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新生BRAHMAN、その表現の核

「Tour 2021 -Slow Dance-」完結に

6/13に予定されていたBRAHMAN「Tour 2021 -Slow Dance-」大阪公演が「土日は無観客要請」という大阪独自の政策のために延期になってから50日余り、その間にむしろ都市部では感染拡大が再燃し、案の定また緊急事態宣言が出て、8/4の振替公演を無事迎えられるか、直前まで祈るような気持ちだった。

8/4 Zepp Osaka Bayside、ようやく迎えたこの日を待ちに待っていた観客達、そして日曜→水曜という日程変更により来れなくなった人達の空席に入ったと思われる、BRAHMANのライブが初めてらしき人も散見され、新鮮さや戸惑い、やや温度差も含みながら、それぞれがBRAHMANのライブに臨んでいた。

目に入る範囲では、体を揺らして踊っている人が多かった。
まさにSlow Dance。
BRAHMANって、こんなに踊れる音楽だったのか、と思った。


以下、個人的なハイライトを書き留めておこうと思う。
私は福岡、名古屋、大阪の三公演を観たので、初見からの感じ方の変化なども。

開演前、紗幕が張られたステージにツアータイトルロゴが投影されている。
静止画かと思って見ていると、周囲の波のような模様が渦のようにゆっくり形を変えていることに気付く。

開演。
紗幕一枚隔てて、ライトに照らされたBRAHMANの姿が浮かび上がる。

『KAMUY-PIRMA』『FIBS IN THE HAND』『空谷の跫音』と、しっとりと静のBRAHMANの深みを感じさせる曲が続く。

『終夜』
「この手にも」の歌詞に合わせるように、TOSHI-LOWが紗幕に掌を押し当てる。
コロナ禍を象徴するような越えられない隔たりを感じて、胸が締め付けられる。

『霹靂』
紗幕に投影される映像。降りしきる雨、嵐。
圧倒されていると、間奏で紗幕が開く。
ぼんやりしていた視界がクリアになり、間には空気だけ。
距離はあっても、TOSHI-LOWがすぐ目の前に来たような生々しさが堪らなくうれしい。
TOSHI-LOWが両手を振り挙げ、立て!というようにジェスチャーをした。
みんな立ち上がった。
(TOSHI-LOWはこのツアー中、一切MCをしなかった。歌と身振り手振りで観客を沸かせていた。)

『BYWAY』
正直あまり思い入れのなかった曲で、アルバムを通しで聴く時に流れで聴く程度だったのだけど、-Slow Dance-のセトリの中で、意外なほど印象に残る曲になった。
単調なようでいて、仄明るさを感じる曲調に和らぐ。
間奏では手拍子曲としての効果ももたらしていた。

『PLASTIC SMILE』
ステージバックのスクリーンに、コロナ前の密々のなか降臨するTOSHI-LOWの写真が映し出される。
6月に福岡、名古屋で観た時、かつてのライブの光景は、今すぐにでも取り戻したいものとして刺さってきたのだけど、大阪では少し受け止め方が変わっていた。
この頃はこうだったなぁ、と少し遠くなった過去のこととして振り返りながら、今は今を大切にしたいという気持ちの方が強くなっていた。
密々の世界にまだ戻れなくても、今、このライブがあればいい、と。

『新曲』
『今夜』を彷彿とさせるような素直なメロディラインに、大阪では陰影のある展開が加わって、更にグッとくるものになっていた気がする。泣いた。

『ナミノウタゲ』
MVと同じ場所の現在の映像、人々の様子がステージバックのスクリーンに映し出される。
間奏中、TOSHI-LOWはスクリーンの方に体を向けて、じっと映像を見ていた。
『ナミノウタゲ』を生んだ出会い、その地で人々に寄せてきた思いの深さをTOSHI-LOWの佇まいに感じた。

『今夜』『PLACEBO』の流れはスケジュールが合えば細美武士が登場する想定だったのでは?と思わせる。
しかし札幌、羽田、と細美武士は客席にいたにもかかわらず、ステージには上がらなかったという。
細美武士の登場を期待していた人もいたかもしれないが「自分が出るのは違う」と言った(らしい)細美武士を私はさすが、と思った。
『今夜』でTOSHI-LOWは「次はもっとそばにおいで」と客席に向かって歌う。
コロナ禍のなか、まだそばに行けないからこそ、そんな「次」が来る日を思って胸が締め付けられた。
細美武士との関係を歌ったはずの歌が、客席の私達と相対する歌になっていた。

『満月の夕』
阪神大震災後に生まれ、東日本大震災以降BRAHMANが歌い継いできた、あまりに意味合いの深い曲。
TOSHI-LOWがいたずらっぽく微笑みながら「心で歌え」というようにジェスチャーで促す。
マスク越しにほとんど声を出さずに合いの手を入れ、手を挙げる。
コロナ前にライブで聴いていた時よりも、なんだか心が晴れるような楽しさを感じていた。

『鼎の問』の後、メンバーが捌け、紗幕にコロナ禍の街やメンバーのオフショットが流れる。

終演か、と思わせてのち、静かにメンバーが再登場。

新曲だ!
紗幕に叩きつけるように歌詞が次々と映し出される。
後に『Slow Dance』というツアータイトルを冠した曲だとわかるその曲は、タイトルを裏切るようなBRAHMANらしい激しさを持った曲。
コロナ禍の今の世界が孕んだ矛盾への怒りだけでなく洞察も伺わせる、まさに「今」の曲。

BRAHMANの観客は今、この曲を暴れずに定位置で聴けるのだから、コロナ収束がまだ見通せなくても、同じような客席ありのライブの形式で『警醒』や『不倶戴天』ももうやってもいいのでは?と思ってしまう。
今回のツアーでやらなかった『俤』や『Stand aloof』(私がBRAHMANで一番好きな曲)なんかもライブで聴きたいなぁ、なんて思った。

BRAHMANがアンコールをしないこと、BRAHMANのライブを経験している人は知っているので、あえてアンコールを求めないのだけど、8/4は自然とアンコールの拍手が起こった。
はからずもファイナルとなった大阪で、観客達はツアーの終わりを惜しんでいるかのようだった。

大阪公演が延期にならなければファイナルのはずだった6/28の羽田公演後、いくつかレポートがアップされた。
紗幕や映像、写真の投影といった演出面がクローズアップされたけれども、確かにそれらは効果的にBRAHMANのライブを彩り、感情を揺さぶったけれども、やはり表現の根幹は歌であり演奏だと思う。
どんなに演出が素晴らしくても、歌や演奏に力がなければ、それらの演出は誤魔化しにもなりかねない。
BRAHMANのライブは決してそうはならなかった。
何よりも歌と音、フィジカルで圧倒していた。
だからこそ、演出にグッと来たのだろう。

2021年、-Slow Dance-で観せられた新生BRAHMANのライブは、降臨なし、ぶつかり稽古なし。
そこにあったのはコロナ禍のなかで表面を剥ぎ取られ、むしろ顕わになった表現の核。
美しかった。


終演後、扉に貼られたポスターに新曲『Slow Dance』9/22リリースを知る。
初回限定盤は6/28「Tour 2021 -Slow Dance-」Zepp Haneda公演、昨年10/9の配信ライブ「ONLINE LIVE “IN YOUR 【 】 HOUSE”」2公演のライブ映像付とのこと。
※リリース情報で曲名が判明した新曲『旅路の果て』は『Slow Dance』初回限定盤のライブ映像には収録されないみたいで、ちょっと残念だけど、延期になった大阪公演開催までの間に、曲が進化してしまったからなのかな、と思う。完成形の音源を楽しみにしておく。

2020年10/9に行われた無観客配信ライブ。
配信であってもBRAHMANのライブがまた見れたことはすごくうれしかった。
でも、もう2度とやらなくていい、とも思った。
それくらい、うれしさと同時に見ているのが辛いライブでもあった。
『ANSWER FOR…』で無観客のフロアはTOSHI-LOWの目にどのように映っていたのだろう。

2020年、コロナ禍のなか、従来のようなライブをやろうと思えば、無観客しか選択肢がないとさえ思えたBRAHMAN。

2021年、コロナ前のライブでは多くの観客に望まれていたTOSHI-LOW降臨、ぶつかり稽古といった要素を脱ぎ捨て、ステージ上に留まるパフォーマンスを選んだBRAHMAN。

その対比を映像で振り返る時、自分はどんな感慨を持つのだろう。


今言えることは、かつて戻りたいと望んだライブの形がたとえ早速には戻ってこなくても、BRAHMANのライブをまたライブハウスで観ることができたこの世界は、そんなに悪くない、ということ。

8/4のライブ終演後、次の日も普通に仕事だった僻地住みの私は、電車より早く帰れるので、暗く車通りもほとんどない高速を車で走って帰った。
暗くてクネクネ道で止まりたくても走り続けるしかない高速は、こわくて逃げ出したくなってニガテ。
でも、その時は、もういつ死んでも悔いはないなぁ、なんて思ってる自分がいた。
BRAHMANのツアー -Slow Dance- の終わりを見届けられて、もう思い残すことはないな、と思ったら、暗い道を走るのが不思議とこわくなくなった。
そしたら、なんだか冷静になれて、淡々と走り切って家に帰り着いてた。

もっとも、その時はそんなふうに思ったけど、今は新曲『Slow Dance』と大阪で聴いたら泣いてしまった『旅路の果て』のリリースが楽しみだし、ライブ映像もきっと繰り返し見ると思う。

そして「今」のBRAHMANがまたライブやってくれる日が楽しみで仕方ない。

って、思い残してることだらけやん(笑)



-最後に-

音楽文が終了すると知った。

コロナ禍のなか、2020年5月に私は音楽文を書いた。
チケットを取っていたライブが全てなくなり、大好きなバンドが活動を止められたまま、先が見えなかった頃、私は書くことで自分を保とうとしていた。
あの時音楽文を書くことで、なんとか前に進む力を持てた気がしている。

このような場を維持してきてくれた方々に感謝。

コロナ以降、大多数の人には要らないものでも、自分にとっては失いたくない、大切なものがあることに気付かされた。
たとえ小さくても、声を上げなければかき消されてしまうものがあると思うから、これからもSNS等で、自分の思いを形にし続けていこうと思う。

音楽文、今までありがとう。
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