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“誰かのために”が持つ強さ

平手友梨奈「ダンスの理由」の“私“に触れて

平手友梨奈のソロデビュー曲「ダンスの理由」。グループとして向き合っていた「僕」とは、似ているようで違う存在の「私」と向き合う彼女。そんな彼女に、「角を曲がる」以来、再会することができた。


『みんなが期待するような人に 絶対になれなくてごめんなさい』と憂いた「私」が、『私にできることなんて』『何もない』と高らかに叫びを上げる。
『独り占めしてたはずの不眠症が 私だけのものじゃなくて落胆した』「私」が、『らしさって 一体何?』ともがき苦しんだ「私」が、『誰かの悲しみを癒す その一瞬のために』踊り続ける。

誰かを守りたいと思うときほど、誰かのためにどうにか力になりたいと思うときほど、自分の無力さを痛感する瞬間はない。
どれだけ強く願っても、「あの娘」の人生は「あの娘」しか歩むことができず、「私」は「私」の人生から抜け出すことはできない。
想いが強くなればなるほど、自分の存在が小さくなっていく。

『私にできることなんて』『何もない』

これは、きっと事実だ。誰も認めたくはない、残酷な、事実だ。

彼女は、強く、堂々とこの事実を宣言する。
そんなことは、最初から分かってるよ。
でも、それでも何としても「あの娘」を守りたいから、絶対にこの腕で守りたいから、彼女は踊り続ける。

できないことを数えるより、できることを血眼になって探すより、ただ、ただ、全力で踊り続ける。

いつだって、自分と戦い続けることができる人は、強い。
そして、何としても守りたいと思える存在に出逢えた人は、“誰か”に想いを馳せることができる人は、きっと、もっと強い。



ここからは、私の独り言である。

色鮮やかな、強烈なパワーをまとった表現に出逢うと、心が揺さぶられると、自分の気持ちが分からなくなる。
もう家から出たくない、誰にも会いたくないと思う。それと同時に、どこかまだ知らない、遠いところに行ってしまいたいとも思う。
もう何が何だか分からなくて、とにかく分からなくて、分からなくて、猛烈に悔しくなる。
私には、こんな表現はできない。人の心を、こんな風に動かすことはできない。自分の存在が小さくて、こんなにも小さい自分のことですら何も分からなくて、悔しくて悔しくて、どうしようもなくなる。

そんなとき私は、いつだって書いた。何か書きたいことがあるわけではないし、何も分からないけれど、ただ、書いて書いて、書いた。
文字にすることは、自分でも分からない“何か”をことばにすることは、私にとっての一種の自己防衛だった。

誰に読ませる訳でもない。ただ、書くことで、自分の中の自分でも分からない“何か”が、少しだけ掴めるようになる。
そうやって、自分を守ってきた。ただ、自分のためにだけ、書いてきた。


そんな風に生きてきた私は、一年と少し前、「角を曲がる」の主人公に出逢い、やっぱり、自分のために書いた。

いつもは書いたら終わりのそれを、もしかすると、誰かが読んでくれたりなんかするのかもしれない、と、もしそうなら素敵だなあ、と思って、この「音楽文」に投稿してみた。
すると、私のような一大学生にとっては怖くなってしまう程の多くの人に読んでいただけたようであった。ネット上で、私の文章に対する反応をしてくださる方もいらっしゃった。
今までに味わったことのない、不思議な気持ちだった。
他の人にとっては、ネット社会の中のほんの些細な出来事なのかもしれないけれど、私にとっては、何か大きなものを感じる出来事であった。


自分のためだけじゃなくて、誰かのために書くことはできないかと考えるようになった。
分からないことばかりになって、どうしようもなく悔しくなるのに、それでもそんな表現を求めてしまうのは、生きているからだと思う。それ以上の理由は、今の私には分からない。
私の心を揺さぶってくれた彼女のように、これなら、もしかしたら、私も……。
もしかするともしかして、私も、誰かの心に触れることができるのではないか、と思ってしまった。ただの自惚れかもしれないけれど、そう思ってしまった。

脚本の勉強を始めた。まだほんの少しだけれど、小説の練習もしている。
私にとっての“ダンス”は、今の時点ではこれなんじゃないかと思う。


何もできない私たちは、何かを守りたいと願うとき、誰かに想いを馳せるとき、“ダンス”を踊り続けるしかない。

誰かのために踊り続ける彼女は、強くて美しい。
「ダンスの理由」が自分だけのものではなくて、誰かと共有するものになったとき、人はきっと、もっと強くなれる。

私も強くなりたいなあ、と思う。
でも、人生はきっとそんなに簡単ではなくて、上手くいくことばかりではないから、どうして私はあの人のように踊ることができないのかと、劣等感に縛られる日もある。“できることが何もない”のは自分だけなのではないかと、錯覚してしまう日もある。
それでもいい。きっと大丈夫だ。


いつか、顔も名前も知らない“誰か”の心に、少しでも触れられる日が来るのだとしたら……。
私にとって、そんなに素敵なことはない。
彼女が、私の心を揺さぶってくれたから。
私も、私なりの“ダンス”を踊り続けていたい。そう思う。


(『』内は「角を曲がる」「ダンスの理由」より引用)
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