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21歳のTeenager Forever

画面の向こうのKing Gnu Live Tour 2019 AWを観て

今さっき、テレビで放送されたKing Gnuの野音ライブ放送の録画を観た。観終えた。
が、本当に今日はこんなことをしている場合ではないのだ。みっちり1時間半のライブ映像を見ている場合でもないし、それについてわざわざこんなふうに感想を綴っている場合でもない。
約1週間後に迫る大学の後期試験。もう直ぐ目の前までやって来ている就職活動に関するあれこれの準備。本当にこんなことをしている場合ではないのだ。

なのに、こんなことをしないといけないような気がしている。聴いて、観て、感動して、来週には忘れてしまう。そんな消費の仕方をしてはいけないのではないか、なんて衝動に負けて今この文章を綴っている。

『King Gnu Live Tour 2019 AW』私は実際にこのライブツアーの公演に参加することはできなかった。チケットを取ろうとして取れなかったわけではない。
「King Gnuは好きだけど、ライブに行くまでではないかなぁ」
なんて思ってチケットを取ろうとも思わなかった。きっと私はこの怠惰にこれから永劫後悔し続けるだろう。
画面の向こうにある日比谷野外大音楽堂の景色は、嫉妬するほど美しかった。
 
『飛行艇』の重厚なイントロで幕を開けた本公演。ゆったりとしたペースで巨大な音の塊が目の前に現れるような衝撃があった。『Sorrows』『あなたは蜃気楼』と、音数の多い重たい楽曲が聴く者の耳を支配すると同時に、演出でもKing Gnuは観客を飲み込んでいく。ステージ上のメンバーが見えなくなるほどのスモークを焚き、その中で稲妻のように激しい照明が光輝く。
アコースティックのパートでは音数を絞りつつ、彼らが(おそらくアドリブで)音を足し引きしながら戯れて音楽を作っている様が、音からも楽しげな表情からも伝わってくる。リズム隊が突然演奏をやめて、ギターとボーカルだけのパートになったときには、それぞれの悪戯っぽい笑顔が印象的だった。
King Gnuの楽曲やメンバーの風貌から、彼らに対して不気味で掴めない印象を持っていたが、そんなことはないのかもしれない。ただただ音楽が楽しくてしょうがないと言っているかのような彼らの表情に愛おしさすら感じていた。

観客を煽りつつ、野音に大合唱が響く。
「King Gnuの曲って、みんなで歌えるんだ」
なんてことを思いつつ、テレビの前で一緒に口ずさんでいる自分がいた。『Flash!!!』で音も光も爆発したかのように再び激しく鳴る音楽。
そして本編最後の曲は『Teenager Forever』だ。

ここでふと気が付く。
「あれ、私はこんなふうに悠長にテレビを見ている余裕なんてあるんだっけ?」と。
ないのだ。本当にこんなことをしている場合ではない。

私は『Teenager Forever』を聞くたびに、楽曲に対する熱情だけでなく今の自分の状況に重ねて焦燥感を覚えてしまう節がある。
大学生。モラトリアムど真ん中で聴く『Teenager Forever』はあまりに鮮烈すぎるのだ。
野音に飛ばしていた意識が急速に自分のほうに戻ってくる。夢は夢、現実は現実。そう我に返ってテレビ画面を見つめると、『Teenager Forever』はより鮮烈になるような気がした。
画面の向こうのライブを見ながら、重力に負けて涙がボロボロと溢れてきた。それは悲しいわけでも、感極まって泣けてきたわけではない。まばたきを忘れて釘付けになっていた眼球が乾燥に負けて、涙が次々に溢れ落ちていたのだ。擦って霞んだ視界では演出を具に観察することはできなかったけれど、言葉の一つ一つが腑に落ちていく。

「一体未来は どうなるのかなんて事より」
と、振り切れる気はまだしないし、何者でもない自分が将来何者にもなれないまま死んでいく恐怖に震えながら今日も生きる。漠然とした不安を抱えながら、どうやって努力をすればいいのかもいまいちよく分からない。「それでもいいよ」と優しい言葉をかけられるよりずっと、
「他の誰かになんて なれやしないよ
そんなのわかってるんだ」
の方が自分の糧になる気がするし、
「明日を信じてみたいの
微かな自分を 愛せなかったとしても」
の方が前を向ける気がした。

あくまで、気がする、でしかないけれど仕方ない。モラトリアムはモラトリアムとしてもがいてみようか。と、自分の中で何かが燃え上がるのを感じていた。

『Teenager Forever』が発表された時に、
「この曲を実際にティーンエイジャーで聴ける子達はいいなぁ羨ましいなぁ」
なんて呑気に思っていたのだが、ティーンじゃなくても『Teenager Forever』は『私の曲』になる。

テレビ越しに鈍器で頭を殴られたような衝撃を覚えると共に、身体中にエネルギーが漲っていく。ちょっと頑張ってみようか、なんてアツい気持ちに心地よさすら感じていた。
  
(そのやる気が勉強や就活ではなく、執筆に向いているのは本末転倒なのだが、それはそれとして)
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