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『Flare』というドキュメンタリー

BUMP OF CHICKENの新曲における圧倒的存在肯定

BUMP OF CHICKENの新曲『Flare』が、彼らの結成25周年の日を迎えた2021.2.11、MVと共に公開された。今回の曲『Flare』は前回の新曲『アカシア』の公開から、約4か月程空いての発表だった。寡作な彼らでは、そう長くないスパンではあるが、その4か月と言う時間に、期間云々では計れない長さを感じた人もいるのではないだろうか。メンバー三人体制になって初めてのレコーディングが、彼らにどのような変化をもたらしたのか。今まで以上に、新しい楽曲の必要性を、リスナーも含めBUMP OF CHICKENは感じていたかもしれない。
そしてそうした必要性に駆られた訳ではないだろうが、過去にも結成記念にちなんで公開された楽曲がある。4年前の結成20周年の終わりの日に発表された『リボン』だ。
『Flare』と『リボン』。この二つはバンプの過去作をイメージするフレーズを散りばめながら作られた双子のような曲だが、実際の面差しは大分違っている。両者は似ているけれども、視点が違うのだ。

まず、類似点を上げてみる。
①周年の記念碑的意味を持つ楽曲であると言うこと
『リボン』の歌詞は、《ガラス玉ひとつ分》、《汚れたカンテラ》、《手作りの地図》と、それぞれ『カルマ』、『ランプ』、『ロストマン』を彷彿させるワードが並ぶ。
今回の『Flare』でも、《感じる痛みは一人のもの》、《何が許せないの 何を許されたいの》、《忘れやしないけど思い出しもしない事》、《昨夜 全然眠れないまま 耐えた事》はそれぞれ、『真っ赤な空を見ただろうか』、『(Please)forgive』、『飴玉の唄』、『虹を待つ人』を。《信号》は『ウェザーリポート』、『話がしたいよ』。《ショーウィンドウ》、《交差点》は『ウェザーリポート』。《車輪》は『車輪の唄』。《オーケストラ》は『スノースマイル』。《灯火》は『ゼロ』、等バンプの音楽の歴史を物語っている。
②タイアップがない(『リボン』は後日CMソングに決まったが)                       
つまり外的要素を入れずに、作り手側と聞き手側に焦点を合わせる事が出来る。何処までが作り手の心情なのか、何処からをリスナーに託すのか、『Flare』では更にリスナーに委ねられる余白が増えたような気がする。
③レコーディングスタジオ
『リボン』と『Flare』の配信は同じスタジオ内で、彼らの演奏風景のみのドキュメンタリー映像が公開されている。
『リボン』から『Flare』まで、変化の多かった彼らの4年と言う歳月を軽く受け取る事は出来ない。
④公開の告知なし            

そして相違点。
①歌詞の方向性
『リボン』では迷いながら嵐の中をやって来た経過と未来への不安をリボンを結びながら越えて行こうとした。                  『Flare』では《感じる痛みは一人のもの》というシビアで痛烈なフレーズが表すように、孤を意識した歌詞になり、嵐の中の《小さな灯火》に対象が移っている。
②ベース
三人で活動となると、じゃあベースは?となるが、藤くん(Vo.Gt 藤原基央さん)が代わりに弾いているので、暫くは、この形式になるのだろうか。どちらがいいと言うわけではないが、サポートを入れない姿勢にメンバー3人のプライドと優しさを感じた。
③色                     
『リボン』のMVではモノクロだった映像が、『Flare』ではカラーに変わっている。『リボン』のMVは曲の後、現実に戻るようにカラーで終わるのだが、『Flare』はそれを引き継いでいるのかもしれない。つまり『Flare』は《青に変わった信号》現実の続きを意味しているのではなかろうか。 

 情景描写の先の余白              
先に述べた『Flare』の中の《信号》《交差点》《車輪》などの一見、身近で人工的に思える象徴は、《星》《地球》《月》《世界》《命》などが多用されるBUMP OF CHICKENの歌詞の中で際立っている。それ故に、感じた要素を元に、情景描写の先の余白を読み取ろうとしたくなる。それを見つけるのは、リスナーの仕事なので敢えては記さないが。では、『Flare』の現代の象徴における比喩の存在理由とは何なのだろうか。  

 象徴的アイテムの必然             
例えば、太古に栄えた万物に霊魂が宿るとされるアニミズム信仰は、科学技術の崇拝が蔓延る現代で、その痕跡が消えた訳ではない。テクノロジーの及ばないスピリチュアルな感覚を人間が忘れていない証拠に、音楽や様々な芸術はその存在を認められている。そう考えると『Flare』の歌詞において様々な象徴的アイテムが並んでいるのは、偶然ではなく必然のような気がして来る。《灯火》と言う象徴にも太古からの匂いを感じるし、過去の歌詞のフレーズが、繰り返されるのも、記念碑的意味を持たせる以外にも、その物質とそれを表す言葉が抱える力に寄る物だと。 

 『Flare』を聞いた衝撃/結び         
《どこにいるんだよ ここにいたんだよ ちゃんと ずっと ちゃんと ずっと》           
最後のこのフレーズで起こる圧倒的存在肯定は、不意打ちでしかなかった。                        それと共に1曲あるいはワンフレーズで、伝えたい内容を全て分からせてしまう凄さ。やはり、BUMP OF CHICKENは音楽でしか語れない人達なのだと思う。臆病で無防備で現実的、でも何処か純粋で優しい。『Flare』を聞いた衝撃が暫く抜けそうにないのは、この曲が限りなくドキュメンタリーの役割を果たし、バンプの過去と現在を繋いでいるからなのか。今はただ、彼らの未来に思いを馳せるばかりだ。                  

             
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