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大切なメロディーはいつもここに

L'Arc~en~Ciel・30thライブに寄せて

「有観客ライブ」とはなかなか面白い言葉だと思う。そもそもライブとは、アーティストがその場に集まった観客たちの目の前で行うものだからだ。では「有観客ライブ」の対義語は何か。もちろん「無観客ライブ」である。そんな聞きなれないはずの言葉が世の中に定着してかれこれ1年は経っただろうか。先日行われたL'Arc~en~Cielのライブは「有観客ライブ」であった。

快晴の幕張。じりじりと照りつける陽射しはまるで真夏のもののようだった。汗ばむ陽気とは裏腹に、ひんやりとした会場内はうっすらとスモークが焚かれ、ライブが始まる前から既にそこが外界とは隔絶された特別な空間であることを物語っていた。ちらほらと人が増え、座席が埋まってゆく。徐々にサイリウムの明かりが増えてゆく。少しづつライブのスタートに向けて進んでゆく時間。その高揚感はまるでゆっくりと風船を膨らませているような心持ちだった。ライブ開催発表の日から膨らませていた風船は、パチンと割れる時を待っている。訪れる暗闇。流れる音楽。一斉に立ち上がる観客たち。うっすらとステージの上に人影が見え、ボーカルの歌声が聴こえる。風船は割れた。

ステージ上のL'Arc~en~Cielは気高く、そして輝いていた。ああ、L'Arc~en~Cielに会いに来たんだな、と思った。当たり前のことだが。腹に響く爆音と無数の光。ずっとずっと、焦がれていた歌が今目の前にある。その歌の美しさに頭をぶん殴られて、脳天に火花を散らされるような衝撃を食らって、身体の細胞から何からぜんぶ作り替えられてくみたいな、そういう錯覚に有り得ないくらいの多幸感を得て、放心しながらボロボロ泣いた。そして、そんな訳の分からないぐちゃぐちゃの感情を得られることが生きがいであると改めて実感した。

L'Arc~en~Cielの曲は人の心に住みついて離れない。あんまり美しいから、忘れられない。そのメロディーが、歌詞が美しくて、狂わされる。狂わされることにすら喜びを感じるほどに、愛してしまった。


「ばらばらにちらばる花びら 雫は紅
欠けた月よ廻れ 永遠の恋をうつし」
(L'Arc~en~Ciel/『花葬』より)


難解な言葉の組み合わせではない。ありふれた言葉の組み合わせで、この上なく美しい歌詞。L'Arc~en~Cielの曲は非日常ばかりだと思う。日常に寄り添って、「さあ、この世界で頑張りな!」と背中を押してくれるというよりは、日常に嫌気が差した時、不意に逃げ込める美しい世界だ。自分の日常が、世界がどんなにままならなくて、つまらなくて、苦しいものであろうとも、いつだって美しいL'Arc~en~Cielの曲はそこにあった。飛び込むように逃げるように、曲を聴けば一瞬で私はL'Arc~en~Cielの世界に飛んでゆけた。その壮大な世界に浸れば、自分の日常のちっぽけさに笑いが零れ、自分なりに自分の世界を頑張って生きてみようと感じられるものだった。

ライブは大盛況で幕を閉じた。大盛況、と言うと少し語弊がある。今回のライブは社会情勢の影響で、観客は一切声を出せなかったのだ。それでも、会場の熱気と鳴り止まない拍手で大盛況ということは十二分に分かった。これをずっと求めていたのだ、と思った。胸がつまってまた涙が出た。漠然と生きてて良かったな、と実感した。L'Arc~en~Cielの美しい音楽に支配された時間はあっという間に過ぎてしまった。会場を出ればまた日常が始まる。しかし、何故だかそんなつまらないはずの日常をいつもより愛おしく思えた。何の変哲もない日々を大切にしたくなった。きっと日常を生きていれば、ライブと言う日常と地続きのL'Arc~en~Cielの世界にこうして浸ることが出来ると感じられたからだ。

感染症の影響で、社会情勢が不安定な中でも、最大限の対策と工夫の末、こうして有観客ライブを開催してくれたことに、L'Arc~en~Cielとその全ての関係者の方々に心からのありがとうを伝えたい。こうしてライブを開催してくれることに、私は生かされている。30周年、本当におめでとう。月並みな言葉しか出てこないけれど、出逢えて良かった。愛しています。

L'Arc~en~Cielがリリースした新曲のタイトルは『ミライ』と言う。


「ねぇずっと響いてる 大切なメロディー
血のように僕らの身体を巡っている
見えなくても 触れなくても ここにある」
(L'Arc~en~Ciel/『ミライ』より)


大切な、大好きな、愛するL'Arc~en~Cielの音楽を抱き締めていれば、きっと望む未来は訪れる。そっと瞼を閉じて想像する。肩がぶつかりそうなほどたくさんの人がみっちり入ったライブ会場、あがる大きな歓声、響く観客たちの歌声。無数の笑顔。今はそれが見えなくとも。ちゃんとその日は訪れる。

ありがとうを伝えたい。叫びたい。それが叶うまで、L'Arc~en~Cielの世界とともに日常を生きよう。いつものように。日常を飛び出し、声をあげてL'Arc~en~Cielの世界に飛び込める「ミライ」をずっと待っている。
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