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サカナクションの海の中

NF OFFLINE FROM LIVING ROOM(5月23日)

一郎さんの優しさは、時に恐怖を感じる。
深く潜ると飲み込まれてしまいそうで、それ以上触れることを躊躇させるのだ。


『LIVING ROOM』と名付けれたこの配信は、文字通り、山口一郎の自宅からの配信だった。
しかし、ただの自宅からの配信ではない。
それはチームサカナクションの、まさに、さすがとしか言いようのない1時間だった。
想像以上の深さで、映像と音で、サカナクションの世界に連れて行かれた。



生活のワンシーンから、マイクの前へ。
Instagramを触りながら、1人ギターを持ってライヴは始まる。

‘君を連れて行くよ’と挨拶代わりに「新宝島」
そのまま、まったりとした時間が流れ
シンプルな歌とギターで「セプテンバー」「忘れられないの」と数曲演奏される。

空気が変わったのは「フクロウ」だった。
それまでのゆったりまったりとした雰囲気から、一気に緊張感のある空間へ。
黒が包み込み一気に引き込まれる。
光と影、そして音だけで、もの凄い立体感。

そのまま、水の中へ潜り潜り「ネプトゥーヌス」
徐々に徐々に連れて行かれる深い海の中。
いつの間にか、気がつけば、深く潜っているのだった。
躊躇する間はなかった。

‘思い出した ここは東京’と「ユリイカ」
私が潜ったのはサカナクションという名の海。安心しよう、ここは東京、息は・・・できる。

「茶柱」「ナイロンの糸」と丁寧に言葉を紡ぐ。
映像とリビングルームはまるで一つの物語のよう。

深海の暗闇から聴こえはじめる「シーラカンスと僕」
ベイト・ボールの中歌う、シーラカンスか僕か分からぬその姿は‘どうか僕が僕のままあり続けられますように’という言葉に、説得力を増す。


この空間のピークとクライマックスが近づくのを一気に感じた「白波トップウォーター」
街と海と波と砂とが交差し、1枚の絵を行ったり来たりする。
そこにサカナクションの4人が映し出され、遠くにいるけど近くにいる一体感。
こんなにキレイな‘スパンコール’を聴いたのは、はじめて。気持ちいい。


はじまりの場所に戻り、もう一度ギターを持ち
‘楽しんでいただけましたでしょうか’と笑顔を見せる一郎さん。
‘リアルのライヴに勝る物はない。だけど、オンラインライヴの感動はリアルのライブの感動とは種類が違うもの’そんな言葉に私は深く、頷く。
 昨年の『SAKANAQUARIUM 光 ONLINE』を見たとき、オンラインライヴの新しい可能性を感じた、というよりは、サカナクションの凄さをまじまじと感じた。
こんなこと、サカナクションにしかできない。
今回の『LIVING ROOM』でも同じように思う。一郎さんのリビングルームと、配信を見ている各々のリビングルームの間を仲介する映像。その力で、深い海の底まで連れて行かれた。
チームサカナクションは唯一無二の存在だ。


最後の曲、「グッドバイ」でバイバイ
歌詞を間違え、少しはにかむ姿に和み、張り詰めた緊張感がスルリスルリと解けていく。
帰ってきた。
ただいま、日常。


日常の中の非日常。
あっという間の1時間だった。
まったりとした時間、空間から、しっかりと非日常空間まで連れて行ってくれる。
そして、ちゃんと帰してくれる。

YouTubeやSNSで気軽にアーティストの作品に触れられる世界。気軽に手に入る音楽。
それでも、私は、お金を払ってエンターテイメントを楽しむことを大切にしたい。
自分の〝働く〟という日常の意味の一つにするために。


〝海の中〟と〝東京〟
どちらが息がしやすいか、と問われれば即答できない。
それでも、今日はサカナクションの世界の中で深く息をした。
明日からも日常を生きていくために、とても大切な1時間だった。
ありがとう。
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