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画面越しに何度でも、

GARNET CROW全曲サブスク解禁に寄せて

私が彼らと出会ったのは、テレビの画面越しだった。
夢中でCDを集めて、CDプレーヤーのモニターに表示されるトラック数を見つめながら彼らの音楽に熱中した。
聴くだけでは満足できなくて、ライブDVDを買って、PCのモニターを通して彼らの姿を食い入るように観ていた。
貯金で買ったWALKMAN、その小さなディスプレイ画面にはいつも彼らの名前が表示されていた。

私の中にある彼らーーGARNET CROWとの思い出は、どれも画面越しだった。


GARNET CROWに夢中になり始めたのは中学生の頃。
元々何となく知っていて何度も曲を聴いたことがあったけれど、少し変わった曲を歌うグループーーそのくらいの印象だった。
ところが、ある曲で恋に落ちたように好きになった。初めて特定のアーティストを好きになった瞬間だった。
お小遣いを少しずつ貯めて少しずつアルバムを集めては、CDプレーヤーの画面とにらめっこして何度も何度も繰り返し聴いた。初めてライブDVDを購入した時は、ずっとPCの画面を見ていた記憶がある。
少し大人になって購入したWALKMANには、一番最初にGARNET CROWの楽曲を入れた。GARNET CROWを聴きながら街を歩けることが嬉しくて堪らなかった。
いつかきっと、次は絶対ライブに行くんだと、そう思っていた。

2013年6月、GARNET CROWは解散した。
私は最後のライブに行くことはできなかった。


GARNET CROWの楽曲には、ひとつの魔法のような不思議な魅力がある。
ポップな曲もあれば民俗的な曲もあり、アッパーな曲もあればスローテンポな曲もある。
日常のワンシーンを切り取ったような歌詞やストーリー調の歌詞もあれば、感情のような目に見えないものを歌った歌詞だってある。
淡い色がグラデーションのように揺らめいたり、黒と赤の鮮烈な色彩がくっきりと浮かび上がったり。現実のようで幻想、まるで異世界。

再生機器の画面は旅する列車の車窓のように、そんな少し違った世界のいろんな景色を見せてくれる。そして、少し違った世界の『何か』が私の日常のどこかで『ぴたり』と嵌まる時、不思議なことが起こる。
機械の中で流れているはずの音楽がこちら側に溶け込んでくるのだ。

澄んだ朝を迎えた時は「クリスタル・ゲージ」
オレンジ色の夕焼けを眺めているときは「Nora」
弾む心を連れて出掛ける時は「live」
少し落ち込んだ帰り道は「in little time」
恋をして相手を想っている時は「HAPPY DAYS?」
失恋した時には「Crier Girl & Crier Boy 〜ice cold sky〜」

中村由利さんの低く心地よい歌声が身体を包み、
AZUKI七さんのミステリアスな歌詞が私を物語へ誘い、
岡本仁志さんのギター、古井弘人さんのキーボードが物語の輪郭を形作る。

気がつけば私は彼らのミュージックビデオのワンシーンに迷い込んでいる。寄り添うように音楽は流れ、画面越しでしか会ったことのない彼らと同じ時間を共有しているように錯覚する。その錯覚は堪らなく心地良い。

ライブに行けなかったことを悲しむ時はある。
中村さんの歌声に震え、一緒に踊り、岡本さんのソロコーナーを楽しんで、最後に手が痛くなるほどの拍手を送りたかった。
けれど今は、いろいろな機器の画面越しにGARNET CROWの音楽と私の日常が重なる瞬間が嬉しくて、とても幸せだと思っている。


2021年6月30日、朝4時にふと目覚めた。
二度寝しようとしてスマホのホーム画面をチェックして、表示されたTwitterの通知に飛び起きた。布団が数センチ宙を舞った。

「GARNET CROW全曲サブスクリプション解禁」

夢かと思った。夢じゃなかった。
勿論CDは持っているし、どの曲も聴いているけれど。再生できるプラットフォームが増えたことはとても嬉しい。
GARNET CROWと同じ時間を過ごせる画面がひとつ増えたのだから。
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