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“相棒”と最期を過ごした「ROMANCE」ウィーク、そして…

エレファントカシマシとソロ宮本浩次の歌の力が必要だった

2020年11月20日(金)朝、16年連れ添ったワン!と鳴く相棒が息を引き取った。慌ただしくお別れの準備の手配をしたり、知らせを聞いた犬友達がお花を持ってきてくれたり、日中はあっという間に過ぎていく。
そして、夕刻。陽も傾き薄暗い部屋の中、わたしはベッドに腰掛けて、傍らに永遠(とわ)に眠る相棒に寄り添い、流れない涙と戦い、最期の夜を過ごしていた。どうしようもない悲しみと静寂な時間が刻々と過ぎていく。この日22時からオンエアの「松任谷由実オールナイトニッポンGOLD」宮本さんのゲスト出演までの間、気持ちを紛らわせる為、エレファントカシマシと宮本浩次のソロ全曲、そして2日前にリリースされたばかりのカバーアルバム「ROMANCE」をランダムにイヤホンに流し続けた。
そんな静寂なキンと冷たい空気の中で聴こえてきた「ROMANCE」の中の『First Love』は、無骨な指から奏でる淋しげなギターの音と共に、宮本さんの震える切ない声が聴こえてきた。

♪明日の今頃には
♪あなたはどこにいるんだろう
(明日は相棒をお空にお返しする日)
(苦しみから解放されたキミは全速力で天国への階段を駆け上がっていくのかな)

♪誰を想ってるんだろう
(おかさんのこと、想ってる?)

♪明日の今頃には
♪わたしはきっと泣いてる
(天国にお返しするんだもの)
(いなくなったんだもの)

♪あなたを想ってるんだろう
(小さな体ひとついなくなっただけで、もうその気配すら感じられなくなったこの部屋の中で、ずっと…想うだろう)

ほんの一部の歌詞であるが、その歌詞の裏側でわたしのこころの声が追いかけていった。
本来は初恋の人との別れを綴った歌だけど、わたしには16年間暮らしたワン!と鳴く相棒との最期の時間を刻む歌であった。

ワン!と鳴く相棒の名前はBijou(ビジュー)
ミニチュアピンシャーの男の仔。フランス語で“宝石”と名付けた。
おうちに来たその日から彼を“相棒”と呼んだ。
迎え入れた理由の一つに偶然わたしと同じ誕生日。
毎年「ふたりの誕生日」を祝うイベントを開催してきた。

相棒が急変したのは11月13日(金)

10月頃から少しずつ食欲が落ちてきていたが、あの手この手で少しでも食べてくれるように色々策を練り、結果食べてはくれていた。が、とうとう食べなくなった。出勤する前に手から少しだけ食べてくれて安心はしたものの、仕事中、心配と不安に押しつぶされそうだった。居ても立っても居られない。その日仕事から帰宅、ブーツのまま家の中に入り、相棒を抱っこして病院に連れていき検査を受けた。そこでドクターから初めて命の期限を告げられた。一刻の猶予もない重篤な状態だった。相棒15歳と364日。週明けの月曜日16日は相棒の16歳とわたしのW誕生日。帰り道泣きながら自転車をこぎ、前かごの中で目に見えて衰弱していく相棒を見つめた。まず、16歳を迎えさせてあげたい。それと、もう相棒の前では決して泣かない。普段と変わらないわたしでいることを決めた。

本来なら11月第3週は『ROMANCE』リリースウィークで、わたし自身宮本さんのメディア出演も含み、てんこ盛りのバースデイプレゼントを戴くようなウキウキとした週を想定していた。誕生日当日の16日はあらかじめ有給休暇をもらって、ふたりでお祝いするつもりでいた。が、そういうわけにはいかない。傍らにいる相棒の前では決して泣けぬ、相棒の「看病」が始まった。けれど、宮本さんの怒涛のプロモーションの目まぐるしさが、わたしを勇気づけてくれていた。看病の合間にも必死に情報を追って、雑誌を購入し、ラジオを聴き、テレビを観た。それだけでもこころは潤う。
そして、普段と変わらずにエレカシとソロ宮本さんの曲をうたう。相棒の前でうたう。抱っこしてうたう(残念ながら何もかもが夢中だったので、何をうたったかは覚えていない。)。14日(宮本さん東京スカパラin松江のゲスト出演を配信で参戦)、15日…。連日セカンドオピニオンの力も借り相棒を毎日病院へ点滴を入れに行く。それに応えてか相棒はフラフラしながらも自分の足で歩いてお水を飲もうとする。蒸かしたサツマイモも自ら口に入れたりもした。夜中は1~2時間おきに起こされるが、夜通し小さくエレカシとソロ宮本さんの曲を流し続けて元気をもらっていた。そうして、看病の疲れか気づいたときは、日を少々またいで11月16日相棒Bijou(ビジュー)の16歳をわたしの誕生日を共に迎えることができた。

「Bijou 16歳だね、お誕生日おめでとう!」

誕生日当日は「CDTVライブ!ライブ!」で宮本さんは初めて『異邦人』を披露した日。リアタイでは観られなかったが、宮本『異邦人』に圧倒された衝撃と、わたしの中の疲労、そして、誕生日を迎えられた安堵感とで、無言で何度も何度も観返した。宮本さんの絞り出すようなパワーを無言で受け取り、わたしのパワーに置き換えたくて再び寝落ちするまで無言で聴き続けた。

翌日、相棒の再検査を受けたが、残念ながら数値は改善しなかった。だから、出来るだけ苦しまず穏やかに過ごさせてあげること、それが、単なる延命にならないようにするための緩和ケアを考えることにした。幸いにして職場のご理解もいただき、わたしが倒れると元も子もないので、部分的に有給を入れていく計画を立てていた。一方、宮本さんは、11月17日に「うたコン」出演、18日待望の「ROMANCE」発売、午前中にはラジオに出演。アルバムを売りたくて届けたくて頑張っている宮本さんを観ながら、わたしも相棒の苦しみを少しでも緩和するため共に頑張っていた。

しかし、とうとうその日が来てしまった。

11月19日(木)仕事から帰宅すると相棒の状態が思わしくない。翌11月20日早朝に職場の上司に連絡を入れて急遽有給をいただいた。朝、病院に行く準備をしているときに、相棒はわたしのベッドの上で最期のときを迎えた。たくさんたくさんたくさん名前を呼んだ。そして、彼は旅立っていった…。

急変して1週間後…
16年と5日間の生涯だった。




相棒が旅立って初めての月命日を迎えたとき。
あれから、『First Love』の歌詞を改めてじっくりと見返した。
苦手な英語も翻訳した。

♪立ち止まる時間が
♪動き出そうとしている
(立ち止まってはいられない。前に進まないと!と、己を鼓舞するも)

♪忘れたくないことばかり
(忘れられない思い出が次から次へと巡る。まるで寄せては返す波のように…)

♪You are always gonna be my love
《あなたはいつまでもわたしの大切な人》
♪いつか誰かとまた恋に落ちても
(もし、新しい家族を迎え入れたとしても)

♪I’ll remember to love
You taught me how
《あなたが教えてくれた愛を忘れない》
♪You are always gonna be the one
《あなたはいつまでもわたしの運命の人》
♪今はまだ悲しいlove song
(最愛の相棒との最期のときを思い起こしてしまう)
♪新しい歌 うたえるまで
(もう少し時間をください)

♪You will always be inside my heaet
《あなたはいつまでもわたしのこころの中にいる》
♪いつもあなただけの場所があるから
(部屋の中にも こころの中にも)
♪I hope thatⅠhave a place in your heart too
《わたしもあなたのこころの中にいられたらいいのに》
(キミの魂の中でも構わない)
♪Now and forever you are still the one
《今も、これからもずっとあなたはわたしの運命の人》
(そう、これからもずっと相棒であることは変わらない)
♪今はまだ悲しいlove song
(今はまだ悲しいけれど)
♪新しい歌 うたえるまで
(わたしが一歩踏み出せるまで)

宮本さんの弾くギターと歌声は、体の芯まで人のこころに沁み入り入り込んでくる。その表現の素晴らしさにこの方の実直な想いが伝わり感動を覚えた。しかし、オリコン・Billboard週間ランキングで自身初1位というお祝いムードに包まれていたのに(嬉しかったけれど)、わたしは一人別世界で最愛の相棒の別れの曲から離れられなかった。相棒が亡くなった日に聴こえてきた『First Love』があまりにも悲し過ぎた。それが勝手な=(イコール)で「ROMANCE」のイメージを変えてしまいそうだった。
「ROMANCE」リリースウィークに、W誕生日そして、相棒の臨終が重なった11月の第3週。複雑な想いが絡まってしまった。このままでは「ROMANCE」はわたしの心情の悲しさで覆われてしまう。そんな思い出にしてしまっていいのだろうか。

そうだ。引き続き、エレファントカシマシとソロ宮本浩次の歌の力が借りよう。

聴いているだけで湧いてくるpowerが必要だった。
宮本さんの想いとかけ離れていても、宮本さんが描いたメロディや歌詞ひとつひとつを泣いたり笑ったり感じられたら、それで一歩踏み出せたら…それが宮本さんの想いだと推測した。
男の歌であれ女性の人にも感じてくれたらと以前語っておられたから、その時のリアルな想いで寄り添っていこうと考えた。
とにかく、ずっと耳に触れていた。仕事中以外は、テレビをつけていても、寝るときも、お風呂に入るときも、エンドレスに聴いていた。また、無意識にうたっていた。

『Do you remember?』の力強い宮本さんの声には勇気づけられた
♪ありのまま 目にうつるこの世には
♪豊かな全てが広がってるのさ

『赤き空よ!』
♪ひとしきり涙を流したら さあ
♪出かけてゆくぜ 暮らす世間へ
♪出かけてゆくぜ 明日の空へ

『P.S. I love you』
雨の日傘をさすように 歩いてゆこう
ゆこう ゆこう 大人の本気で さあ 立ち上がろう
I love you I love you
悲しみの向こう
立ち上がれ がんばろぜ

『幸せよ、この指にとまれ』
♪雨のち晴れ
♪like a rain 心が閉ざされてる時も
♪新しくて同じあの風が吹いているんだぜ(本当さ)

『大地のシンフォニー』
♪孤独な心に届いたその手紙
♪「つつがなくやってるぜ、相変わらずだけど」
♪人生はいつもページェント 自分が主役のそして誰かをしあわせにするため生き抜く
♪大地のシンフォニー

わたしには天国の相棒から届いた手紙だと思っている
つつがなくやっている 相変わらずでよかった

『RAINBOW』
♪悲しみも喜びも 全部この胸に抱きしめて 駆け抜けたヒーロー
♪それが俺さ
♪嘘じゃないさ

生前から相棒のテーマソング
相棒はヒーローさ!

まだまだ書き留められない、数えきれない。

宮本さんの歌の中にはどんなに悲しみに打ちひしがれても、その先には笑いがあるはずさ。と、背中を押してくれる。強くもあり優しくもある。「上り下りのエブリデイ」その時の心情に必ず耳が止まる。それが今必要なメッセージであることを教えてくれる。嬉しいときも悲しいときも、魔法をかけられ…TEKUMAKUMAYAKON TEKUMAKUMAYAKON…宮本さんの持つコンパクトは無限だ。

♪行くしかねえ

こうして、BGMで聴くように耳を傾けて、ただ、なにも考えずに聴いてうたっているだけで救われた。みやじさんの書いた曲たちは日々形を変えてこころに小さな光を灯してくれた。そういう聴き方もよかった。相棒の急変~看病~別れ~その後…と聴き続けて、どの曲が響いたとかでない別の気づきであった。
それと共に、宮本さんの音楽と共に助けてくれた宮本さんが出演した数々の番組たちにも感謝している。
亡くなった日の「松任谷由実のオールナイトニッポンGOLD」
天国にお返しした日の「MUSIC FAIR」
翌週の「ベストアーティスト2020」「スッキリ」「あさイチ」etc.


2021年1月7日、相棒の四十九日を迎えた。
あれから「ROMANCE」はわたしに少しずつ語り掛けてくれている。

「恋に限らず瞬間のなかにこそ永遠があるということを数々の歌謡曲から教えられた気がする。」
~婦人公論 12月22日、1月4日号より~

この言葉は「ROMANCE」のわたしの見方を変えてくれるきっかけとなっている。

「瞬間の中にこそ永遠…」で感じたこと。

「ROMANCE」は相棒と最期共に過ごした“Bijouの生きた証”
無理に上向きに置き換えなくて、ひとまず受け入れてもいいのだろう。ただ、言えるのは、一生忘れられない週、一生忘れられないアルバム。わたしにとって「ROMANCE」はBijou(宝石)なのだ。
そういう気持ちに置き換えられるようになってきた頃のわたしの心情に「ROMANCE」の中から離れられない声が聴こえてきた。

『喝采』
♪耳に私のうたが 通りすぎてゆく

静かな悲鳴にも近い悲しく切なき宮本さんの声が
何度も耳の中に響いてきた。
この歌には「永遠の別れ」とうテーマがある。
相棒の別れと通じるところがある中で、悲しみを乗り越えて今日もまた歩いていく主人公の姿に、悲しみをどこかにやるように、がむしゃらにうたっていたわたしの声も通りすぎていった、この曲の二番の歌詞の主人公のひとりでいられたような気がした。

『喝采』
♪つたがからまる 白いカベ
♪細いかげ 長く落として
♪ひとりの私は こぼす涙さえ忘れてた
♪暗い待合室 話すひともない私の
(あの悲しい日の『First Love』の状況にも似ているけれど、)

♪耳に私のうたが 通りすぎてゆく
(いつものようにうたっていたわたしはひとつ前に歩めたのか)

♪いつものように 幕が開く
♪降りそそぐ ライトのその中
♪それでも私は
♪今日も恋の歌 うたってる
(今日もわたしは『普通の日々』を送っている)

だから、わたしは今日もいつものようにうたう。

「さあ、行こうぜ。」
「自分らしくっ!」
「楽にな。」
~2020年1月10日エレファントカシマシ新春ライブ2020『俺たちの明日』の間奏にて宮本さんが投げかけた言葉~

うん、そうする。
自分色は大事に、でも、無理をしないで楽にね。

今この音楽文を書きながらも、耳から聴こえるエレファントカシマシ、ソロ宮本浩次そして、「ROMANCE」をうたっている。
オーディエンスはもちろん、今までもこれからも、相棒Bijou(ビジュー)さんがちょこんと座っている。
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