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チームサカナクションが見せたライブエンターテイメントの光

オンラインライブ「SAKANAQUARIUM光ONLINE」を観て

ことごとくフェスやライブの中止が発表される中、満員のお客さんで埋め尽くされた会場で有観客のライブができる日を、どのアーティストも強く待ち望んでいることだろう。それは、一アーティストであるサカナクションも例外ではなく。
しかし、ただコロナが収まるのを待っているのではない、コロナを乗り越え、コロナ収束後にもっと先に進んでいるため……のライブエンタメのあり方を真剣に考え実現された一つが、8月15日、16日に行われたサカナクションのオンラインライブ「SAKANAQUARIUM光ONLINE」だと思う。有観客でライブが出来ないこと自体はネガティブな事実なのかもしれないが、無観客ならではの取り組みをポジティブに模索してきた結果だ。

一曲一曲の演奏や歌声、セットリストも曲のつなぎも妥協することなく細部までこだわっていて、本当に終始感動していた。
それに加えて、臨場感のあるカメラワークにビジュアルエフェクト、高音質なサウンドに、ちょっとした物語性も感じられる展開の数々。一時も目が離せなかった。ライブなのだが、ミュージックビデオか映画を観ているような感覚だった。しかもこれだけハイクオリティの映像が、後の編集などを加えず一発撮りの生配信で、私たちの前に届けられるのだ。表舞台に立つ演者はもちろん、舞台演出や照明、カメラ、音響など裏方で支える者たちのプロの仕事とそれらのチームワークに、改めて感動した。ドラマにも映画にもない“生”の音楽が、そこにあった。これが、山口一郎(Vo.G)さんが兼ねてから語っていた「ライブミュージックビデオ」なのかと実感した。
 
オンラインライブを実施するアーティストが増えてきて、私もいくつかを視聴した。無料・有料問わずこのような動きは個人的には嬉しく、ありがたかった。
私自身は主要なライブ会場から物理的に離れているところに住んでいるために、なかなか会場まで足を運ぶことができなかった。遠征して何とか行けそうな日程だと分かっても、チケットが外れて行けなかったこともある。しかしオンラインであれば、地理的制約も人数制限もないため、日程と通信環境さえ確保すればほぼ確実にライブ鑑賞ができる。そう考えると、ライブエンタメの入り口は広がったと思う。
ところが、だからこそ無観客でしかできない演出、オンラインでしかできない楽しみ方も、高いレベルで追究していく必要がある。そう考えると、ステージ上で演奏するミュージシャンだけでなく、裏方の技術面の支え、通信・企画面も含めた高い専門性も、これまで以上に求められるだろう。

少し話は逸れるが、6月11日にMusicCrossAid(ライブエンタメ従事者支援基金)が創設された。これは、音楽業界自らが立ち上がり、ライブエンターテイメントを支えてきた様々な技術者や団体を支援するプロジェクト。寄せられた力・資金はライブエンターテイメント産業の復活・復興に役立てられる。支援の対象は、表舞台に立つミュージシャンやアーティストだけでなく、音響、照明、ステージ制作、楽器管理、舞台監督など裏方でライブエンタメの演出を支えてきた人たちも含む。現時点で、第一回の公募受付は終了し、対象者には審査結果が通知され、8/24以降助成金の振り込みが開始される状況だ。既に多くの寄付が集まり、現在も寄付は受付中である。支援を必要としている人たちへ支援者の思いは、確かに届けられているだろう。

なかなかライブが実施できないため、仕事がなく、経済的・社会的に辛い思いをしているライブエンタメ従事者も多いと思う。それに関連して山口さんは「いざライブができるようになったとしても、技術的にライブを支えるスタッフがいなければエンターテイメントは成り立たない。そのような危機感を持っている。」という旨を話していたが、共感するところばかりだ。それは、ライブエンタメ従事者への金銭面の支援だけでなく、技術の継承、仕事に対するやりがいや自信、エンタメへの貢献感を得ることも含めたアプローチだと私は思っている。
そのような苦しい中、個人・団体による金銭的な支援や応援メッセージに励まされたライブエンタメ従事者がそれに応えるためには、やはりライブを成功させることだと思う。そしてその時は、もうすぐ側に来ているのかもしれない。今回の「SAKANAQUARIUM光ONLINE」で体験したように。

オンラインコンテンツを楽しむ人は、必ずしも音楽が大好きでライブを愛する人とは限らない。ところが工夫次第で、今までさほど音楽に興味・関心を示さなかった人にも、音楽や、ライブエンタメの素晴らしさが届くチャンスが来たのではないか、とも受け取れる。
そのような意味でサカナクションは、音楽の最先端を行く、音楽業界およびエンタメ業界のイノベーターと言えるのかもしれない。今後のオンラインライブに、いやオンラインライブをも超えるワクワクするエンターテイメントに、大きな可能性を感じた今回のライブであった。
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