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miletのライヴは「愛」だった

milet 1st tour『SEVENTH HEAVEN』から受け取った愛と希望

 「三度目の正直」って言葉は本当なんだな。そう思わせてくれたmiletの1st tour 『SEVENTH HEAVEN』が、2021年7月22日に東京ガーデンシアターで行われた最終公演で幕を閉じた。miletさんは、2020年3月から4月にかけて開催予定だったツアー『Green Lights』と、2020年11月から12月にかけて開催予定だったツアー『eyes』を2回ともコロナ禍により断念せざるを得なかった。それが今回、ついに、今年の6月から7月にかけて、ツアー『SEVENTH HEAVEN』として完遂されたのである。

 私は、miletさんのツアー『SEVENTH HEAVEN』初日の神奈川公演と、ツアーファイナルの東京公演を観に行った。6月5日に開催されてから2ヶ月近く経ち、私の中で熟成している神奈川公演の感動と、終演後まだ数日と間もない東京公演のフレッシュな感動が、まるでマーブル模様のように混じり合っている。その余韻に浸りながら、私はこの文章を書いている。

 miletさんのライヴは、毎回ベストを更新してくる。おなじみの曲たちでも、過去のライヴからアレンジを変えてくるので、毎回新鮮な驚きと感動が湧き上がってくる。miletさんはリズム感がとても素晴らしく、音に乗りながら、グルーヴやエモーションを身体の動きで表現するのが非常に上手い。miletさんは、身体の動きによっても音楽を視覚的に表現してくれるから、ライヴ中も常に目が離せないのだ。miletさんは小柄なイメージがあるが、ステージではそれを全く感じさせない存在感を放っていた。私は、歌姫miletさんのロックなかっこよさを感じ、miletさんのロックな魂を見た。miletさんは会場の隅々まで、観客たちみんな、ひとりひとりのことをちゃんと見てくれていた。観客たちが声を出せない中でも、miletさんと観客たちとの間には、ちゃんと目と目で、耳で、心で、繋がり合うコミュニケーションがあった。

 私はテレビでmiletさんのパフォーマンスを観るたび、ついつい、miletさんの生の歌声はもっとすごいんですよ、と心の中で思ってしまう。もちろん、miletさんの素晴らしさや魅力は、テレビからでもちゃんと伝わる。でも、家庭にあるテレビという小さな箱からでは、空間に収まりきらないくらいに広がるmiletさんの歌声のスケールの大きさや迫力が、物理的にどうしても伝わりきらないと感じるのだ。そこに、ライヴの重要性、ライヴの存在意義がある。miletさんは、ライヴでとてつもないパワーを発揮し、凄まじい輝きを放つアーティスト。あの生の歌声を聴いたら、みんな圧倒されて魅了される。だから、より多くの人たちにmiletさんのライヴを体験してほしい。今回のツアーは、全国のみなさんに、miletさんのライヴの素晴らしさ、miletさんの生の歌声の凄さが存分に伝わる機会となった。きっと、またmiletさんのライヴに行きたい、と思った人が沢山いるにちがいない。

 今回のmiletさんのライヴを観て一番印象的だったのは、やはりその歌声、圧巻の歌唱力と声量だ。miletさんの曲はどれも高低差が激しく声量が必要なのに加え、ビブラートやファルセットのような繊細な表現力も必要で、難易度が高い。miletさんは毎回パワー全開で、ステージであれだけ動き回りながら歌っているのに、歌声が全くブレないのだ。それに加え、力強さと繊細さが絶妙に混じり合い、豊かな表現力を発揮している。ツアー初日神奈川公演の時点で、miletさんの歌声はものすごい完成度に到達していたのだが、ツアーファイナルの東京公演では、ツアー初日からたった1ヶ月半で、また歌声がさらに進化していた。どれだけ進化のスピード速いんですか、と私は驚いた。

 大充実のセットリストについては、インターネットの公式レポートで公開されているのでそちらをご覧頂くとして、ここでは、個人的にハイライトだと感じたパフォーマンスについて触れていきたい。圧巻だったのは、6曲目から9曲目にかけての”Dome”、”Fire Arrow”、”Waterfall”、”checkmate”の地を這うようにダークな4曲の連続パフォーマンスだ。miletさんは神奈川公演で、これらの曲たちのことを「地獄」と呼んでいた。これら地獄の4曲は、すべてmiletさんとRyosuke“Dr.R”Sakaiさんの共作だ。これら4曲のパフォーマンスでは、演出で炎が使われていてパンチが効いていた。静かに不気味に揺らめく炎や、メラメラと燃えたぎる炎、という感じで、炎がそれぞれの曲のイメージを表しているようだった。”Dome”では、miletさんのシアトリカルな表現力が際立っていた。舞台のような、演劇のような、まるでミュージカルの一場面を観ているかのようだった。miletさんの掠れているけれども透き通ったファルセットが、美しさと儚さ、そしてダークな妖艶さを醸し出していた。”Fire Arrow”や”Waterfall”では、腹の底に響いてくるような重厚でドスの効いたビートと、これまたいい具合にドスの効いたmiletさんの低音ボイスが、地を這うような、不気味なダークネスを漂わせていて、それがめちゃくちゃかっこよくて心地よかった。”checkmate”はダークなんだけれどもエッジの効いたノリノリの曲で、踊り出したくなった。miletさんの力強いキレッキレの歌声と炎の演出がピッタリで、火を吹くドラゴンが出てくるんじゃないか、と思うくらいの迫力だった。

 今回のライヴでとりわけ感動的だったのは、後半での”Prover”のパフォーマンスだ。もう本当に素晴らしくて、私の目には涙が滲んだ。音はシンプルにピアノの伴奏のみで、そこにmiletさんの歌声、それだけで十分だった。オーディエンスは、息を呑むように聴き入っていた。miletさんの歌声そのものの美しさ、そして、”Prover”という曲そのものの素晴らしさを堪能できるパフォーマンスだった。この曲の終盤の高音パートでは、miletさんはさらに磨きのかかった伸びやかな歌声と圧巻の声量を披露していた。まさしく、歌姫としての完璧なパフォーマンスだった。歌い終わると、オーディエンスの長い長い大きな拍手が続いていた。

 もうひとつ忘れられないのが、miletさんが今回のツアーで初披露してくれた新曲”On the Edge”だ。私は神奈川公演でこの曲を初めて聴いた時、すごくいい曲で、とても感動して大好きな曲になった。東京公演でも聴けたらいいな、と私はとても楽しみにしていた。miletさんはツアーファイナルで、”On the Edge”を歌う前に、次のように話してくれた。

「みんなが私にとっての希望。だから、音楽がみんなにとっての希望であれば嬉しい。そんなことを想いながら作った曲です。」

miletさんの言う「みんな」には、「まだ会ったことのない人」も含まれているのだと、miletさんはMCで話してくれた。コロナ禍でライヴができない中でも、miletさんはずっと「みんな」のことを思い浮かべながら音楽を作り続けてくれていた。まだ見ぬ誰かにも想いを馳せながら。「まだ会ったことのないあなた」にまで、歌を届けるmiletさんの強さと愛を感じた。

 ”On the Edge”では、エレクトリック・ギターの音がとても印象的だ。すごくかっこよくて、どこか懐かしくて、どこかU2を彷彿させるようなスケールの大きさと高揚感も感じさせるギターの音。そこに、miletさんのかっこよくて力強い歌声。歌詞もすごく前向きでパワーが湧いてくる。まだ音源化されておらず正確な歌詞はわからないが、サビのところで

《We’re gonna make it through
光を待ってる
導くように 絶やさず声を繋いでいて》

と歌っているように聴こえる。miletさんは、”You & I”という曲のタイトルにもあるように、1対1、「あなたと私」の関係性をとても大切にしながら音楽を作る人だ。miletさんの音楽を聴いてくれる人と1対1で真摯に向き合ってくれるから、聴く人ひとりひとりの心に真っ直ぐ届いてくる。そんなmiletさんが「we」=「私たち」で歌う曲は、例えば”Rewrite”や”The Love We’ve Made”などがあるが、やはり、”you”と”I”の関係性の曲の方が圧倒的に多い気がする。世界中のみんなが不安の中を生きる今、miletさんが”We’re gonna make it through”=「私たちは乗り越えていく」と力強く歌う”On the Edge”に、私はとても勇気づけられている。この曲は、自分にとってのテーマソングとなっているし、みんなにとってのテーマソングにもなりうると思う。

 miletさんはMCでも、オーディエンスへ向けて、大切な言葉を沢山語りかけてくれていた。miletさんがみんなへの愛を込めていろんなことを話してくれたのに、ライヴでの素晴らしいパフォーマンスに目と耳と心が奪われて夢心地の中、私の記憶力では全部を鮮明に覚えられていないのがとても悔しい。それでも、miletさんが伝えてくれたことの大事な部分はちゃんと自分の中に残っている。miletさんは、

「ポジティブでいたい。ネガティブになるのは簡単。だからこそ、ポジティブでいることが大切。みなさんが私にとっての希望。だからこそ、自分の音楽がみんなにとっての希望であり光であってほしい。」

という想いを何度も丁寧に語りかけてくれた。そして、miletさんからみんなへの大切な想いが、新曲の”Ordinary Days”に込められているということも。また、miletさんはこうも言っていた。

「みんなを産んで育ててくれたお父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃん、そのまたご先祖様まで、本当にありがとう。」

miletさんは1stワンマンライヴ『eye』の時も、MCでこれと同じことを言っていたのを、私は今でも覚えている。ライヴのMCやインタビューやTwitterなどでの言葉の節々からわかるように、miletさんは家族をとても大切にしている人で、ファンの家族にまで想いを馳せてくれる人。そんな人なかなかいないよな、と私は思った。miletさんの音楽、ライヴでのパフォーマンスやMCで語りかけられる言葉に触れると、いつもすごく元気をもらえる。miletさん自身が、miletさんの音楽が、miletさんのライヴ自体が、ポジティブの源だと私は思った。

 バンドメンバーのみなさんの演奏もコーラスも、本当に素晴らしかった。毎度のことながら、本当にかっこよくて、ものすごい完成度なのだ。

 ギターは野村陽一郎さん。いつも素晴らしい演奏で聴き入ってしまう。個人的には、”Somebody”での流れるようなアコースティック・ギターの音が大好きで、聴いていてハッピーでスキップしたくなった。アンコールのMCで、歯でギターを演奏した野村さんに対するmiletさんのコメント「まーた爪あと残そうとして!」が自分にとって面白すぎた。

 コーラスはLauren Kaoriさん。Laurenさんのコーラスは、いつも本当に美しくてかっこいい。Laurenさんは、手拍子や手の動きや豊かな表情で、オーディエンスのみんなが乗りやすいように誘導してくれ、盛り上げてくれていた。自分も、Laurenさんの動きを真似しながら、一緒に楽しむことができた。アンコールのMCでは、すごい声量の美しい歌声を披露していた。

 キーボードは、今回のツアーで初参加の藤本藍さん。流れるような華麗な指さばきと音色でライヴを彩っていた。東京公演開始直前に聴こえてきた美しくて贅沢なピアノの音色が、音源だと思っていたら藤本さんの生演奏で驚いた。”Prover”でのmiletさんの歌声と藤本さんのピアノの音に包まれた、その時間と空間が宝石のようだった。

 ドラムスのよっちさん(河村吉宏さん)の演奏も、めちゃくちゃかっこよかった。もう本当に職人技といった感じで、通常のドラムとエレクトリックなドラムを巧みに使い分けるその佇まいが本当に絵になっていた。腹の底に響いてくるドラムの音も圧巻だった。よっちさんは、アンコールのMCでドラムスティックを高く振り上げて見事キャッチしていた。それを見たmiletさんが「私もやりたい!」とトライしたが、ドラムスティックがどこかへ吹っ飛んでいて、面白すぎた。

 ベースはKota Hashimotoさん。ポジションはステージ向かって左端で目立つ位置ではないけれど、その仕事人ぶりが伝わってきて、佇まいや空気感も含めてすごくかっこよかった。ベースだけではなく、野村さんとともにギターも演奏されていて、miletさんのサウンドを脇からガッチリと支えてくれていた。

miletさんは素晴らしい人たちと出会っている。その人たちと共に、素晴らしい音楽とライヴを創り上げているのだ。今回のツアーは、ファン、バンドメンバー、スタッフ、miletさんのことを愛し支えてくれる全ての人たちへの愛、そして、音楽への愛に溢れていた。

 ライヴの開演前に流れる音楽もすごくおしゃれでかっこよく、自分にとっては毎回miletさんのライヴでの楽しみのひとつとなっている。ツアー終了後にmiletさんがTwitterでプレイリストを公開してくれたのたが、選曲もオルタナティヴなロックやエレクトロニカやピアノの曲など幅広く、miletさんの多彩な音楽性を反映している気がした。あまり知られていないような北欧系のアーティストや、miletさん自身が敬愛してやまないKula Shakerやくるりの楽曲もあった。そのプレイリストの中で私が個人的に特に好きだったのは、Underworldの”Ova Nova”とくるりの”渚”で、今でも頭の中で流れている。

 ツアータイトルの『SEVENTH HEAVEN』とは「最上の天国」という意味で、「音楽でみんなを最高の天国へ連れて行きたい!」というmiletさんの想いが込められている。私はこのツアーに参加して、Belinda Carlisleの懐かしの曲、”Heaven is a Place on Earth”をふと思い出した。その曲では、天国は地上にあると言う。確かにそうだ。miletさんのライヴは、地上にある最高のヘヴンだった。そして、私は思った。天国は、この地上に生きる、ひとりひとりの心の中にあるのだと、miletさんのライヴが、miletさんの音楽が、伝えてくれている。

 最後に、忘れられない景色をもうひとつ。神奈川公演の帰り道、ライヴ会場からみんなが駅へと向かってぞろぞろと歩いていた時に見上げた、茜色と水色の混じり合った夕暮れ時の空。幻想的で美しく、miletさんの音楽と重なった。今でも町を歩いていて、あの時の空と同じ色をした空を見ると、あのライヴでの光景を思い出し、感動が蘇ってくる。この思い出が、ささやかな日常の、大切な希望であり、光となっているのだ。
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