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音楽が人に与える力

私の心は宮本浩次の創り出す音楽によって救われた

2020年9月7日、宮本浩次の歌に出会って私の生活は一変した。
大袈裟ではなく、私の心に失われた音と彩りが復活した。そんな衝撃的な感覚だった。

それまでの私は、自分の人生と向き合う事から逃げ、色んな葛藤を打破できない自分への苛立ち、思い通りにいかない歯痒さ、そんな鬱屈とした日々を過ごしていた。

私は祖父を母と二人で在宅介護していた。
最初は年相応の物忘れ程度だった祖父も、日毎に認知症による昼夜逆転の行動や様々な言動に日夜振り回されるようになった。
母も私も仕事をしながら介護、家事、仕事の毎日。一日の唯一の楽しみは睡眠だけの生活。
その睡眠さえも夜中に大声で呼ばれ、起こされる。
一人娘の母は、頑張れるまで父を家で世話したいという気持ちがあり、私も何とかその意向に添いたかった。
職場では責任ある職務に就き、課題とプレッシャーの中、業務を放棄するわけにはいかない。
数年そんな日々の中、自分でも気付かない内に身体と心のバランスが崩れていたのかもしれない。
祖父とはある事がきっかけで、お互い素直になれず、素っ気ない態度やきつい物言いをした事もあった。
気がつけば可愛げのない女になっている自分がいた。

そして世界中がコロナ禍という今までの日常が様変わりする事態が起こった。
さらに内向的な生活を送る中、心から音や彩りが無くなった。
緊急事態宣言の最中、祖父は入院した。
少しホッとした自分がいた。夜、緊張せずに眠れる。
そんな風に考える自分にまた嫌気がさした。「優しい人間になりたい」

そう思い始めた時に宮本浩次の歌に出会った。
テレビ番組で「宮本浩次特集」が放送されたのを観た。エレファントカシマシのボーカルでぶっ飛んだ人というイメージしか持っていなかった私にその番組での宮本浩次はとても新鮮だった。
喜びや照れ、誠実な語りや、恐縮する姿勢、何より「長生きしたい」と宣言したその言葉に魅かれ、この人の曲を聴いてみたいと思った。
そしてソロアルバム「宮本、独歩。」を購入した。
「CDなのに、歌声にライブ感がある!!!」それが第一印象だった。
アルバムに収録されている楽曲の幅の広さ、「冬の花」のようなノスタルジックな曲調からロックな「Do you remember?」、「解き放て、我らが新時代」のヒップホップ調、軽快なポップ、聴き進めていく内に宮本浩次の歌声が私の凝り固まった心を鼓動させた。

私は縋るように「宮本、独歩。」を毎日聴き続けた。
次第に私の心に変化が表れた。

アルバム1曲目:ハレルヤ

「強くもなく弱くもなく まんまゆけ」

「ああ涙ぢゃあなく 勇気とともにあれ ああ笑いとあれ 幸あれ」


職場でも家族の中でも私は強がっていた。幼い頃に父を亡くし、母の辛さを見てきたから私が強くならなきゃいけないといつも思っていた。
でもこの歌詞で、強がらず自分らしく幸せを掴みにいきたいと思った。



アルバム3曲目:夜明けのうた

「夜明けはやってくる やさしさの向こうに」「会いにゆこう あたらしいわたしに」

宮本浩次の優しく暖かい歌声が心に沁みた。
「やさしさ」の向こうには「やさしさ」が待っている。
リモート面会でしか会えていない祖父の寂しそうな表情を見て、もう一度頑張ってみよう。
退院したら祖父との関係をやり直そう。そして自分の人生ときちんと向き合いたいと思った。

それからエレファントカシマシのアルバムやライブ映像を購入し、歌詞やメロディによって変貌する宮本浩次の声色、声量、全身から溢れ出る圧倒的なパワーに活力が湧いてきた。

そして10月8日、祖父の退院日前日、病院から電話がかかってきた。
「祖父が新型コロナウイルス陽性になった」と。

入院先から新型コロナウイルス治療の為、転院する日、母と二人雨の中、救急車で運ばれる祖父を遠くから見送った。
「おじいちゃん頑張れ!頑張れ!負けるわけがない」


入院先へラミネート加工した写真や手紙、思い出の歌謡曲が入ったCDを届ける日々。
看護師さんから「それを見て涙、流されてましたよ。皆さんの名前もしっかり覚えておられます」と。
しかし1ヶ月「ごめん」「ありがとう」を直接伝えられず、永遠のお別れになった。

私はこの取り返せない祖父との日々への後悔と懺悔の気持ちを抱えたまま生きていく。

宮本浩次が歩んできた上り下りのエブリデイな人生の中で彼が感じた素直な思いが歌詞やメロディとなっている。
その創り出された楽曲は聴く側の様々なシチュエーションや感情にフィットする。
私は宮本浩次の歌と出会ってまだ数ヶ月だが、本当に心が救われた。

きっとこれから歩む道の中で、様々な出来事があるだろう。
でも私の心の中には宮本浩次の歌、たくさんの楽曲、歌詞がある。
それらは心の拠り所となり、共に歩んでいく。

宮本浩次が笑顔で宣言したように、私も「宮本浩次の歌とともに長生きしたい」

そして今、この音楽文を書いている時に宮本浩次が令和2年度(第71回)芸術選奨 文部科学大臣賞 大衆芸能部門受賞の一報が飛び込んできた。
これからの宮本浩次の活躍が楽しみで仕方ない。心からの祝福と感謝の気持ちを込めて。
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