4401 件掲載中 月間賞毎月10日発表
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

あの頃「少女」だった私たちへ、「プラチナ」がくれたもの

坂本真綾らによる「大人」からのメッセージ

「もっと もっと つよくなりたい」





いつも聴いていた音楽が、何気ない瞬間に、違って聞こえる、またはいつも聞き逃していた歌詞がはっきり聞こえる「間」というのが確かにあり、私の場合、それは「プラチナ」だった。

これは、私が幼い頃から何度も何度も見ている、『カードキャプターさくら』というアニメの第3期のオープニング曲である。


「こんな、『鬼滅の刃』みたいなこと、魔法少女が出て誰も死なないアニメで言ってたっけ・・・?」


私がそれまで何気なく聴いていた「プラチナ」のオープニングは、『カードキャプターさくら』の主人公「さくら」が、それまでのシリーズよりも大人っぽくなり、坂本真綾の透き通るような歌声と、ゆったりとした曲調が合わさって、いわゆる「少女マンガ」っぽさを感じるイメージだった。


だが、よくよく歌全体を聴くと、『カードキャプターさくら』のアニメ、原作漫画とリンクしている部分があり、かつ「非力ながらも主体的に選択していこうとする全ての"少女"を応援する歌」だったのではないかと思う。




サブスクリプションのおかげで「プラチナ」の歌全体を聴けるようになった私の、ささやかな発見と妄想の話を聞いて欲しい。




***

「プラチナ」(1999年)が主題歌だったとき、アニメの主人公「さくら」は小学生の設定だった。原作漫画はCLAMP作、小学生を主な読者に持つ講談社の『なかよし』に連載(1996年~2000年)されていた。


私はこの曲で登場する主人公「私」は、「さくら」のように、大人が描いた"少女"で、子供の頃の私のような視聴者を想定していると思う。(ここでいう視聴者の"少女"とは、自分が"少女"だったと思う人)



「プラチナ」では、まだ自分の抱く夢や恋の達成に向けて一歩踏み出していない子が描かれている。例えば、1番の歌詞、2番の歌詞の冒頭、

≪1番≫

「I'm a dreamer ひそむパワー

私の世界 夢と恋と不安で出来てる でも想像もしないもの 隠れてるはず」

≪2番≫

「I'm a dreamer ひそむパワー

まだ見ぬ世界 そこで何が待っていても もしも理想とちがっても 恐れはしない」




自分が思い描く世界には「夢」や「恋」という要素があるが、一方で、未知の世界に対しては「想像」や「理想」といった言葉がならび、「私」自身もその実態はつかめていない。だから、自分を構成する世界には「不安」もある。『カードキャプターさくら』の主人公「さくら」が、魔法を使えるエネルギッシュな"少女"である一方、「プラチナ」の主人公「私」はまだ夢や恋に踏み出す前の、非力な存在として描かれている。


しかし、この歌の主人公は実行力こそまだないにしても、"少女"だからといって何も選択することができない、定めたれた運命をたどるしかない、といった「弱者」として描かれているわけではないと思う。

というのは「I'm a dreamer ひそむパワー」という最初の歌詞の、「ひそむパワー」には、「私」に備わる「未来を自ら切り開いていく力」という意味が込められているのではないか、と妄想する。


この「パワー」という言葉には、もちろん「さくら」に魔法の力が秘められていることを描写しているとも受け取れる。一方で、魔法の力がなくても、「さくら」のような"少女"による、野心や自己主張、個性を打ち出す自立的な姿勢とされている「ガールパワー」のようなものを暗示しているように感じる。



主人公の「さくら」も、物語の最初では仕方なくクロウカード(魔法のカード)集めをすることになったが、様々な困難にぶちあたりながら最終的に、「カード全部集めるって決めたんだもん がんばらなきゃ!」(『なかよし60周年記念版 カードキャプターさくら④』p.109より)と、自分で決めたことを実現していく姿が描かれる。これは「さくら」自身が持っている、自分で考え選択し、実行していく力によるものである。


「プラチナ」にある「ひそむパワー」とは、この歌の主人公に備わっている、この先歩むであろう未知の世界を、「主体的に考え選択していく力」のことではないか。そのような点においては、この歌の主人公「私」は、例え自分で願ったことを実行する力がまだなくても、受動的な存在ではない。






そんな「私」が、この先で待ち受ける世界で生きていくために、「大人」が与えた重要な言葉が2つある。1つは、コーラスで登場する、


「信じるそれだけで 越えられないものはない」



である。これは、『カードキャプターさくら』の主人公「さくら」の「無敵の呪文」、




「なんとかなるよ 絶対だいじょうぶだよ」(『なかよし60周年記念版 カードキャプターさくら⑤』p.92より)




にリンクしているように感じる。「さくら」は魔法の力だけで困難を乗り越えるわけではなく、魔法、そして自分の恋路に関して状況を打破するために、まずは「絶対大丈夫!」と自分を信じるのである。それが、「プラチナ」の歌詞にある


「「思い」が全てを変えてゆくよ きっと きっと 驚くくらい」


と重なり、「私」にむけて「きっと大丈夫だよ」と言っているように聞こえる。





もう1つの大切な言葉は、2番のコーラスにある「この世に一つだけの存在である私」である。




「伝えたいなあ さけびたいなあ この世に一つだけの存在である私

祈るように星のように ちいさな光だけど何時かは

もっと もっと つよくなりたい」




自分がまだ小学生だろうがなんだろうが、「私」の代わりは「私」しかおらず、その存在は誰かと比べるものではない。全力の自己肯定である。そして、まだまだ力はないけれど、誰かに守ってもらうのではなく、自分が「つよくなりたい」と願う。これは、自分自身がこの先生きていくのに、重要な「気持ち」なのである。"少女"だって、強くなったっていい。

***


『カードキャプターさくら』の「さくら」は、魔法を使えるけれど、それよりもまず意思が強い。自分の力を信じて頑張る「さくら」の姿に、私は勇気づけられていた。


大人になった今、さすがに「さくら」のように魔法の力はないと知ったけれど、自分が子供の頃、多くの大人達が、アニメ、そして「プラチナ」という曲を通して、
「自分を信じて頑張れ!自分のことは自分しか守れないよ!」とメッセージを送ってくれていたことに気づいたとき、

私の"少女"時代は確かに幸せだったのだと思った。
  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい