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1ファンからストレイテナーへ送る、心からのApplause

テナーの「強さ」を感じたNEWアルバム

2020年12月2日、
ストレイテナーがNEWアルバムをリリースした。


タイトルは"Applause"
拍手という意味である。


ジャケットデザインは
アルバム収録曲からインスパイアされた
存在感のあるドライフラワーのリースを
光の上に浮かべたような幻想的な写真。
この季節にマッチする美しい仕上がりになっている。




そして何より、この美しいジャケットに
決して引けを取ることのない充実した内容。
ストレイテナーの「強さ」がふんだんに詰まっている。




その素晴らしさを伝えたいのだが、
とても一言で表現できるようなものではないので
少々お付き合いいただければ幸いである。






時間を少し遡る。
アルバムリリース前。



収録曲は事前に公表されていた。

1.Graffiti
2.叫ぶ星
3.さよならだけがおしえてくれた
4.倍音と体温
5.Death Game
6.ガラクタの楽団
7.Parody
8.Dry Flower
9.Maestro
10.No Cut
11.混ぜれば黒になる絵具




冒頭にシングルの3曲をリリース順に?
テナーにしてはめずらしい。
きっと何か理由があるのであろう。
聴いてからのお楽しみというわけか。


アルバムに先行して
新曲を2ヶ月連続配信リリースしていたにも関わらず
未発表曲が11曲中、7曲。なんと贅沢な。

これだけでも期待に胸が膨らむ情報であった。




様々なプロモーションやインタビューが
日々解禁されていく中
さらに期待は高まっていったが、
メンバーが行った全曲解説は
アルバムを聴いてから読むと私は決めていた。
他にも楽曲の詳細を掘り下げているようなインタビューは
事前に読むことを控えた。



何の先入観もなく、真っ新な気持ちで
楽曲と向き合いたかったからである。

自分の耳に届き、身体に染みわたったときの
最初の印象や素直な感情を
ありのままに受け入れたかったのだ。



読みたい気持ちを必死で抑えて、
聴き終わったあとに答え合わせのような感覚で
自分の感じたものと照らし合わせるのも好きだし、
そこでまた新たな発見があるのも非常に面白い。
読むのがとても楽しみでもある。





そして、いよいよリリース。


新曲を早く聴きたいあまり、
4曲目から再生するか少し迷った。


しかし冒頭部分の謎解きをするならば
やはり1曲目から聴くのが良いであろう。




ヘッドホンを装着し
アルバムのジャケットを眺めながら再生ボタンを押す。
"Graffiti"のイントロが流れ始めた瞬間
なぜこの曲が1曲目に選ばれたかわかった気がした。


本当に不思議なのだが、
アルバムの1曲目として聴いた"Graffiti"は
シングル曲として聴き慣れたものとは
まるで違うように感じた。


これから始まる"Applause"という
壮大な物語の幕開けを飾る、
そんな重要な役割を担っている気がした。




続く"叫ぶ星"については
以前この音楽文で語り尽くしたので
改めて言うまでもないと思うが、
懐かしさと新しさを兼ね備えた
今のストレイテナーにしか表現できない
疾走感ただようエモーショナルなナンバー。
ロックでいて、ロックすぎない。
切なくも愛おしい曲。
Graffitiとのギャップがまた良い。



ここまでの2曲とはベクトルもカテゴリーも
全く異なる"さよならだけがおしえてくれた"。
ポップでキャッチーなフリをして実は物凄く曲者。
初めて聴いた時からそんな印象である。
すんなり丸くおさまったりはしない、
一筋縄ではいかない、
そういう心意気が感じられるところが
とてもテナーらしくもある。
リスナーである私が言うのは変かもしれないが、
今までにない確かで新たな手応えを感じた曲だ。
この流れで聴くと、この曲の良さがより際立った。



ここまで、既に聴き慣れているはずの3曲を
通して聴くだけでもすでに新鮮味があった。
同じ曲を、同じ音を聴いているのに本当に不思議である。

冒頭の謎解きは完了したかに思えた次の瞬間、
それがまだ未完だったことに気付く。




♪〜


"倍音と体温"のイントロが流れ出す。

その音色はまるで
"Applause"第二章の始まりを告げる合図のようであった。
空気や頭の中の景色が変わり
ふわっとしていた意識が
聴こえてくる音、一点に集中する。
この瞬間を作り出すための曲順、そう思えた。
ここから一気にアルバムの世界観が加速する。

ファンクでメロウなリズムとメロディ。
足どりは比較的軽やかだが、どこか少し気だるい感じ。
だか決して重くなく心地よい。
絶妙なポップ加減が遊び心を演出している。
"Alternative Dancer"やJam and Milk"など、
テンポは違うが、ここ最近垣間見えていた
テナーの新たな開拓地を
思わせる仕上がりになっているように感じた。



これからはこういう方向性で攻めるのかと
新しい風が吹き抜ける予感がしたのもつかの間、
鳴り出した小気味良い軽快なベースによって
その予感は一瞬にして吹き飛ばされた。

"Death Game"

これこれ、これだよ。
わずか9秒間のイントロを聴いただけで
ふっと笑みが溢れてしまった。
時々やってくるこの荒々しさやロック感剥き出しの曲。
テナーを語る上で絶対に外せない
ひとつの武器だと思う。

爽快さというか痛快さというか。
ゾクゾクというかワクワクというか。

ただ、この曲のおもしろいところは
サビのメロディが思いのほかキャッチーなところだ。
マニアックなアルバム曲という印象にならなかったのは
間違いなくその影響が大きいと思う。



一体どんなモードのアルバムになるんだ?
そんなもどかしさにも似た期待が膨らむ。



また新たな展開へと向かう心の準備をするも
なにやら懐かしさ漂う
テナーらしいナンバーが続くようだ。

"ガラクタの楽団"

イントロからアウトロまで一貫している
この不穏な空気感がたまらない。
そしてこういう時の
ホリエアツシの歌い方もたまらない。
個人的には美しさと透明感と
芯の強さを感じさせる真っ直ぐな歌声が
最大の魅力であると思っている反面、
吐き捨てるような気だるいような
尖った歌い方もとても好きである。


直前の"Death Game"といい
この"ガラクタの楽団"といい、
なんというか"叫ぶ星"と同じく
懐かしさと今の良さが融合した曲を聴くと
「ああ、まだこんな曲やり続けてくれるんだ」
と嬉しくもなり安心もする。
ずっと聴き続けてきた思い入れのある
馴染みの深いそういった空気感は
決してなくなることはなく、
今を生きる私たちに新しい楽曲として届き続ける。
ファンとしてこんなに嬉しいことはない。
そして似たような曲ばかりでなく
新鮮なもの、斬新なもの
進化を遂げてきたからこそ表現できるものの中に
混ざることによって互いの良さを引き立たせている。
そのバランスがまたいいのだ。





テナーらしさにうなずいていると
"Parody"が流れ始めた。

このアルバムで唯一、事前にリリースされながらも
冒頭からは外れた曲。


これまた驚いた。
この流れで聴く"Parody"の良さよ。
そしてクオリティの高さよ。

リリース当初から聴けば聴くほどに
とても完成度の高い曲だなと一目を置いていた。
どちらかというと同時に解禁されていた
"Graffiti"よりも好みであった。
そんな"Parody"がアルバムというフィールドで化けた。

本当に細部までよく作り込まれている。
様々な要素が盛り込まれている。
特に各パートのエッジの効いたジャジーなサウンドが
頭の中で鳴り止まない。
圧倒的な存在感がアルバムの中の1曲となった時に
いよいよ本領を発揮したのだと思った。
またさらに好きになった。



そして続く"Dry Flower"は
"Parody"からのジャジーな雰囲気を引き継ぎ、
その色をさらに濃く深く染めていった。
程よい抜け感が、よりジャズっぽさを感じさせる。
カッコ良さが完璧に計算し尽くされた
"Parody"とは対照的に、
少し肩の力を抜きながら
セッションを楽しんでいるかのような演奏が
逆に楽曲に対する自信を感じさせた。
曲が始まった瞬間からあれだけ見事に
哀愁を漂わせるのもさすがである。
このジャジーな風潮も
ここ最近のテナーのひとつのモードなのだろう。
この辺りの曲は、ライブで一体どんな風に
表現されるのだろうと楽しみである。
ロックでもポップでもバラードでもエモでもない
また新たなカッコ良さを堪能できそうだ。




続く"Maestro"は
何とも掴みどころのないスタートを切る。
だが結果として、これ程までにガッチリ心を
掴んでくる楽曲はなかなか無い気がした。
ムーディなイントロ。
そしてAメロからBメロへの変化で
グッと興味をひきつけたかと思うと
サビで一気に心をさらって駆け出していく。
本当に同じ曲なのか?と疑うくらいに
情景が移り変わる。とてもいい意味で。
転調により、上手く作り出された変化が
最大限に活かされている。
歩調が段々と早く、そして軽快になり、
最終的に走り出すというような同曲内での
スピードの変化の情景をドラムが上手く表現している。
ドラムの役割はテンポやリズムを決めるだけではない
ということを力強く証明してくれている。
とにかく前へ前へ進んで行こうという
姿勢が感じられる軽快なメロディに乗る
未来へと希望を抱く歌詞もとても美しい。
こんな今だからこそ、これから向かっていく未来が
希望に満ちたものとなるように、
そう願わずにはいられない。



