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不思議なラブソング

まっすぐに届いた星野源の愛

≪“好き”を持った日々を ありのままで
文字にできるなら 気が済むのにな≫

自身3年ぶりとなるドラマ主題歌としてリリースされた曲がある。
TBSドラマ「着飾る恋には理由があって」(火曜22時~)
しかも、初回放送までタイトルすら明かされないというオプション付きだったから、自然と私の期待値も上がっていた。焦らされれば焦らされるほど…というやつだ。

そしてラブソング。
ラブソングと聞くと「愛してる」など、ちょっとこそばゆくなるような歌詞だったり、男女の関係に焦点を当てて、割とストレートな言葉で歌ってあるイメージがあり、どちらかというと私は苦手なジャンルだった。


ちょうど1年前の今頃、”コロナ禍で生まれたラブソング”として配信リリースされた「折り合い」という曲がある。お笑いコンビ・バナナマンの日村さんのエピソードをインスパイアして出来たというこの曲の歌詞には《他人のようで違う 2人の折り合いを》という部分がある。
決して男女の関係性だけではない、2人のことを「他人」と表現し、現実感溢れる歌詞と《愛してるよ君を》というストレートに出された言葉。血の繋がりはないけれど、「ただの他人」とも違う2人を、見事に描いてある、確かなラブソングだった。

ラブソングとは、こういうものでなくてはならないということなんてないのに、「折り合い」を聞いた時、自分の中で随分と凝り固まったイメージをつくっていたなと気づいた。



ドラマの初回放送日、エンドロールに出てきた表示は「主題歌 不思議/星野源」

正直、意味が分からなかった。
不思議という言葉がラブソングと結びつくだけの知識も経験も持ち合わせていなかったからだ。

それから1週間。フルで配信リリースされた「不思議」という曲の歌詞を、視覚と聴覚をフルに使って、自分に取り込んだ。

《幼い頃の記憶 今夜食べたいもの 何もかもが違う》
この歌詞は星野源にしか書けないな、と思った。2人の価値観の形成の仕方が違うことを、これだけで表しているからだ。
そこからの、
《なのになぜ側に居たいの 他人だけにあるもの》
どうして育ちも考え方も違う2人が出会い、「側にいたい」と思えるのか?本当に不思議だなあ。
あぁそうか、これが「不思議」だ!とここの歌詞でストンと落ちた。

不思議[名・形容動詞]どうしてなのか、普通では考えも想像もできないこと。説明のつかないこと。(goo国語辞書より)

親子間ではない、「他人」だからこそ感じる言葉にできない気持ち。なんて歌詞を書くんだ、と本当に驚いた。



《希望あふれた》のあと《この檻の中で》
《きらきらはしゃぐ》のあと《この地獄の中で》
これまた私の固定観念になるかもしれないが、ラブソングに無縁の言葉が並んでいる。しかし、それをあえて盛り込み、しっかりとラブソングの一部として成立しているのを見ると、これこそ星野源の歌だと、妙に納得してしまう。

明と暗、陰と陽、表と裏が物事には必ずあり、星野源はそのことを常に話しているし、歌ってきた。曲の中でそれを並べて出すと、相乗効果というかなんというか、言葉の力が増す気がするのだ。一見マイナスに捉えられがちな言葉が、このラブソングを引き立てている、そう思った。


ピアノで挑戦し、白目剥きながら感覚で探したというメロディーも、どこか懐かしくて温かくて…歌声の優しさとファルセットも合わさり、最高に心地いい曲の一部となっている。


「君」と「貴方」が「他人」として始まる2人。
それぞれ《“好き”を持った日々を》過ごすことで関係性が深まり、いつか振り返ったその時に《君想った日々》となる。

誰かを想うことの温かさと切なさの、両方が詰まった曲。初めて聴き終わったとき、家族が、友人が、すべてが愛おしくなり抱きしめたくなった。今すぐみんなに会いたくなった。

そして、自分の中にも、まだ表に出せない感情があるのだということを思い出させてくれた。私と同じように思った人もいるだろう。受け取る側の数だけ、歌にはストーリーがあるのだなあと改めて思うのと同時に、そんな幅のあるこの曲をもっと愛でたい、そんな気持ちにもなった。



「愛とか恋というものに真正面から向き合った」結果、「不思議」にたどり着いたというのだから、ぐうの音も出ない。さすが星野源、何度も言う。
時間をかけて創られた贈り物、大切に大切に聴こう。
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