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Vaundyの創作の流儀。

MV『世界の秘密』と『融解sink』で見えた達人×達人のケミストリー

“その道”のプロの話を聞いたり現場を見たりするのが好きだ。玄人が好きなことに打ち込んで、イイモノを作ろうと楽しみながら働く姿に強く惹かれる。
例えば“プロフェッショナル 仕事の流儀”とか“情熱大陸”とか、このテのドキュメンタリー番組を観ると、ワクワクが止まらない。

この世を去る直前まで、現役のイチ“職人”だった父を見て育ったせいか、私も20代で“モノを作る仕事”に就いた。でも器用じゃないから、ひたすら地道に経験を積み重ねるしかなく。ただ、好きな仕事でイイモノを作ろう!という想いだけは人一倍あった。
いくつになってもホンモノの職人や達人への憧れは止まず、厚かましくも彼等に感情移入してしまう。それが音楽の世界、その現場で“好き”を極めて働くプロフェッショナルであれば、なおさら。

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SPACE SHOWER TV公式YouTubeチャンネルで公開された、Vaundyの特別配信番組を観た。
4月11日放送の完全版“Vaundy SPECAL〜TALK ABOUT Music Video〜”のダイジェスト版のようだが、一瞬たりとも見逃せないワクワクの連続だった。
2回に分けて放送された中身は、第一弾『世界の秘密』(昨年末リリース)、第二弾『融解sink』(今年2月リリース)にスポットを当て、MV制作秘話をまとめたもの。それぞれの作品を手掛けた映像監督とVaundyの対談では裏話や作品への想いが明かされ、メイキングシーンではVaundyのクリエイター気質が垣間見える。

コロナ禍のせいで、今MV1本作るにも思うようにいかないことが多々あるだろう。しかしふたつのMVは、そんな制限や窮屈な印象を視聴者(=私)に微塵も感じさせない完成度の高さだ。それどころか“作り手の熱意”がひしひしと伝わってきて、温かみさえ感じる。
両楽曲ともVaundyは主演しない。なのに、これまでのMV以上に、彼の唄う詞の言葉ひとつひとつが胸に響く。事実、MV視聴者の反応に表われていて、これらがYouTube公開されてからというもの、詞と映像を掘り下げた視聴者たちが思い思いの解釈をコメント欄に書き込んでおり、反響を呼んでいる。同じ映像を観て、こんなにも様々な感じ方があるのかと、実に興味深い考察の数々。
Vaundyは毎回、MV配信時に楽曲の“キャッチコピー”を添えている。例を挙げれば『融解sink』には、「知り得る幸は、知らぬ不幸でできている。」(※YouTube公式より引用)と何とも意味深な一文のみ。このことがますます視聴者の“想像力”を豊かにして、作品に更に色や味を足していく。実はこれこそ、Vaundyが一番望んでいることなのかもしれない。

ちなみに『世界の秘密』は、この一年の特殊な生活環境下でできたらしい。また、『融解sink』は『life hack』(1st.AL『strobo』 収録曲)と同時期に作った姉妹曲でありながら、「(歌詞が偶然)コロナ禍の今とリンクした」と以前、亀田誠治氏のラジオ番組出演時に話していた。彼はこうも言った。
「(いつも)歌詞を詳細には書かない。自分の想いと聴き手の“ちょっとした感覚のズレ”が“新しいストーリー”を作る。だから“隙間”をそれぞれ自分で埋めてくれればいい」と。

この特番を観れば、「監督と僕の世界観や、(ヘッドホンやイヤホン越しに)楽曲だけで聴いた世界観とMVで聴く世界観の“違い”が生み出す映像」(本人談)の制作過程を、Vaundy自身が純粋に楽しんでいるのがよく分かる。監督は監督でVaundyと映像が作れることを喜び、若き才能に刺激を受け、現場を楽しむ様子が対談や制作シーンからうかがえる。

監督のひとりは、撮影現場でのVaundyのコミュニケーション能力の高さを褒めていた。確かに数々のメディアを通じてVaundyの言動を知る度に見えてくるのは、自ら仕事仲間や音楽リスナーと積極的に“関わり”、シナジー効果が生まれるのを心から楽しむ姿だ。Twitterでも時々、ファンに写真や動画を募って“接触”を試みる。そして何かで惹かれた作品には、気軽に感想を述べたりアドバイスしたりして、常に人と関わり、創作のヒントにする勉強家の一面がある。

今回私が一番驚いたのは、MVには“登場”していないVaundyが“撮影クルー”にごく自然に溶け込み、現場で動き回っていたことだ。
メイキングを観るまで、『世界の秘密』の最初にカチンコを鳴らすのがVaundyだなんて気づかなかった。『融解sink』では、スタッフと一緒に重いセットを運んだり主演俳優を気遣ったり、遂にはウェットスーツでカメラ片手にプールの中でニコニコしてるし。
プールに飛び込んだのは監督もさすがに驚いたようだが、ミュージシャン自ら映像制作に熱中する姿に、感動している話しぶりだった。トレードマークのくせ毛までびしょ濡れになりながらも無邪気に笑ってるシーン、心から仕事を楽しむ人の顔を、私も見れて幸せだ。

こうして達人たちの想いが混ざり合い完成したふたつのMVは、Vaundyの言う“新しいストーリー”となって世界に放たれた。
特番の制作秘話を知ったうえで、改めてMVを観てみると・・・これまで抱いていたイメージとは違う新たな発見があり、歌詞や映像から私なりに更に多くの想いを受け取れた気がする。そして、イチ“作り手”として何にでも好奇心を持ち、進んで動き、周りに良い刺激を与え自らも吸収して、再び世に作品として還元する姿。その生き方を観て、Vaundyが自らを“マルチアーティスト”と名乗る理由が腑に落ちた。

「マルチな部分を出してクリエイティブに」と、今年の成人式ライブ“HATSUGAの芽”後に抱負を語ったVaundy。
『世界の秘密』と『融解sink』をリリースした後も、他アーティストやCMへの楽曲提供やオリジナル曲のリリースは続き、TV、ライブ、ラジオ、アート制作など活動の幅もぐんぐん広がっている。あまりに活動のスピードが速いので、こちらは老骨に鞭打ってついていくのに必死なのだが・・・・・
Vaundyがどんなプロフェッショナルに成っていくのか、この目でちゃんと見届けたい。だから、まだまだこのワクワクは止められない。
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