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UNISON SQUARE GARDENに救われた何気ない話

Simple Simple Anecdoteによせて

何かしらで勇気だとか元気だとかが失せてしまったとき、周りに「元気出して」と言われて素直にみなぎってきたという経験が、私にはない。元気のない人間に「元気出して」と口にするのはいわば常套句のようなもので、状況に対して処理を行っただけに過ぎないからだ。自分で咀嚼して糧にするには、その言葉は力不足と言わざるを得ない。

そんなことを考えていると、何やらある記憶を思い出した。私が活力を取り戻すときには、必ずと言っていいほどイヤホンを付けていた。
私は、音楽に勝手に救われていたのである。

音楽が人を前向きにする理由は、聴き手に解釈を委ねている点にあると思う。曲を自分の考えたように受け止めることで、自動的に各々にフィットするように姿を変える。それはどこまで行っても自分自身で導き出した結論であり、どうしようもなく能動的だ。
音楽が私を元気にさせてくれたのではなく、私が音楽を通して元気になった。視覚と聴覚のエネルギーを削ごうと画策する喧騒から一度遁走し、自身の嗜好とだけ向き合うその時間こそが、自身をどうにかしてくれるのである。

時に、私はもっぱらUNISON SQUARE GARDENの曲を聴き漁っている。
ユニゾンの歌詞は、良い意味で余白が多い。本人たちも歌詞の意味を具に解説したがらず、聴き手の解釈に任せるスタンスを取っている。私は、この温度感が心地よくて仕方がない。彼らの曲には、聴き手に対して意見・主張するのではなく、元々聴き手が感じている考え方を後押ししてくれるような力がある。いい曲作っていいライブして自分たちが一番楽しむ、そんなエゴイスト精神で生きている彼らだからこその説得力があるのだ。

さて、ようやっと今回着目したい曲について紹介しよう。彼らの8枚目のアルバム「Patrick Vegee」の最後からひとつ前の11曲目、「Simple Simple Anecdote」だ。
この曲には2分14秒という短さでありながら、聴き手がノリに乗るには、そして勝手に救われるには十分すぎる魅力が詰まっている。

一小節分の軽快なドラムを抜けると、すぐにこんな歌詞を携えて歌が始まる。
『僕の言葉が死んだ時 アスファルトは気がつきやしないだろう』
『車のエンジン音おみやげに 一つ物語が終わる』
この2文だけで、作詞作曲田淵智也という男の計り知れなさに感嘆する。

ユニゾンはどれだけ有名になろうが、ファン層を広げようだとか、そういうことをしない。ライブハウスという、音楽と向き合うためだけに作られた閉鎖空間で派手に楽しむことが何よりの目的だ。「プログラムcontinued」では、そんな自分らの生き様を『目立たない路地裏で超新星アクシデントみたいな事』と歌い上げていた。

では、もしこの世界から急に彼らが消えたとして、その瞬間に世の中は止まってしまうだろうか。そんなはずはない。彼らが存在しようがしまいが、なんだかんだで地球は回っていく。
そんな内容を、アルバムの終盤という配置にすることによって、「聴き手がアルバムを聴き終わって高揚感を味わっても、どこまでもその聴き手だけの話」という、アルバムを通して聴くということの意義と重ねて表現しているのがにくい。

どうせ自分がいなくても世界はなんとかやってるだろうよ、と思いながら生きていれば、下手な責任感などを覚えず、もっと気楽に日々を送れる。そう考えれば、目の前にある壁も、なんとなく低く見えてくる気がした。

そして、この曲の最大のパワーワードはこれだ。
『全部嫌になったなんて簡単に言うなよ 全部が何かってことに気づいてないだけ』

私は、これに元気を取り戻させてくれるフレーズを知らない。
確かに嫌なことがあったとき、その嫌である対象は目の前の悩みなどではない。目の前の悩みがあまりに悪徳なトリックアートを見せてきて、つい、雲さえ遮断するような大きな壁だと勘違いしてしまう。世の全部が自分の敵であるように思えて仕方がなくなってしまう。
でも、実際の壁は存外小さい。ちゃんと大きさを把握出来たらなら、向こう側の雲にも、山にも、歩く人にだって、魅力を見出せるはずだ。
「全部」だなんて漠然としすぎたものを単一化しないで、良いところ悪いところを精査して集めていく心構えが大事だと思わせてくれる、私にとってとても大切な歌詞だ。

私は生きている中で辛いことがあったとき、音楽を聴く。そして元気を出す。これは音楽への依存だろうか。私は違うと思う。私はユニゾンに助けてほしいだなんて思っていない。自分が自分らしくなるための、大事な大事なアイテムであるだけだ。

一聴き手として、一ファンとして、私は自由に音楽と向き合っていきたい。ユニゾンが自分のために音楽を続けているように。
共犯関係は互いの結託で成り立つ。もし離れたいと思ったなら、離れちゃいけない理由はない。
しかし当分は、何なら今のところは一生共犯者として、その最高な音に触れていきたい所存だ。
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