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これは普通じゃなくて当たり前だ

UNISON SQUARE GARDENというかけがえのないロックバンド

ロックバンドはライブをしないと死んでしまう。

極端な発想かもしれないが、大抵のバンドはそうだろうと踏んでいる。

ライブ会場ででっかい音を鳴らす。それ以上の幸せはないのだと勝手に決めつけてる節さえある。

それを前提として考えたとき、今の情勢はロックバンドに決して優しくない。

なにせ人が集まることに制限がある以上、100%の状態でライブをすることは物理的に難しいし、そもそも発声禁止・距離を取るのであれば熱量も従来より下がりがちだ。

そんな状況ではライブをするというだけでハードルが上がってしまい、今の世の中に合わせた状態で満足いくパフォーマンスを行うという難しすぎるお題まで出現し、様々な制約に縛られてしまう。

少なくともライブという娯楽は現在の社会では歓迎されていない。その認識は誰しも持ってしまうものだろう。

それでも音楽を、ロックバンドを、ライブを、どうしようもなく求めてしまう人種はいる。

僕もその一人だ。

ライブに参加することで生の実感を受け、ちょっとだけ自分の人生を好きになる…そうしてようやく社会と向き合うことができる。

そんなライブを生きがいとして暮らし続ける人たちは世の中には一定数存在するはずだ。

高望みはしないけど、大好きなロックバンドがいつも通りに演奏する姿を見ていたい。

こんな世の中でも、せめてそれぐらい願うのは許されて欲しい。








その願いが届いたのかどうかはわからないが、時代にしっかりと歩み寄りながらも、信念は揺るがずに音を鳴らし続けるバンドがいる。

UNISON SQUARE GARDEN、僕が愛してやまないロックバンドだ。

対面でのライブが制限されている時期もオンラインライブを精力的に行い、その後は着席したままではあるが、人を集めてのライブも開催させることができた。

そんな彼らが満を持して行うツアーが「Normal」である。

読んで字の如くだが、日本語で訳すと「普通」という意味が名称としてつけられている。

これまでの日常では何気ない言葉であったと思うが、このご時世では大きな意味を持つ。

それは制限が多いこの世の中で、従来と同じ形態でライブを行うことを表しているから。

もちろん対策は打ってあるので、全てが以前の通りとはいかないが、曲数や参加方法など…大枠の部分は制限前と同様に戻して実施している。

まだまだ油断できない世の中ではあるけれど、少しずつ過去の楽しい部分が戻ってきてくれるのは素直に嬉しい。

自分にとっての生きがいが帰ってくるのは、人生を滞りなく生き抜くために必要不可欠なものだ。

とはいえ、「普通」という言葉には若干の違和感がある。

何故ならあのUNISON SQUARE GARDENだから。

"普通じゃないは 普通だよ"

彼らの楽曲である「僕は君になりたい」の一節であるが、こんなフレーズを歌いきるロックバンドの「Normal」というツアーは正直あまり想像がつかない。

それはパフォーマンスにも如実に現れている。

オーディエンスは煽らないし、人気の定番曲を詰め込んだセットリストは組まない…それが正解かどうかは置いといて、少なくとも昨今のロックバンドの「普通」とは些かかけ離れてる気がしてならない。

だからこそ、どのようなライブを行うのか気になって仕方がなかった。

UNISON SQUARE GARDENにとって「Nomal」とは一体どういう意味だったのか。

その答えはライブのなかに隠されていた。







"悲しくちゃ終われない 「まだずっと愛していたい」"


開幕のSE「絵の具」が流れるいつも通りの幕開けの後、耳をつんざく様なセッションから放たれたのは、ライブオリジナルのアレンジから始まる「Phantom Joke」だった。

前述したフレーズが彼らの今の思いを体現しているようで、思わず胸が震えた。

様々な事情でライブでの披露は控えめであっが、2020年のパフォーマンスを経て、確実に楽曲のポテンシャルが上がっていることも強く感じられた。

とはいえ、「Nomal」というツアーに当てはめると少々変化球の構成ではある。

このツアーの裏テーマは「Phantom Joke」のシングルツアーであることが明言されていた。

つまりは主役は「Phantom Joke」のシングルに収録された楽曲たちである。

特に表題曲である「Phantom Joke」は特別な立ち位置になり得ることが推察できる。

それがまさかの1曲目での披露…「Nomal」とは少し異なるかもしれないが、一般的な常識としてはかなり意外性のある選択かもしれない。

定番曲である「オリオンをなぞる」を挟んでの3曲目は「meet the world time」、何とバンドとしてライブ披露は7年ぶりだった。

MC後の「メッセンジャーフロム全世界」からの「コーヒーカップシンドローム」は、10年以上前に発売された2ndアルバム「JET CO.」の冒頭を踏まえたものであり、この流れも滅多とないものだ。

