back numberの音楽が教えてくれたいろんなこと
私にとって特別な「NO MAGIC TOUR 2019」
2020年6月24日
206
これは、音楽に思い出を彩ってもらって、音楽を通じて素敵な友人たちの存在を再認識した、20代女のback numberのライブの記録。
2018年11月。
「オールドファッションのCD、もう買った?」
実家の母と、一人暮らしの私。
離れた別の場所から同じ某連続ドラマをともに観ていた私たち。放送中や放送後「いまめっちゃ泣いてる」「つらい」「ねー」と他愛もない文章のやり取りをよくしていた。
たまたま実家に帰って一緒にドラマを観ていた際、母の口から出てきたのが上記の言葉だ。
『まだ買ってない』
「買ってたら貸してって言ったのになぁ〜。そしたら買っちゃお」
『買ったら貸して』
「ほんじゃ代わりにいつかライブ連れてって」
『え!母本当に行くなら喜んでチケット取る!』
私が音楽を好きになったのも、幼い頃からいろんなコンサートやミュージカルに連れ出してくれた母の影響だった。
そんな会話をした数ヶ月後、母が天国へ旅立った。
憎き癌の存在は数年前からわかっていたが、元気だった母との突然のお別れは、言葉にできないほど悲しくて、悔しかった。
その約1ヶ月後、back number「NO MAGIC TOUR 2019」日本武道館。
7月下旬、暑い夏の日。
2013年、母の癌がわかって間もない頃、彼らのワンマンライブを観た場所。彼らを武道館で観るのは、それぶりだった。あのときも確か、ちょっと暑かった。
久々に会う2人の友人と合流し、写真を撮ったり、既に別公演を観ている2人からのネタバレを防いだり、他愛もない話をしながら会場に入り、開演時間を待つ。
決して「良席」とは言えない、ステージからは遠い席だった。が、そんなことどうでもよくなるほど、大好きなバンドのワンマンライブにわくわくしていた。
このときは、本編で大泣きしたり終演後にいろんなことを考えたりなんて、まったく考えていなかった。
周りが暗くなり、客席から歓声が上がる。
幻想的な演出。少し暗めな空間に、ステージ上に映るオーロラのような風景、優しい色の照明、ゆったりしたBGM。
異世界に来たような不思議な心地だった。
ステージにツアーのロゴが映った、と思うとバサッと幕が落ち、メンバーの姿が目に写る。同時に、ロック調のイントロと、先ほどよりも大きな歓声が会場全体に響き渡る。
数秒前のゆったりした空間から、バラードから始まるのかな、と勝手に予想していた私の考えは大外れだった。「大不正解」。
-補い合うのなんざご免なんだ
さぁ好きに踊ろうぜ
きた!ライブに、きた!!!
久々の非日常さに、私の胸の高鳴りも一気に強くなっていった。いろんなことを忘れ、はしゃいでいた。
アップテンポな曲が続いた後に、始まったバラード。
音楽プレーヤーからだけではなく、毎週テレビからも聞こえてきたイントロだ。
-よく晴れた空に 雪が降るような
ああそう 多分そんな感じだ
「オールドファッション」。
なんとなく、脳裏に浮かんだのは、観ていたドラマと、母だった。
「オールドファッションのCD、もう買った?」
母、好きだったなこの曲。
これ流れてくるタイミングで、ドラマの感想送ってたな。
ライブ、行きたいって言ってたな。
-花は風を待って
月が夜を照らすのと同じように
僕に君なんだ
気付いたら、自分でも驚くほどにぼろぼろ泣いていた。
この曲を違う場所から、一緒に聞いていたあの時期を思い出して、泣いた。実家で一緒に観た日もあったな。
心地よいメロディと、比喩がたくさん含まれた優しい歌詞。あぁ、確かに母、こんな感じの曲、昔から好きだった。
こんなにライブで泣いたのは、初めてだった。
その後バラードが続き、後に演奏されたのは「思い出せなくなるその日まで」。
-世界で1番大事な人が
いなくなっても日々は続いてく
あれ?
