4729 件掲載中
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

ロッコとポール・ジャクソンへ捧ぐ

タワー・オブ・パワーのファンクは続く

タワー・オブ・パワーが2018年に行なった結成50周年ライヴが音源、映像化されリリースされた。2020年に亡くなったベーシスト、ロッコが参加し、事実上の遺作になるようだ。

選曲もサウンドも90年代に出した同じくライヴ盤「Soul vaccination」の延長線上に当たる、熟練されたベテラングループの円熟味溢れる熱いグルーヴがこれでもかというほど味わえるアルバムだった。

ロック・ファンであればタワーの存在は、リトル・フィートやヒューイ・ルイスのアルバムやライヴで出会っているだろう。私がタワーと出会ったのは90年代末、「ロックの名盤」といった類の企画に彼らの4枚目のアルバムである「Back to oakland」がブラッド・スウェット・アンド・ティアーズやシカゴと同じ様な「ブラスロック」と言う括りでよく取り上げられており、興味を持って聴いてみたのが最初だった。しかしその時は良さがわからないまま、繰り返し聴くこともなくそっと棚の奥に並べられそのままになってしまった。

年齢を重ねブラック・ミュージックを聴くようになってから再びタワーを聴くと、実にすんなりとその音楽を受け入れる事ができた。その理由は至ってシンプルで、彼らはロック・バンドではなく、ファンク・バンドだったからである。まだハタチそこそこでロックしか聴いておらず、ロックこそが最高だと思っていた若造には、ドラムやベースがただバンドの土台の役割しか果たさないものとしか思っていなかった青二才には、彼らの叩き出すファンクが、いやそもそも「グルーヴ」と言うものが理解できなかったのである。

アフリカン・アメリカンのファンクのルーズでおおらかなグルーヴとは違い、彼ら白人グループのそれは、同じく白人のアヴェレージ・ホワイト・バンド(こちらはスコティッシュのグループ)同様、カッチリとして小気味の良いグルーヴが特徴だ。もっとも「白人」と一言で言ってもそこはL.A、ベイエリアのグループ。メンバーのファミリーネー厶を見れば多様な人種のグループである事がわかるし、ヴォーカルは入れ代わりあれど一貫してアフリカン・アメリカンで、鍵盤はブラック・ジャズ・レコードからソロ作もリリースしている名手チェスター・トンプソンが長く務めていた。

前述の最新ライヴ音源もよかったが、彼らが色々な意味で最もファンキーだったのは72年の「バンプ・シティ」から75年の「イン・ザ・スロット」あたりであることに異論は少ないと思う。殊にフランシス・“ロッコ”・プレスティアのベースとデヴィッド・ガリバルディのドラムが生み出す複雑なグルーヴは凄まじい。(一時デヴィッド不在時あり)この二人、揃って手数がやたらと多いのだ。普通のリズム・セクションはどちらかの音が多い時は片方が一歩下がって、その隙間を埋める程度にバランスを取ることで心地よいグルーヴを成立させるのだが、両者とも遠慮知らずで、デヴィッドがアクセントひっくり返してみたりするし、ロッコも狂ったように16分音符をマシンガンのように弾きまくる。

このマシンガンのような、というのがキモで、同時期同じく複雑なグルーヴをかましていたヘッドハンターズ(こちらはその出自からしてタワーに比べかなりジャズ寄りで、なおかつ黒人であるが)でマイク・クラークとのコンビでのポール・ジャクソンの手数こそ多いが、バズーカのような重いベースと比較するのなかなか興味深いし、ファンクというものが短期間でいかに発展、深化してきたのかもわかる。

これだけベースとドラムが激しく音のぶつけ合いをしているのに、ロックバンド、例えばクリームのジンジャー・ベイカーとジャック・ブルース(とクラプトン)のような、一体感なんて関係ねーぜと言わんばかりに音の殴り合いで相手を打ち負かそうとする事で生まれるバンド崩壊寸前の緊張感でなく(それはそれでかっこいい)、横ノリのグルーヴを生み出しているのだから恐れ入る。

「what is hip?」「squib cakes」と言った王道ファンクから「this time it's real」等のポップ、「you're still a young man」「time will tell」みたいなバラードまで様々なスタイルを聴かせてくれる素晴らしいバンド。そんなバンドの屋台骨を支えつつ、主役でもあった豪快かつ緻密なファンクサウンドを表現するロッコ。

ロッコの遺作として発表されたライヴ盤が出ると聞き、何かを捧げたいと思い過ごしていたら、ポール・ジャクソンの訃報も届いた。

Rest in peace

Francis Rocco Prestia

and

Paul Jackson
  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい