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Pale Blue色の星で恋をする

晴れた日の朝、米津玄師の『Pale Blue』を聴きながら

 新曲『Pale Blue』が配信されたその日の朝は、雲ひとつない晴れた空だった。淡い青色の空はどこまでも遠くに広がり、見上げていると吸い込まれそうになる。少し冷たい澄んだ空気を吸いながら、青空の下で『Pale Blue』を聴いた。



“ずっと 恋をしていた”
“これでさよなら あなたのことが 何よりも大切でした”
“張り裂けるほどの痛みを叫びたいのに”
“わたしあなたに恋をした 花束と一緒に”
“今更言いたいことなんて 一つもないのに”
“わたしあなたに恋をした 苦しさと一緒に”
(Pale Blueより)


米津さんの少し掠れるような淡い歌声が、美しいピアノの音と共に、Pale Blue色の空に溶けていくようだ。繊細に描かれた恋心に切なさが込み上げてきて、ふっと泣きそうになる。
なのにどうしてだろう。苦しいのに、爽やかで穏やかな気持ちにもなれる。突き抜けるように青く澄み切った空のように、この心を、濁りのない清らかな青色に染めてくれるようだ。



“友達にすら 戻れないから わたし空を見ていました
 最後くらいまた春めくような 綺麗なさよならしましょう”
“晴れた日の朝 あなたのことが どこまでも大切でした
 言えないでいた言葉交わし合った 笑えるくらい穏やかに”
(Pale Blueより)


こんなふうに、恋をしていると、苦しいのに穏やかで、切ないのにあたたかくて、泣きたいのに微笑んで、怒りたいのに優しい気持ちになる。嫌いになりたいのに大好きで、離れたいのに傍にいたくて、別れたいのに抱きしめて欲しくて、忘れたいのにずっと見つめていたい。


“こんな つまらない映画などもうおしまい なのに
 エンドロールの途中で悲しくなった
 ねえ この思いは何”
“こんな チグハグな舞台はもう締めたい なのに
 エピローグの台詞が言えなくなった
 ねえ あなたを見つめていた”
(Pale Blueより)


自分でもうまくコントロールすることのできないアンバランスな感情を、恋というのかもしれない。米津さんはこの気持ちを、丁寧に丁寧に綴っている。どうしてこんなにも、美しい小説を読んでいるかのような言葉が出てくるのだろう。どうしてこんなふうに、恋する心の機微を丁寧に描くことができるのだろう。
『Pale Blue』を聴くたびに、米津さんの描く美しい世界に引き込まれていく。繊細で清らかで、愛を知っていて、この空のように曇りのない澄んだ心を持っている米津さんに、どんどん惹かれていく。
「誠実に生きたい」(HIGHSNOBIETY JAPAN ISSUE06より)と言っていたように、その想いが音楽にも溢れていて、優しくて穏やかな気持ちになれる。




『Pale Blue』は、ドラマ『リコカツ』の主題歌だ。離婚から始まる恋の物語で、この曲は、そのようなコンセプトのもとに作られた。主人公二人が、離れてから相手を見つめた時、いかにその人が大切な存在で、愛すべき存在だったかを知るが、互いの気持ちはすれ違っていくばかりだ。
いつも最後のシーンで流れる『PaleBlue』が、切なく響いてくる。

このドラマが始まったくらいに、私は、「Pale blue dot(淡く青い点)」という言葉を知った。

30年前、宇宙にいるボイジャー1号が64億km彼方の地球をカメラで撮影した。そこに写る地球は、針で描いたような小さな点でしかなかったそうだ。写真のなかのこの小さな地球は、淡い青色に見えることから、「Pale blue dot」と名付けられた。

宇宙から見た地球は、今にも消えそうな存在だった。そんな地球で生きている私たちは、さらに小さな生き物だ。
そんな星で生きる私たちは、誰かと出会い、恋をし、愛し合い、争い、別れ、再び誰かと巡り合い、いつかは永遠の別れが訪れる。宇宙から見たら、とても短いくて儚い命を懸命に生きているのだ。

こんなふうに、宇宙から地球を、人間を見つめたように、離れたところから大切な人を見つめることで、その人が自分にとってかけがえのない愛おしい存在であったことに、気づくことができるのかもしれない。


米津さんがこの「Pale blue dot」のエピソードを知っているかはわからない。けれども、米津さんの作った『Pale Blue』は、そんな宇宙にまで想いを馳せることができるくらいに、壮大なラブソングだった。


“あなたの腕 その胸の中
 強く引き合う引力で
 有り触れていたい 淡く青いメロディ”(Pale Blueより)


この歌詞を聴いていると、宇宙にいるような感覚になる。米津さんは、宇宙から地球を撮影したような、ロマンチストな音楽家だ。そして、大切な人に気づかせてくれた。



晴れた日の朝、『Pale Blue』を聴きながら、この空の先にある、遥か彼方の宇宙にまで想いを馳せる。この曲が、私がいなくなったあとの、何百年何千年、何億年も先に残るとして。生まれ変わったらもう一度、このラブソングを聴きたい。もう一度、米津玄師という音楽家に出逢い、もう一度、大切な人に恋をしたい。
そんな未来が来ることを、このPale Blue色の星から祈っている。


“どれだけ生まれ変わろうとも 意味がないくらい
 どこか導かれるように あなたと出会いたい”(Pale Blueより)


ずっとずっとずっとずっとずっと、あなたに恋をしています。




※「Pale blue dot」は、カール・セーガン著『惑星へ』を参考
※ “”は米津玄師『Pale Blue』の歌詞より引用
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