今までは、この歌を「失恋の歌、大好きな恋人と別れた歌」だと思って聴いていた。
ここで、私がback numberを好きな理由をちょっとだけ挟む。
「大切な人への思い」を、綺麗に繊細に描いてくれ、歌詞の風景が、まるで目の前に広がるような不思議な感覚を持たせてくれる。私が彼らの音楽が大好きな理由のひとつだ。
ライブでは、更にそれを強く感じる。
その「大切な人」を、ずっと、恋人や好きな人に勝手に置き換えていた。
違った。
曲と向き合ってるときの状況やそのときの思いで、変わるんだな。そんな当たり前なことを、このときに初めて実感した。
彼らによって描かれる大切な人は、この日、私にとっては「母」だった。
力強く歌われ、演奏される彼らの曲。それを全身で感じる。生の音楽は、CDとは比べ物にならないくらい感情を揺さぶってくる。
いろんなことを考えてしまい、私の頭の中はぐちゃぐちゃだった。
曲が終わった後、揺さぶられて疲れたのか、全身の力が抜けて、無だった。
それから、いろんな曲が続いた。
大好きな「SISTER」「電車の窓から」「スーパースターになったら」などなど。本編終了まであっという間だった。
泣いたり笑ったり跳ねたり、ただただ感情のままに顔と体を動かした。楽しすぎて、良い意味で疲れた。
アンコール前、友人らがこっそり「なぁ、ちょっとネタバレしてもええ?」とスマホの画面を見せてくれた。
「最後の曲、手紙だけれど大丈夫?」
疲れて何も考えられかった私は、友人らが伝えたい意図を読み取れず『あ、そうなの?ありがとう』とだけ返していた。何故突然教えてくれたのかよくわからなかった。
アンコールが始まり、あっという間に最後の曲が始まって、先ほどのネタバレの意味をやっと理解した。
-嬉しい事があった時に 誰かに言いたくなるのは
自分よりも喜んでくれる人に
育ててもらったからなんだろな
「手紙」。もう、だめだった。
-あなたはずっと手を振って笑ってくれた
帰り道迷わないように
もし前を向けなくなった時も
振り返ればいつも見えるように
それまで以上に母を思い出してしまい、嗚咽が止まらなくなるくらいに泣いてしまった。
-愛されている事に
ちゃんと気付いている事 いつか歌にしよう
小さい頃からずっと可愛がってくれた母が、もういない。
私の予想以上に、私のことをたくさん考えて、心配して、愛してくれた母がもういない。
母と、もう会えない。もうこの世にいない。
いろんな思いが止まらなくて、ステージが見られないくらいに泣いた。
隣の友人が肩を支えてくれて、一緒に泣いてくれた。
寂しさと悲しさだけがただただ溢れてきて、優しいメロディに包まれながら、泣いた。
「他人行儀じゃなく、きちんと寄り添える曲をばかみたいに作っていきたい」「あなたと日本一深い場所で出会えるバンドでありたい」。
途中で、ボーカルの清水さんがこのようなことを言っていた。
少なくとも、私にはこの武道館という場所で、遠いステージからとても近くで寄り添ってくれているように感じた。とても、とても。
彼らのメロディだから、歌詞だから、こんなにいろんなことを感じさせてくれたのだろうな。
本当に、不思議なバンド。back number。
好きでよかった、行ってよかった。
ライブがすべて終わった後、一緒に観た2人の友人から「なんでこのタイミングでこのセトリなんって思った」「ちゃんと楽しめるか心配してた」ということ、
最後に「手紙」が演奏されることに、母を亡くしたばかりの私が耐えられるのか、事前に伝えた方がよいのかどうか、別の友人らにも相談していたと聞いた。
2人にとっては、念願だったback numberの武道館ライブ。それを私情で不思議な思いをさせてしまったことが、すごく申し訳なかった。
ただ、それ以上に、こうやって自分のことを思ってくれる友人たちがいることが、心から嬉しかった。
本当に、ありがとう。
音楽が、いろんな思い出を引き連れてくれて、描いてくれる。たまに、予想外な描き方をしてくれる。
音楽を通じて、一緒に楽しんだり悲しんだり、思ってくれる友達がいる。
そして、それを作り出して、寄り添ってくれるアーティストがいる。
それを再認識したライブだった。
もちろん、彼らの生で聴く音楽は本当に最高だった。ライブ後の幸福感とともに、不思議な感情が溢れていた。
この「音楽」という芸術に、そしてback numberに、きっと私は一生助けられていく。
だからこそ、これからも全力で楽しんでいかなければ。いろんな思いを繋いだり、残したりするために。
母、音楽と出会わせてくれて、ありがとう。
2018年11月。
「オールドファッションのCD、もう買った?」
実家の母と、一人暮らしの私。
離れた別の場所から同じ某連続ドラマをともに観ていた私たち。放送中や放送後「いまめっちゃ泣いてる」「つらい」「ねー」と他愛もない文章のやり取りをよくしていた。
たまたま実家に帰って一緒にドラマを観ていた際、母の口から出てきたのが上記の言葉だ。
『まだ買ってない』
「買ってたら貸してって言ったのになぁ〜。そしたら買っちゃお」
『買ったら貸して』
「ほんじゃ代わりにいつかライブ連れてって」
『え!母本当に行くなら喜んでチケット取る!』
私が音楽を好きになったのも、幼い頃からいろんなコンサートやミュージカルに連れ出してくれた母の影響だった。
そんな会話をした数ヶ月後、母が天国へ旅立った。
憎き癌の存在は数年前からわかっていたが、元気だった母との突然のお別れは、言葉にできないほど悲しくて、悔しかった。
その約1ヶ月後、back number「NO MAGIC TOUR 2019」日本武道館。
7月下旬、暑い夏の日。
2013年、母の癌がわかって間もない頃、彼らのワンマンライブを観た場所。彼らを武道館で観るのは、それぶりだった。あのときも確か、ちょっと暑かった。
久々に会う2人の友人と合流し、写真を撮ったり、既に別公演を観ている2人からのネタバレを防いだり、他愛もない話をしながら会場に入り、開演時間を待つ。
決して「良席」とは言えない、ステージからは遠い席だった。が、そんなことどうでもよくなるほど、大好きなバンドのワンマンライブにわくわくしていた。
このときは、本編で大泣きしたり終演後にいろんなことを考えたりなんて、まったく考えていなかった。
周りが暗くなり、客席から歓声が上がる。
幻想的な演出。少し暗めな空間に、ステージ上に映るオーロラのような風景、優しい色の照明、ゆったりしたBGM。
異世界に来たような不思議な心地だった。
ステージにツアーのロゴが映った、と思うとバサッと幕が落ち、メンバーの姿が目に写る。同時に、ロック調のイントロと、先ほどよりも大きな歓声が会場全体に響き渡る。
数秒前のゆったりした空間から、バラードから始まるのかな、と勝手に予想していた私の考えは大外れだった。「大不正解」。
-補い合うのなんざご免なんだ
さぁ好きに踊ろうぜ
きた!ライブに、きた!!!
久々の非日常さに、私の胸の高鳴りも一気に強くなっていった。いろんなことを忘れ、はしゃいでいた。
アップテンポな曲が続いた後に、始まったバラード。
音楽プレーヤーからだけではなく、毎週テレビからも聞こえてきたイントロだ。
-よく晴れた空に 雪が降るような
ああそう 多分そんな感じだ
「オールドファッション」。
なんとなく、脳裏に浮かんだのは、観ていたドラマと、母だった。
「オールドファッションのCD、もう買った?」
母、好きだったなこの曲。
これ流れてくるタイミングで、ドラマの感想送ってたな。
ライブ、行きたいって言ってたな。
-花は風を待って
月が夜を照らすのと同じように
僕に君なんだ
気付いたら、自分でも驚くほどにぼろぼろ泣いていた。
この曲を違う場所から、一緒に聞いていたあの時期を思い出して、泣いた。実家で一緒に観た日もあったな。
心地よいメロディと、比喩がたくさん含まれた優しい歌詞。あぁ、確かに母、こんな感じの曲、昔から好きだった。
こんなにライブで泣いたのは、初めてだった。
その後バラードが続き、後に演奏されたのは「思い出せなくなるその日まで」。
-世界で1番大事な人が
いなくなっても日々は続いてく
あれ?
今までは、この歌を「失恋の歌、大好きな恋人と別れた歌」だと思って聴いていた。
ここで、私がback numberを好きな理由をちょっとだけ挟む。
「大切な人への思い」を、綺麗に繊細に描いてくれ、歌詞の風景が、まるで目の前に広がるような不思議な感覚を持たせてくれる。私が彼らの音楽が大好きな理由のひとつだ。
ライブでは、更にそれを強く感じる。
その「大切な人」を、ずっと、恋人や好きな人に勝手に置き換えていた。
違った。
曲と向き合ってるときの状況やそのときの思いで、変わるんだな。そんな当たり前なことを、このときに初めて実感した。
彼らによって描かれる大切な人は、この日、私にとっては「母」だった。
力強く歌われ、演奏される彼らの曲。それを全身で感じる。生の音楽は、CDとは比べ物にならないくらい感情を揺さぶってくる。
いろんなことを考えてしまい、私の頭の中はぐちゃぐちゃだった。
曲が終わった後、揺さぶられて疲れたのか、全身の力が抜けて、無だった。
それから、いろんな曲が続いた。
大好きな「SISTER」「電車の窓から」「スーパースターになったら」などなど。本編終了まであっという間だった。
泣いたり笑ったり跳ねたり、ただただ感情のままに顔と体を動かした。楽しすぎて、良い意味で疲れた。
アンコール前、友人らがこっそり「なぁ、ちょっとネタバレしてもええ?」とスマホの画面を見せてくれた。
「最後の曲、手紙だけれど大丈夫?」
疲れて何も考えられかった私は、友人らが伝えたい意図を読み取れず『あ、そうなの?ありがとう』とだけ返していた。何故突然教えてくれたのかよくわからなかった。
アンコールが始まり、あっという間に最後の曲が始まって、先ほどのネタバレの意味をやっと理解した。
-嬉しい事があった時に 誰かに言いたくなるのは
自分よりも喜んでくれる人に
育ててもらったからなんだろな
「手紙」。もう、だめだった。
-あなたはずっと手を振って笑ってくれた
帰り道迷わないように
もし前を向けなくなった時も
振り返ればいつも見えるように
それまで以上に母を思い出してしまい、嗚咽が止まらなくなるくらいに泣いてしまった。
-愛されている事に
ちゃんと気付いている事 いつか歌にしよう
小さい頃からずっと可愛がってくれた母が、もういない。
私の予想以上に、私のことをたくさん考えて、心配して、愛してくれた母がもういない。
母と、もう会えない。もうこの世にいない。
いろんな思いが止まらなくて、ステージが見られないくらいに泣いた。
隣の友人が肩を支えてくれて、一緒に泣いてくれた。
寂しさと悲しさだけがただただ溢れてきて、優しいメロディに包まれながら、泣いた。
「他人行儀じゃなく、きちんと寄り添える曲をばかみたいに作っていきたい」「あなたと日本一深い場所で出会えるバンドでありたい」。
途中で、ボーカルの清水さんがこのようなことを言っていた。
少なくとも、私にはこの武道館という場所で、遠いステージからとても近くで寄り添ってくれているように感じた。とても、とても。
彼らのメロディだから、歌詞だから、こんなにいろんなことを感じさせてくれたのだろうな。
本当に、不思議なバンド。back number。
好きでよかった、行ってよかった。
ライブがすべて終わった後、一緒に観た2人の友人から「なんでこのタイミングでこのセトリなんって思った」「ちゃんと楽しめるか心配してた」ということ、
最後に「手紙」が演奏されることに、母を亡くしたばかりの私が耐えられるのか、事前に伝えた方がよいのかどうか、別の友人らにも相談していたと聞いた。
2人にとっては、念願だったback numberの武道館ライブ。それを私情で不思議な思いをさせてしまったことが、すごく申し訳なかった。
ただ、それ以上に、こうやって自分のことを思ってくれる友人たちがいることが、心から嬉しかった。
本当に、ありがとう。
音楽が、いろんな思い出を引き連れてくれて、描いてくれる。たまに、予想外な描き方をしてくれる。
音楽を通じて、一緒に楽しんだり悲しんだり、思ってくれる友達がいる。
そして、それを作り出して、寄り添ってくれるアーティストがいる。
それを再認識したライブだった。
もちろん、彼らの生で聴く音楽は本当に最高だった。ライブ後の幸福感とともに、不思議な感情が溢れていた。
この「音楽」という芸術に、そしてback numberに、きっと私は一生助けられていく。
だからこそ、これからも全力で楽しんでいかなければ。いろんな思いを繋いだり、残したりするために。
母、音楽と出会わせてくれて、ありがとう。
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