4729 件掲載中
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

まちがいさがし

米津玄師と菅田将暉、そして私たち

 2020.8.5 「STRAY SHEEP」が全世界へ向けて発表、そして発売された。既存曲に加えて半分が新曲となり、仕上がりはこの上ないものであった。その中でも菅田将暉に提供した「まちがいさがし」のカバーバージョンは天と地がひっくり返るほどの衝撃であり、暫しときが止まり息も絶え絶えになりながらなんとか最後まで聴いたのだが、無意識のうちに人差し指がリピート再生を押し、延々とループしてしまうほどであった。

 菅田将暉の「まちがいさがし」

 米津玄師の「まちがいさがし」

 どちらも素晴らしい。それ以外に言葉は要らない。だけれども、同じ歌詞をまったく別の人が歌うことに意義があるのではないか。また、恵まれた現代社会の中で生きる私たちでさえも心の奥底に抱えるものに対するヒントがそこにあるような気がする。



1.俳優 歌手 タレント「菅田将暉」

2.音楽家「米津玄師」

3.ふたりの「まちがいさがし」

4.私たちは新しい時代をどう生きるのか



1.俳優 歌手 タレント「菅田将暉」
 
 「灰色と青」(米津玄師+菅田将暉)ではサビでは何かが彼に降臨したかのような圧倒的な声量感と空気感を感じ取った方も多かったのではないかと思う。しかし、「まちがいさがし」はさらにその上を行く仕上がりとなっていた。特に、歌詞の語尾にこだわりをみせ、米津玄師本人にどのように歌うのかレクチャーしてもらったとインタビュー等で答えていることからもわかるように、細かな部分まで独自の世界観を完成させる俳優、さらには歌手としての菅田将暉のストイックさである。

 菅田将暉は笑う際に大きく口を開けてはっきり「あはははは」と発音する。太陽のようにあふれるエネルギーと明るさ、他者を包み込むような大らかで温かい人柄が垣間見える。そして、彼の「まちがいさがし」は強く前へ前へと進む。うずくまり、もう立ち上がれそうにもない者さえ見捨てることなく、全身全霊で受け止めて手を差し伸べる。そのように私は感じた。


2.音楽家「米津玄師」

 菅田将暉に提案した「まちがいさがし」は2パターン存在したことを後に公表している。採用しなかった方を元にアレンジ、セルフカバーしているがまったく違うものとして私には聴こえた。柔らかな光を纏い、小鳥のさえずりを優しく見つめながら森林の中をゆるやかにふわりと歩いてる。少しずつメロディーに色が付き、想像が立体的となって飛び出す絵本のように目の前を駆け抜けてゆく。

 音楽家米津玄師はご存じの通り、現在までに28冠達成という前人未到の記録を出している。彼は幼少期から他者と噛み合わないという思いがずっとあったとインタビューでたびたびそう答えている。その距離感を少しずつ埋めるためにどれほどの苦しみや分かり合えない悲しみを背負ってきたのだろう。もしかしたら、自分と同じような人間を今でも探しているのではないかと思う。そうした彼の想いは歌詞になり、音楽となって広く広く行き渡った。


3.ふたりの「まちがいさがし」

 菅田将暉と米津玄師は偶然では済まされない、出逢うべくして出逢ったソウルメイトではないかと思う。一般的には「芸能界」と一括りにしてしまいがちだが、彼らの本業はまったく違ったジャンルである。音楽家から俳優、タレントへの提供曲などは考えうる範囲ではあるが、両氏ともにここまで爆発的ヒットした例は早々ないのではないか。菅田将暉、米津玄師ともに「天才」「鬼才」そんな陳腐な言葉では表すことのできない類稀なる才能と人間力を兼ね備えている。


まちがいさがしの間違いの方に

生まれてきたような気でいたけど

 -「まちがいさがし」作詞作曲 米津玄師より引用


 菅田将暉の歌う「まちがいさがし」の主語は「あなた」であって、あなたは自分が間違いの方に生まれたと思っているかも知れないけれど僕は間違っていようがいまいがあなたに出逢えたそれだけでいいと「あなた」を丸ごと受け入れて全肯定する、そんな強さを感じた。
 一方、米津玄師の歌う「まちがいさがし」の主語は「米津玄師本人」であって、「あなたを丸ごと受け入れたい」という菅田将暉歌唱「まちがいさがし」へのアンサーソングであると私は思う。一見、静と動、対照的なふたりであるが、実際はその道のトップを走り抜ける対称図形のような存在でもあったりするのだ。完璧な人間はこの世に存在しない。だが、欠けたところをお互いに理解し合いカバーしあえる、そんな菅田将暉という大切な友に出逢えた奇跡とそれを音楽にできる才能がぴったりと合った。そんな気がした。


4.新しい時代をどう生きるのか

「 新型コロナウィルス感染症(COVID-19) 」

 世界中が混乱の渦に巻き込まれ、未だ抜け出せずにいる。昨日、今日、明日と過ぎてゆく時間が当たり前でなくなったあの日から、これまでの知識や経験なぞ何の役にも立たないほどの脅威に恐れおののき、右往左往し立ちすくむ。本物か偽物かさえ誰にもわからない。小さな不安が心を蝕んでいく。これまでの価値観は根底からひっくり返り、自分と他者という対極にあるものだけを見てしまうようになってしまった。小さな歪みが大きく断層のように鮮明に表れ、それはいつしか攻撃へと形を変えた。荒れに荒れたその先に何が待っているのか想像すらできない。

 私たちはどこへ向かうのだろうか。本当にどこを彷徨い続ければ出口が見えてくるのかと気持ちが沈んでゆく日々がこれからもあるのだろう。新しい時代は暗黒になるのか、それとも明るいものになるのか誰にもわからないのだけれど、それでも今を踏ん張って乗り切るしかないのではないかと自分自身を奮い立たせていたそんなときにふわりと「まちがいさがし」は私のところへ舞い降りてきた。菅田将暉と米津玄師は「まちがいさがし」をしながら魂の交流を深め、そしてファンである私たちは彼らの輝きを集めて、言葉や想いを空白のクロスワードにひとつずつ埋めてゆく。そして、音楽を通じて彼らと確かめ合い繋がってゆくのだろう。音楽がそっと心に寄り添う。力強い歌声に励まされ、優しい歌声に癒されて眠りにつく。明日が来ることを信じてこれからもその世界をずっと見つめてゆきたい。
  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい