれなかった。今年こそは直接ライブで、コロナじゃなくて、恋の魔法にかかってみたいものである。そもそもこの世の歌のほとんどはMagic of Loveについての歌ばかりだ。現在、恋に溺れている人は是非Magic of Loveをツー・パターン聴いてほしい。

通算 何回大好きと/
思っただろう/
あなたの胸で/
I Love You U Fu Fu/
Magic of Love

 それにしても。ジャニーズ事務所も宝塚歌劇団もそうだが何でハロー!プロジェクトのスタッフは十代前半の女の子を見て、その子が将来かわいい女の子=アイドルになる、とどうしてわかるのだろう。ジャニーさんみたいな人が一か所に一人はいるものなのか。
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