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ふざけろ!異常でもかまわないから

田淵智也に教えられた気の合わない社会での生き方

ああ、また心が死んだ。

誰かの何気ない一言で、理由がわからないちょっとしたイザコザで。

知らず知らずのうちに心が摩耗して、息ができないぐらい窮屈な場所に追いやられてしまうんだ。

ジタバタともがき苦しみながら、ふとした瞬間に息絶える。まるで窒息死みたいに。

世の中には、理不尽が溢れかえっている。何万回も言い尽くされたフレーズ。

無意味な善意も、無自覚な悪意も、無意識の冷酷さも…人生における柵(しがらみ)の発端は出来事よりも他人が巻き起こす。

自分のために吐き出した言葉を、さも誰かの幸せを願うかのように嘯(うそぶ)く。

全幅の信頼を無慈悲な裏切りで突き放す。

そんな他人が折り重なってできた集合体を"社会"と呼ぶのならば、僕は間違いなく気が合わない。

人生という名の不安定な舗装路を歩くのに、どうもこの喧騒は耐えられそうにもない。

そうして僕の心はまた何度目かの死を迎える。

死因は刺殺か銃殺か、はたまた撲殺か。

共通しているのは凶器が言葉であること。

今日も今日とて傷口にはポッカリと穴が空いて呼吸停止してるけど、体はすこぶる元気なので、明日も生き続けなければいけない…残念ながら。

そんなとき、僕は別世界へとダイブする。

それは本の世界であり、映像の世界であり、ネットの世界であり…共通するのは現実とは隔離された空間であること。

煩わしい他人様の感情が入ることはあっても、ON/OFFは自分自身で決めることができる。

誰に邪魔されるわけでもなく、やりたいことに純粋な気持ちで向き合える。

当たり前だけど、簡単でないことを実行できる数少ない瞬間だ。

音楽の世界もそのひとつ。

余計な不純物なしに美しい旋律や小気味の良い歌詞を余すことなく堪能することができる。

ライブに足を運び、生の音を浴びることで、言葉で言い表せないぐらいの多幸感に包まれる。

ぽっかりと空いていた傷口が少しずつ塞がってかさぶたとなり、心が息を吹き返していくのだ。

そのおかげで今日も"社会"から目を逸らすことなく、何の後ろめたさもないままに生き続けることができる。

たとえそれがどこまでいっても報われないことだとしても。













音楽は楽しい。楽しいことは大好きだ。

好きに対する揺るぎない理由が変わることはないし、"楽しい"があるから心の安寧が手の届くところにやって来る。

たけど、どうしても定期的に現れる"心の死"に遭遇したとき、こんな感情が頭をよぎる。

"こんな悲しみがある限り、楽しいことなんて無意味なんじゃないか"

大好きな音楽のはずなのに、僕を救ってきてくれた存在なのに、その価値が揺らいでしまう。

それがたまらなく寂しくなる。

生きていくために、"音楽"は間違いなく必要なものだ。

そうじゃないと、きっと僕の心は息ができなくなってしまう。



僕は音楽なしでは生きられない。



けれども、本当はこう言いたい。



僕は音楽があるから生きている。



ギリギリで世界と繋がるためのツールじゃなくて、純然たる生きてく理由になる幸せ…それを為せる力が音楽にはある。

"楽しい"のために生きているはずなのに、気づけば心ない一言でいとも簡単に黒い感情で塗り潰されてしまう。

つらい……

悔しい……

憎い……

こんな感情に支配されるのが嫌なのに、ドス黒い何かが心に蔓延って、そこから抜け出せなくなってしまう。

そうして楽しかった記憶は消えてしまい、再び悲しみの渦で心がズタズタに引き裂かれていく。

そうなってしまうと、音楽と自分が合わさったときの無敵感が途方もなく無力であるように思えてしまう。

生きることが永遠に続く苦行かのような錯覚を起こしてしまうのだ。







"今 目の前の君が明日を生きれるくらいには"

"ありえない不条理は ふっ蹴飛ばしていけ with 喜怒哀楽 余すな 必要ないよ、嘘つき"

桜のあと(all quartets lead to the?)/UNISON SQUARE GARDEN

そんな窮屈な現状をひと筋の言葉が掬いあげてくれる。

音に乗せた誰かの思いがどうにもならない現実の見方を少しだけ変えてくれるんだ。

言葉にしたい…けどそれができない。不安だったり、確証がなかったり、間違ってないはずなのに不透明がゆえに具現化することが思いがたくさんある。

だからこそ、正しいかどうかなんて誰もわからないのに、当たり前みたいな顔で存在している常識という魔物にいつも押し潰されてしまう。

そんな圧に負けそうになるとき、まるで意を介さないかのように、捻れているようで真っ直ぐなフレーズが脳髄に響き渡っていく。

田淵智也というソングライターは、社会や時代に迎合しなくても、間違ってないものはたくさんあるということを僕に教えてくれる。


"Sha-ba-da-da-da 造作ないね 正味簡単にコントロールしてしまう かくある話"