心が洗われたような気持ちでいると
"No Cut"の優しいイントロが流れ出した。
これまた不思議なのが、曲全体を通して
複雑なことは一切していないにもかかわらず、
しっかりとした存在感があった。
優しくキャッチーなメロディに
聴く人の心に真っ直ぐに届く歌詞と歌声。
ギターの音もベースの音もドラムの音もとても優しい。
ストレートに愛を伝える歌詞が
全てに優しさを持たせている、いや、
歌詞の優しさが全てに伝わって作用した結果かもしれない。
どことなく漂う冬っぽさが
良いエッセンスになっている気がした。




そして最後の曲
"混ぜれば黒になる絵具"

ここに至るまでに既に充分な満足感があった。
とても多彩なアルバムであったから。
テナーは"Applause"を一体どう締めくくるのか?
もうこの後にどんな曲が来ても
自分の中で名盤なのは確定していた。
でもその信頼をさらに上書きしてくるとは。
これだからストレイテナーは憎い。

決して明るい曲ではない。
心躍るような華やかさや、
心震わすロック感があるわけでもない。

妙にリアルな歌詞。
時間は止まることはない。
過ぎていく景色のように遠ざかっていく過去。
その過去を踏みしめながら、
"混ぜれば黒になる"様々な想いや出来事とという"色"を
全て受け止めてまた歩き出す。
私にはそんな風に解釈できた。
曲を聴きながら、気づけば泣いていた。
何故だか妙に心に溶け込んでくるこのメロディが
もう一度繰り返されるつもりでいたが
この歌に2番はない。
あぁ、そうか、"It's all right"なんだ。
これでいいんだ。
気持ちがストンとはまり、腑に落ちた。

フェードアウトしたあとも
しばらく余韻が消えなかった。







後日、改めて"Applause"を聴きながら
全曲解説やインタビューを読み漁った。
納得することろもあれば
新たな発見もたくさんあった。
テナーが感じていたことを
自分もそのまま感じていたところもあって
それがなんだか嬉しかった。
かなり一方的ではあるが、
テナーと信頼関係が築けているような気持ちになれた。
彼らが何を考え、どんな姿勢で音楽に向き合ってきたか。
どんな想いを音に乗せて届けようとしてきたか。
ストレイテナーの持ち味や長所を
自惚れかもしれないが、少しは理解できるように
なってきたんだと思えた。
逆に、新たな発見を意識しながら聴くと、
楽しさが2倍にも3倍にもなった。
1枚のアルバムで
こんなにも心躍らせることができるなんて
音楽の力とは計り知れないと再確認した。
そしてそれだけストレイテナーの音楽が
大好きなのだと確信した。




私は最初にこのアルバムのことを
"ストレイテナーの「強さ」がふんだんに詰まっている"
と表現したが、
そう思った理由を最後に伝えて終えようと思う。



さまざまな方向性の楽曲が
非常にバランスよく盛り込まれている。
ロックという枠組みの中でジャンルレスであり、
新しさも懐かしさも兼ね備えている。
多彩で、何周聴いても飽きがこない。
決してストレイテナーらしさを見失わずに
本当に色々な表情を見せてくれる。
20年以上ものキャリアがありながら
まだこんなにワクワクする楽曲を届け続けてくれる。
ゆえに、移り変わりの激しい音楽業界、バンドシーンで
この地位に君臨し続けられる、
これがストレイテナーの「強さ」なのだと思った。
それを証明する作品だと思った。





本来ならば、ここからライブやフェスで
新譜をバンバン披露するところであるが、
なにせこのご時世。
いつもの様にはいかないところもある。
年明けからリリースツアーを控えているが、
今の状況ではどうなるか、正直まだわからない。


だが、こうも思う。
焦っても仕方がないし、
もどかしさをぬぐい去ることはできないけれど、
言い切れることがひとつだけある。



名曲は色褪せない。



そんな色褪せない名曲を、生音で聴ける日まで
私は絶対に耐えてみせる。
どんなに辛くても、どんなに苦しくても、
どんなにもどかしくても。
その勇気を与えてくれたNEWアルバム"Applause"。




この感謝の気持ちを、
ライブ会場で全力のApplauseで返せる日を
心待ちにしている。
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