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音楽を抱えて「逃避行」という旅へ

Diosとたなかの始動に添えて

どこかで予兆を感じていた。

「たなかながし」と題し、YouTubeでカバー動画を定期的にあげるようになったこと。「気まぐれでもなんでも歌い続けてくれることがうれしいわ」と思った。

2月12日、「23歳になりました!長い休みを終えてまた走りだす一年になると思います。」とツイートしていたこと。「あれ、気のせいじゃなくて、また歌を歌うんじゃないか」とワクワクした。

ヒプノシスマイクのFling Posseというチームに「Black Journey」を提供したこと。この曲を聴いて、「彼の中の音楽はまた走り始めるんじゃないか」と感じた。音楽に対する嗅覚が衰えていないというか、むしろ洗練された気すらした。この2年間、音楽から遠ざかっているよう見えた時期もあったけど、今の彼からはすごく音楽の匂いがする。

3月27日、「Missing」(久保田利伸)のカバーを聴いて、「これはもしかして、リハビリなのかもしれない」と思った。あまりに良かった。本当は早く自分の歌を書いて、歌いたいんじゃないか。というのは、自分の願望込みの想像でしかない。

3月30日、「今夜12時、大事なお知らせがあります。この告知をできるのが本当に嬉しくて仕方ないな。二年間ずっと準備していたことをようやく始めます。よかったら、また聴いてください。」とツイートしていたこと。それはどう考えても音楽との再会だった。待ちきれない。

3月31日0時、ぼくのりりっくのぼうよみとして音楽の世界からいなくなった彼はDiosというバンドとして、また生まれた。そして公開されたのが「逃避行」という曲だった。
一度聴いただけで分かった。偶像に囚われてもがいていた晩年のぼくのりりっくのぼうよみとは全く違うことが。あの頃、音楽を愛しているのに、どこか苦しそうにしていた彼はもうない。世界に対してもっと心を開いているように聴こえるし、その声はとても素直で、温度がある。
この曲の中で、「僕」と「君」は「逃避行」をしている。後に公開されたMVでは、赤い服を着た男女が何かから逃げるようにしながら走っていたので、概ねイメージ通りだ。

「僕」は彼自身、「君」は音楽、ではないか。まずそう思った。

<だから奪わないで 僕から君を奪わないで
くだらない物語に閉じこめたりしないでよ>

「くだらない物語」とは、天才と称されて持て囃されていながらも絶頂から没落した「ぼくのりりっくのぼうよみの物語」のことなのかもしれない。
当時わざと燃えながら落ちていった彼をリアルタイムで見ていたのに、どうしても彼が音楽を手放したかったようには見えなかった。最後に行ったツアーである「僕はもう……」での姿が、辞職発表後にもかかわらず、あまりにもただの音楽を愛している青年だったから。インターネット越しの様子と異なったことに、少し戸惑ったことを思い出す。

<明日へ繋がる糸を切ってでも
君が欲しいと 心が叫んでいる>

<だから奪わないで 僕から君を奪わないで
それ以外なら何でもやるから
初めて自分になれたんだ>

<願いを分かち合う旅 君の声が
僕を連れていく 知らない場所へと今>

<灰色の街に 君が色を塗った>

「ただ歌いたい。」音楽活動を再開するにあたり、彼が綴ったことばには、歌うことに対する強い意思があった。その姿と、「僕」が「君」を求める姿が重なって見える。

Diosというバンドを「僕の人生」とまで言う。ぼくのりりっくのぼうよみ時代からの付き合いであるササノマリイさん、運命的な出会いで時計の針を動かしたIchikaさん、3人が紡ぐ音楽はどんな旅になっていくんだろう。
これからがとてもたのしみです。おかえりなさい、たなかさん。そして、いってらっしゃい。
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