世界はファンシー/UNISON SQUARE GARDEN


"恐竜だ ガオガオガー でかくてやばい 恐竜が現れるんだぜ"

恐竜あらわる/THE KEBABS


"ジェッ飛ばしちゃう? ドキドキがブーストしたら ジェッ飛ばしちゃう? そのままロケットスタート"

大冒険をよろしく/DIALOGUE+


キャッチーなメロディのなかで一聴では理解できない言葉が数多くあるのが田淵の作る曲の特徴だが、そのなかに見え隠れする大切な思いは、どうしようもなく胸を貫いていく。


"全部嫌になったなんて簡単に言うなよ 全部が何かってことに気づいてないだけ"

Simple Simple Anecdote/UNISON SQUARE GARDEN


"みっともないのが当たり前だから つまりみっともないのがカッコ良くなるんだぜ"

ジャキジャキハート/THE KEBABS


"生きるって難しいな それでも同じくらい素晴らしいな"

人生イージー?/DIALOGUE+

曲の心地よい音感(おとかん)を楽しんでいるとき、ふと何か気づかされる瞬間がある。

まるで死ぬことを恐れていた人生に鮮やかな色をつけてもらったかのように。

誰かと交わるたびに思い通りにいかない人生も、もしかしたらまだ意味があるのかもしれない…そう思うには十二分すぎる言葉たちだ。

昨今のインタビューで、田淵は自身が世の中と気が合わないことを明言している。

それは別に社会を否定しているわけでもないし、きっと自分の考えが正しいというエゴイスティックな気持ちでもない。

人生の良し悪しはひとつの答えで決まるものではない。人によって選択は異なるし、それが適切かを決めるのは本人である。

社会や集団がその答えを決定できないはずだ。

誰かにとっての幸せも不幸も十人十色で存在している。だから、気が合うやつらだけで集まっていたら良い。

そういう発想が出てくることがない…そんな世の中と気が合わない。僕は彼がそう言っているような気がしてならない。


"誰が何て言ってもね ただ今日が最高なんだから 走り出した心 もう止まれないんだよ"

best day,best way/LiSA


"絶対失敗ありえない 強気のままチャレンジしよっか 可能性はハンドメイド"

girly highester!/寿 美菜子


"じゃあ 今日のままの明日よりも もっと楽しいことしませんか?"

take you take me BANDWAGON/内田真礼


田淵智也の紡ぐ歌詞には、世の中と適度な距離感を取りながら、自分自身で生き方を切り開いていくような力強さも感じる。

多分どんなに立ち向かっても、世の中の理をぶち壊すことはできないし、おそらく逃げることはできない。

だからこそ、世の中と深くは関わらない。

そういうもんだと受け入れて、それ以上の思いを持つこともないのだ。

社会は社会、自分は自分。

決められたルールがあるなら、そのなかで最大限の自己表現をやる決意と行動に満ち溢れている。

世の中を憂いたり、多数派の価値観を否定したり…そういうやり方以上に真っ当で健全な方法なのではないかと僕は思う。

どこまで歪でも、根本の真っ直ぐさを失うことはない。
それが彼なりの気の合わない世の中との付き合い方なのではないだろうか。

そうやって社会に振り回られない生き方を少しだけ近くで見ることができたから。

どんなにうまくいかなくても、それが絶対的な答えじゃないことは確信している。

世の中は優しくないかもしれない。けど、それが僕の生きる理由にはならないので。

タチの悪い現実はちょっとだけ無視をして、信じるものだけを愛していきたい。





そうは言っても、どうしても理解できないものはたくさんある。

そんなときは再び音楽の世界にダイブしてしまおう。


"ああ全部全部意味わかんな 君のその哲学がわかんない この人生が解釈が多すぎて どの道選んでもきっと 生き抜くことが難しい"

"じゃあ全部全部マジわかってるフリだって構わずに笑って なら僕は異常だって構わない!"

パンデミックサドンデス/UNISON SQUARE GARDEN


僕が悩んだときにはいつも背中を押してくれる曲だ。

とてもじゃないけど、誰か励ますような曲じゃないのは自分がよくわかっている。

だけど誰にも迷惑をかけない違いが許されないのならば、社会と気が合わないままでいいし、それなら異常でも構わない。

その覚悟はとっくにできたから。

ずっと先にそれを成し遂げ続けている人がいるなら、きっと道を見失うこともない。

僕に生き方を教えてくれた偉大なソングライターに感謝の気持ちを述べたい。


"ふざけろ!「いつか終わる 悲しみは」 どうか忘れないでよ"

フルカラープログラム/UNISON SQUARE GARDEN


心が死んだあの日のことは忘れることはない。

それが明日の僕を生かしてくれているから。

だから、ひたすら今日という日を変わらずに楽しんでいくよ。
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