4729 件掲載中
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

THE BLUE HEARTSをはじめて聴いた日

僕は、生きるということに気がついた

あれはたぶん、小学校2年生、
夏休みの前くらい。

なんの集まりかは忘れてしまったけれど
何かの集まりで僕は、校庭にいた。

先生の永遠に続きそうな話を、炎天下の中で聞き
みんなアイスクリームみたいに溶けそうになっていた。

なんとかみんなが溶けてしまう前に
先生の話が終わり司会をしていた
生徒会長が朝礼台に上がる。

「〇〇先生、ありがとうございました。
 本日のお話は以上です。
 生徒の皆さんは・・」

そこまで言って止まってしまった。
緊張してるように見えた。
生徒会長は少し下を向いて、咳をして、もう一度

「生徒の皆さんは・・」

また止まってしまった。

いつもハキハキ喋る生徒会長だが、
今日は様子がおかしい。先生も異変に気が付き
声をかけようと朝礼台に歩み寄った時だった。

「生徒の皆さんは・・この歌を聴いて下さい!」
早口でそう言ったと思ったら、突然歌いだした。


〃ドブネズミみたいに美しくなりたい
 写真には写らない美しさがあるから〃


みんな何が起きているのかよく分からず、
ぼーっと朝礼台を見てたと思う。

私は、その歌がブルーハーツの曲ということも知らなかったし、
目の前で起きていることが全くよく分からなかった。

歩み寄ろうとした、先生も少しの間呆然としていたけれど
すぐにあたりを見て、他の先生と何かを確認し、
朝礼台へ勢いよくのぼり
生徒会長の肩を捕まえようとした。

しかし、生徒会長はそれを振り払って


〃リンダ リンダ〃


と歌いながら朝礼台を飛び降りた。

身体中を使って飛んだり跳ねたりしながら
先生から逃げ回り、生徒会長は歌い続ける。


〃決して負けない強い力を僕は一つだけ持つ〃


勉強でもスポーツでもいつも一番。
生徒からも先生からも好かれている。
言わば模範生徒の生徒会長が、
何かとんでもないことをしている。

子供ながらに、良い事か悪い事で言うと
絶対アカンやつやと思った。

生徒たちはみんな、不思議とザワザワとはせず、
生徒会長と先生の攻防をただただ見守っていた。

先生側は一人また一人、生徒会長を捕まえるべく加勢して
すぐに3対1くらいになっていた。

生徒会長は走り回ったり飛び跳ねたりしながら
実によく頑張った。
彼は3人の大人から逃げ回り、歌いきったのだ。

歌いきったところで逃げるのをやめ、
大人しく先生に、捕まった。

きっと凄く怒られる。
きっと生徒会長はクビになる。
きっと生徒会長の弟である僕は、
みんなからバカにされる。

色んなことが頭の中で鳴っていた。

でも、いつも真面目な兄が
あんなに嬉しそうに歌う姿が
僕も嬉しく思えてきた。

今でも上手くは言えないけど、
たぶん、僕はあの日
生きるということに気がついたんだと思う。

ドブネズミが美しいのは、
きっと、生きているからだ。
  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい