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私の人生とロッキンと

私の今をつくっている音楽と、今伝えたいこと。

久しぶりに、気を張っていないと崩れそうだと思った。
2021年7月7日、正午を丁度まわった頃。いつも心弾むお知らせが舞い込むJフェスアプリから、ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021開催中止のお知らせ。
通知が来てからのアレコレは、正直あんまり覚えていない。通知前オーブンに入れた食パンが無くなっていたから、多分食べたんだと思う。その後は各所から届くキャンセル・返金メールを眺めて、ああ、ロッキンのために断っていた諸々の用事、参加できちゃうなあ、なんて考えていた。

冒頭、「久しぶり」という表現を使ったが、私にはかつて確かに「気を張っていないと崩れそう」な時期があった。高校1年の冬、諸々疲れていて、外で笑顔を作り続けていたら、家で笑う元気がなかった。まあ当時は、自分が疲れて笑えていないことにさえ、気が付けなかったのだけれど。
そんな時に観た紅白歌合戦、エレファントカシマシ『今宵の月のように』。これも今思えばだけれど、大袈裟に聞こえるかもだけれど、あの時、あの瞬間から、私の人生が動き出したような気がした。
それからは怒涛だった。父が自分のCDラックから徐に出してきてくれたエレカシの古いアルバム。チケットは取れなかったからグッズと写真展の為だけに赴いたSSA。高校生には高いなあと思いながらそれでも買った新アルバム。初めて生演奏を聴いた野音外聴き。ライブTシャツを学校に着て行ってそのまま参加したZepp。こんなにきれいな音楽を創る人たちがいるなら、こんなに格好良い大人たちがいるなら、そして何より、この音楽を良いと思って、聴いて共感して、あるいは背中を押されて、日々頑張っている人たちがいるなら、この世界も、この国も、捨てたもんじゃない。エレカシを聴きながら登校していると、毎日の満員電車の景色が全く違って見えた。エレカシに出会って、初めて人間を愛せた気がして、人間をもっと知ろうと思って、それで私は医者になることに決めた。

エレカシのお陰で知ることが出来た様々な音楽たちは、受験勉強がしんどい時も、受験当日も、大学に入学したはいいけれどそれどころではない世界情勢の中でも、私の生きる糧であったことは言うまでもない。
大学2年目、大学生になったら行きたいと思っていた、念願のROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021開催のニュース。医学生だから、ダメなんだろうな、自覚が足りないんだろうな、我儘なんだろうな。この2年、日々戦っている医者を沢山見てきた。でも、戦っているのは医者だけじゃなくて。HPで渋谷さんのメッセージを読んで、胸を打たれてそれで、ロッキンに、大袈裟でなく、命を預けることにした。色々覚悟していた。友達を誘う事は出来なかったし、それどころか話題に出すことさえ躊躇われた。抽選結果が出るまでは、当たっちゃったらどうしようと、そればかり考えていた。だけど、当選通知が来て、電車の中で何気なく聴いたKing Gnu『千両役者』にほろっと涙がこぼれて、ああ、私ロッキン行きたかったんだなあと、その時初めて気づいて、そんな自分にびっくりした。

ロッキン中止のニュースは、軽く議論を呼んでいるみたい。色んな人の意見を見聞きするけれど、そりゃあ私だって数十分おきに感情も思考回路もコロコロ変わって、自分の将来が怖くなったり、ロッキンを無かった事にしないでくれるミュージシャン達に救われたり、それが叩かれていることに哀しくなったり、未だ情緒不安定だけど。

でも今確かに思うのは、抽選に当たってから中止が分かるまでのこの数週間は、本当に楽しかったということ。バスを予約したり、グッズを悩んだり、熱中症対策を考えたり、ユニゾン好きの旧友と久々に連絡取ってみたり、ライブの予習をすべくTSUTAYAに通い詰めたり。今この文章を書きながら観ているのはSUPER BEAVERのライブ映像だけど、彼らと出会えたのも、ロッキンに彼らが出る予定だったから。このたった数週間で、良い音楽に沢山沢山出会えた。繰り返しになるけど、本当に楽しかった。
だから私は、ロッキンを開催すべく尽力してくださった人たちに、今一度ありがとうと言いたい。人間、何が人生を変えるきっかけになるかなんて分からないから、それが不要不急かどうかは、それを実際にやってみないと分からないのだろうと思う。私にとってROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021は紛れもなく生きる意味になっていたし、それに向け準備した期間は、音楽の力を改めて感じられた美しい時間だった。私の人生においては必要な時間だったと、今でも思ってる。

音楽を届ける人も医療を提供する人も、人間を愛する事、人生に寄り添う事を仕事にするという点において、目指すところは同じはずだ、きっと。
私はミュージシャン達の前で胸を張れるような医者を目指すよ。だから、いつか絶対に、次こそは、胸を張って、ロッキンに行きたい。
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