地獄さながらに魔物が飛び出てきそうな「BUSTER DICE MISERY」もツアーでは久々の披露となり、発声できなくてもオーディエンスを存分に沸かせていた。

映像作品が残っているとはいえ、全国規模のライブでの登場はどれぐらい振りか…「キライ = キライ」が披露された時点で、セットリストの中核を担っているのが「JET CO.」であることは容易に想像できた。

ライブの山場を迎えた場面の「流星のスコール」では照明が光り輝く星の様に煌めいており、ドラムソロ後の「パンデミックサドンデス」はエネルギー溢れるパフォーマンスでライブを終幕へと導いていった。

改めて披露された楽曲を並べていくと、一般常識的な意味での「Normal」とは、あまりにかけ離れているように思えてしまう。

UNISON SQUARE GARDENらしいといえばそれまでなのだが、このツアー名をつけた意味は確かにあるはずだ。

それを理解できたのは、ライブが終盤に差し掛かった頃だろうか。

新曲である「スロウカーヴは打てない(that made me crazy)」も、それまで変わらない演奏スキルで会場をさらに盛り上げていく。

それまでのライブにおける定石を崩した「君の瞳に恋してない」への繋がりは、定番曲ゆえに安定したパフォーマンスを見せ、自然と観客の体は大きく揺れていた。

間髪入れずの「桜のあと(all quartets lead to the?)」は、会場の人間全てを包み込むような多幸感に満ち溢れていて、「楽しい」というライブで最も大切な感情を余すことなく享受することができた。

新曲や定番曲を畳み掛けたことで、ようやく自分にとっての「Normal」らしさを少し感じることができた。

そこで一つ気づいたことがある。

どの楽曲も熱量が変わらないのだ。


新曲も昔の曲も、


シングル曲もカップリング曲も、


好調なときに作った曲も停滞している時期に作った曲も。


ライブで披露するときはどの曲も同様の熱量を持って演奏されている。

少なくとも自分はそう感じた。

それは楽曲という点を、アルバムやセットリストといった明確な線にして繋げていくUNISON SQUARE GARDENにとっては当たり前の手法であるが、今回の歪に見える構成のライブだからこそ顕著に現れた。

そこでようやく答えに辿り着いた。

彼らにとって「Normal」とは「当たり前」なのだ。


ライブで大きな音を鳴らすのはロックバンドにとっての「当たり前」である。


どんなセットリストでも良いライブができることも「当たり前」だ。


どんな情勢でも変わらない熱量を持って歩みを止めないのもきっと「当たり前」のはずだ。


「当たり前」である以上、それが存在しないことは彼らにとって普通ではないので。

きっと実現させるための労力は惜しまなかったのだろう。

とはいえ、この「当たり前」は決して安くないし、簡単なことではない。

自分たちのやりたいことを純粋に求め続ける彼らだからこそ、易々と壊れることのない「当たり前」が生まれ、かけがえのないものになっていくのだと思う。

ライブの最後に披露されたのは「mouth to mouse(sent you)」だった。

「Phantom Joke」のカップリングであるこの楽曲がラストを務めることに意外性はあるが、ここにもUNISON SQUARE GARDENにとっての「当たり前」が感じ取れた。

とはいえ、これは僕が勝手に感じてることなので、あくまで想像の域は出ないけれど。

大切なことはMCではなくパフォーマンスで伝えてくれるということ。

このフレーズを聞いて、グッと心を掴まれるファンは多いはずだ。


"さよならが聞きたいんじゃなくて また会えると言ってほしい"


僕にとって、このツアーは間違いなく「Normal」であった。








本編終了後にアンコールがあった。このご時世なので1曲だけ。

披露されたのは「さわれない歌」…UNISON SQUARE GARDENのスタンスを表したような曲である。


"近づき過ぎないで ちょうどいい温度感であれ"


「Normal」ツアーでこの曲が登場することは、揺るぎない「当たり前」を感じられるようでホッとする。

きっと彼らはいつまで経っても手に届かない場所に存在しているし、一生距離が縮まることはあり得ない。

でも、何があっても変わることはないし、飽きるか死ぬか以外で消えることはない。

そんな単純でささやかな「当たり前」を続けることの難しさを僕らは嫌という程思い知った。

それでも変わらずに「当たり前」を享受しようとしているロックバンドがいるのならば。

例え世界が気づかなくても、そのかけがえのなさを僕は一生忘れることはない。

ロックバンドは明日はどっちだ。

多分誰も教えてくれないけれど、いつかのどこかで「当たり前」に存在している。

それだけで僕の人生にとっては十二分に生きていくための事実となり得るんだ。
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