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一夜の流れ星

Araki,nqrseの『Shooting Star』という魔法

初めてライブに行った時の景色がまだ忘れられない。それくらい色濃く記憶に残っている。特にこのShooting Starは、たぶん一生忘れられないような大切な記憶になった。

大人になるにつれて、少しずつ、無邪気な希望を持つことを諦め始めている自分に気づく。希望を持たないほうが、がっかりしなくて済むから。傷つかなくて済むから。
自分じゃない誰かに憧れる。自分が持っているものは0でしかないと自分の価値を否定して、持っていないものばかりに焦がれる。変わることを恐れて、ずっとこのままでいたくて、一歩も前に進めない。それでも、ほんとうはそれでも、と、どこかで奇跡を願っている。そんな自分を許してほしい。本当は自分が一番、自分に許されたい。

この曲を聴いたとき、そんなことを、他の誰かもきっとどこかで思っているんだろうか、と思った。そして、そのとき漸く、ふいに持ち過ぎた大切な大切ながらくたを愛せたような、心に積もり積もった鉛みたいな自尊心を少し許せたような、そんな感じがした。

《君のままでいいんだよって笑って抱きしめて欲しいんだ》

この歌詞のサビに出てくる「just the way」という言葉の意味について、ライブであらきさんは曲が始まる前に「背伸びをしてしまう時もあるけど、等身大でいいんだよということを伝えたかった」と(もう二年前のことなのでしっかりとは覚えていないのだけれど、こんな感じのことを)言っていた。

等身大。等身大でいることの難しさは、日を追うごとに解ってくる。不安とか焦りが邪魔をして、素直でいられないことがいつの間にか増えてしまう。自分は自分であるということ、あなたはあなたであるということ、どうしてもすぐに、忘れてしまったりする。

そんな時にこの言葉が、この歌が、あの時のあらきさんの言葉が、ゆっくりと教えてくれるのだ。等身大でいいよ、と。背伸びしなくても、ちゃんと歩けるよ、と。

《明日になってもいいと もう怖くなんかないと 目を開けてごらんよ 魔法に打たれてく》

誰かじゃなくて、きみのままでいいんだよ。やさしい声で、おとなとこどもの狭間にいる心の中のわたしは、そうか、と安心する。目を瞑ったままの視界では、きっとずっと何も見えないな、と気付く。そうしてなるせちゃんのしめやかな声で、生まれ直したみたいにまた目を開ける。

「赤とピンクだけじゃなくていい、サイリウムを自分の好きな色に変えてください」

あの頃手を伸ばした星空は、あの箱の中で色とりどりのサイリウムの灯りに変わった。
願いを込めた流星は、ふたりの歌声に変わった。
ステージへ向けて翳した私達の、「自分の好きな色」を灯したサイリウムが、色とりどりに揺れて、ちいさな流星群になる。

その景色がとても綺麗だった。

さみしさやかなしみから逃れてどこまでも眠りに落ちていくような柔らかさの中に、淡く、だけれどたしかなひかりを孕んで、ふたりの声が夜を包んでいく。しっとりと、綿菓子のような、甘くてただただやさしい夢を見たあとは、眩しい光に迎えられて朝を迎えるような。あの空間だけが持っていたやさしさや柔らかさを、ずっと忘れられないでいる。

あの時見たのは、そんな一瞬の、されど一生の、魔法のような流れ星だった。
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