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魅せられし変遷

チバユウスケの歌詞

夢なんて見ないで 悲しくなるだけだから
「ヴェルヴェット」THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

夢をみようぜBABY 世界中どこでも 空は青いはず きっとうまくゆくさ
「ALRIGHT」The Birthday



世界はくだらないから ぶっとんでいたいのさ
「GIRL FRIEND」THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

忘れないで 君が思うほど この世界は それほど腐ってはない
「FLOWER」The Birthday



振り返らず 錆びた風は続くだろう
「ダニー・ゴー」THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

振り返ったっていい 説明はいらない
「BABY YOU CAN」The Birthday



この変化を見て「美しい」と感じるロックファンは私だけではないだろう。
THEE MICHELLE GUN ELEPHANTはチバユウスケが大学在学中、1988年に活動をスタートしチバユウスケ以外のメンバーの交代を経て1994年にアベフトシ、ウエノコウジ、クハラカズユキのメンバーが揃い、2003年に解散。The Birthdayはチバユウスケ、イマイアキノブ、ヒライハルキ、クハラカズユキのメンバーで2005年から活動をスタート。ギターがイマイアキノブからフジイケンジに変わったものの2021年も鋭意推進中だ。

作風が変化した。どうもそんな簡単な言葉では片付けられない、聴き手の価値観に訴えるものがこの変遷にはある。なぜこの変遷が、ポリシー無き曲線でもなければ一貫性のないライトなものでもない事が私達にわかるのか。それは彼のアーティストとしての姿勢が関係していそうだ。

自分がやりたい事をやるか。相手に求められるものをするか。ビジネスの鉄則は後者である。ニーズを探し、お客さんが欲しい物をつくる。お客さんが求めている声掛けを考え、必要としている言葉を伝える。お客さんが多いという事は、それほど求められているという事でもある。自分の我を出すのではなく、相手主体で動くのがビジネスだ。

ビジネスタイプの人間は傾向として(あくまで傾向)コミュニケーションが円滑に行え、安定した利益をつかみやすい。相手の事を考えて行動をしているので、その対価を得やすいのだ。

では、この資本主義の中で自分がやりたい事をやるということはどのような生き方といえば、それは表現者であるという事だ。
ミュージシャンに限らず、作家かもしれない。映画監督かもしれない。スポーツ選手も自分のパフォーマンスを表現しているという意味では表現者だ。

表現者タイプの人間は利益がハイリスクハイリターンであり、コミュニケーションは不器用な所があるが、自分の世界観や信念を大切にする傾向がある。

チバユウスケは圧倒的に後者の人間である。生まれ持っての芸術肌だ。自分がやりたい事をやることが職業になり得る世界でも、そこには売れる曲を書く。売れる映画を作るという事がプロの世界ではついて回ると想像できる。しかし、チバユウスケは出発点が「売れる」ではなく「自分のやりたいようにやる」だった。だから彼の言葉は深く刺さるのである。

THEE MICHELLE GUN ELEPHANTはその名を大衆に轟かせたが、暗喩が多用される歌詞は万人受けするものではない。真剣に耳を傾けるものだけに伝わればいいという気もする。聴き手が求める言葉ではなく自分が発したい言葉を発する。聴き手は多くの場合、友達でもなければ家族でもない。しかし彼の言葉に嘘はないと「信じる」事ができる。

加えてチバユウスケの変遷が心を動かす理由に、彼のプロフェッショナリズムがある。酒とタバコが似合う男にプロフェッショナリズムとは違和感のある言い回しかもしれないが、間違いなく彼は一つの道を追求し、誰もができるものではない到達に至っている。

その男から発せられる優しい言葉は、軽薄な甘さや考えなしのいい加減なものではなく、厳しさを根底に持ち、戦ってきた人間の優しさだ。

特筆すべきプロフェッショナリズムとしてチバユウスケは自分で自分を動機づけできる強さがあるように思う。ロックは大概にしてカウンターカルチャーであり反発だ。しかしチバユウスケは自身の内面から湧いてくる「感情」を掘り下げる。リアクションではなく、アクション。何もないところから自分の内面を掘る作業は静寂から生まれるが、時にチバユウスケの言葉に触れ瞑想のような感覚になるのはそういう経緯があるからかもしれない。

長い人生変化する方が自然と言えば自然だが、厳しさを通り抜けて得た寛容、経験から生まれた余裕。そして何よりチバユウスケが生み出してきた音と言葉に彼自身が救われ心を暖めてきたのではないだろうか。その暖かさがネガティブな言葉をポジティブな言葉に変えた。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTと The Birthdayの楽曲を聴いて心が救われたリスナーと同じように。
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