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15年前の「TITLE」が色褪せない理由

ストレイテナー、過去から未来へ無限に繋がるメロディと心があれば取り戻せるさ

9月5日、ストレイテナーが久々にライブを行った。
チケット完売、満員御礼のライブハウスで……、というわけにはいかないので配信ライブである。
今回の配信ライブは、テナーのセカンドアルバム「TITLE」の再現ライブであることが事前に告知されていた。
配信がスタートし、普段のライブハウスだと前方エリアで飛んだり跳ねたり、ダイバーに頭を蹴られたり(テナーはずいぶん前からダイブ禁止だが)しているが、今回はイヤホンをしていることもあり素直に音が耳に届く。

それとともに、ホリエさんの歌声に乗せて歌詞が頭に入ってくる。
普段のライブだと、演奏スキルが高いメンバーがその時々で音源とは違うアレンジを随所に入れてくるため演奏面に心が奪われがちではあるが、今回のようにじっくりと「TITLE」という作品を改めて聞くことで、「TITLE」の世界線が浮かび上がってくる。

「TITLE」は発売から既に15年が経過した作品である。しかし、テナー入門者からの『何から聞いたら良い?』という質問に、今でもこのアルバムを推すファンは少なくない。
それは、2013年に武道館ライブのセットリストを決めるファン投票にて1位だった「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」がこのアルバムの1曲目を飾り、2018年発売のベストアルバム収録曲決めファン投票では1位の「REMINDER」をはじめ、全12曲中7曲がベストアルバムに収録されたことからもファンに愛されていることが裏付けできる。

配信ライブが終了したところで後悔の念に駆られることになる。ここまでファンに愛されている「TITLE」というアルバムを私自身は10%程度しか理解していなかった。今ならはっきりとそう言うことができる。
そして、あることに気づき始めると今まで聴いていた「TITLE」以外の曲も違う側面を見せるようになってきた。
そう、2回目のストレイテナーにハマる瞬間である。願わくは読んでいる皆さんにも追体験をしていただきたいところである。

さて、今回の配信ライブが終わってから最初に行ったことは、歌詞を改めて読み直すことであった。耳で聞きながら理解するのではなく、読解しようとしたのである。さながら現代文の問題でも解くかのように。
「TITLE」を通して、筆者(ストレイテナーまたはホリエアツシさん)は何を伝えたかったのか?こんな感じの問題だろうか。ここから先は私が「TITLE」を物語のように読解して、勝手に何かしらの結論に至る文章となっているのでご注意いただきたい。

さて、「TITLE」という物語が目の前にあると思って読み進めていただきたい。まじまじと読むことによって、先ほどの問題を解くには何か覚悟が必要な気がしていた。
それは、1曲目が「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」と示している通り、『悲しさ』と『美しさ』の答えを見つけ出さなければならないことである。『美しさ』だけを理解しようとしても答えは出てこない、△である。完全な正解を導き出すためには『悲しさ』を知る必要がある。そして、筆者であるホリエさんはヒントを散りばめているものの、答えを直接的には描いていない。『悲しさ』がポジティブな言葉であれば、覚悟を決める必要はなかったかもしれないが……。だが、ここで逃げ出すわけにはいかない。

“僕等は進まなくちゃ”(ROCKSTEDY)

そんな応援歌を事前に用意しておくだなんて、粋な計らいをする筆者である。

この物語をイメージ、登場人物、時間軸という要素に当てはめながら読み進めていくと分かりやすくなるのではないだろうか。
物語の印象をイメージするためには、この物語で多く使われている単語を探し出す必要がある。目の前の問題文にキーワードを見つけたら印をつける作業と同じである。
その結果、頻出文字は『失』となる。これはマイナスのイメージではないだろうか。やはり先行してくるイメージは、マイナス=『悲しさ』に関連されるような言葉である。
次の作業で、印をつけた言葉が何と結びついているのかを確認する。そうすると、

“色彩を失っても”(SAD AND BEAUTIFUL WORLD)
“失われた景色が広がるだろう”(PLAY THE STAR GUITAR)
“失われた美しいものを”(TENDER)
“壊れた形や消え失せた色”(REMINDER)

4曲にまたがって失われたものが何なのかを教えてくれている。そして、『失』と同じくらい使われている文字が『色』ということにも気付く。
この物語に漂う『SAD=悲しさ』という不穏さは、色を失った世界を生きていることが原因であると推察できる。また、最初から無い状態のものに対しては『失くす』という表現は使わない、認識ができないからである。つまり、元々『色』はあったが失われ、

“瓦礫だらけの街を優しく描く残像” (SAD AND BEAUTIFUL WORLD)
“時間をなくした街”(REMINDER)

何らかの原因で時間が停止し、色を失い、街は崩壊した。この物語は荒廃した状態で始まるのである。

さて、次の要素である登場人物について私は、2人と1羽の鳥で物語を紡がれていると考えた。
1人目は主人公の『堕天使』、2人目は『君』、そして曲名にも出てくる『鳥』である。
『堕天使』について、どんなキャラクターなのかを考えていく。『天使』をマイナスに考える人はほとんどいないだろう。プラスの存在から堕落したもの、『堕天使』はマイナスイメージである。では、この堕天使は何をしているのか。

“時間をなくした街 止まった針の上で 迎えを待つ堕天使の“
“夢をなくした街 凍った屋根の上で 夜明けを見る堕天使の”(REMINDER)

この箇所を見ると翼があるのに使おうとせず、その場に留まるような素振りは見せている。しかも、

“12月の雨の夜にも堕天使は 12年変わらず擦り減ったレコードを かけながら揺り椅子で眠る”(TENDER)

長い間、特に何かに夢中になるような状態ではなかったと考えられる。

“時間をなくした街 止まった針の上で 迎えを待つ堕天使の 掛ける古いレコードの立てる乾いたノイズが 唯一の確かなもの“(REMINDER)

この堕天使はレコードをずっと手元に置いたままにしている行動から、『堕天使』の興味は唯一『音』だけであることが分かる。また、このキャラクターが主人公だと考えるため、色を失った街を見ているのは『堕天使』ということになる。
2人目の『君』に関しては、『堕天使』と何らかの関係性があると見える。この物語の中で2人の関係性が色濃く出ているのは、「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」と「AGAINST THE WALL」である。

“I'LL STAY IN THE WORLD YOU'VE LEFT THE WORLD”(SAD AND BEAUTIFUL WORLD)
“忘れはしないよ過去の君はきっと 恐れはしないぜ未来も僕はずっと”(AGAINST THE WALL)

『君』という存在は確かにあるのだが、現在では『君』が存在していないことを暗に示している。では、どの時からいなくなったのか。それは、後の時間軸の考察で。
最後は、『鳥』について。『鳥』は、興味を持つことが少ない『堕天使』に対して、使命感に溢れた存在として描かれている。そして、『堕天使』と『君』を結ぶ役割にもなっており、

“THE BIRD TAKES MY WRITING TO REACH YOU”(泳ぐ鳥)

意訳すると“鳥が堕天使まで私の手紙を届ける”。『君』から見た『鳥』の姿が描写されていることになる。

では、時間軸を考えながら一気に問題を解くこととしたい。
改めて言うが、これは私の勝手な解釈である。最初から強引な部分もあるが最後までお付き合いを願いたい。
先ほどの登場人物の考察で、『君』の存在がどの時点でいなくなったのか、について触れたが、私の考えは「TITLE」という物語が始まる前にいなくなったと考える。そして、いなくなったというのは距離的に離れたにしては色々と過剰表現になってしまう。おそらく『君』は亡くなっていて、その直後からこの物語は始まる。
物語が始まった時点で『堕天使』であるが、元は『天使』でありその資格を『失った』。『君』が亡くなった事実を知った『堕天使』の言いようのない心情を物語っているのが、「KILLER TUNE」だとしたら、あの歌詞も腑に落ちる。

“alien angel”(KILLER TUNE)

を『堕天使』と意訳するのも案外いけるのではないだろうか。
『堕天使』が『君』の死を受け入れられない状況は、

“WE'RE DISCOURAGED STILLNESS IN TIME”(STILLNESS IN TIME)

“落胆 時間の停止”と明確に描かれている。
『堕天使』に対して『君』からの手紙が届く様子が「泳ぐ鳥」や「REBIRTH」で描かれている。おそらく手紙というよりかは、『君』が作った曲として読み進めると『堕天使』が『音』にのみ興味がある理由が見えてくる。ただ、『堕天使』はすぐに立ち直ることはできなかった。

“手紙は読まずに破り捨て燃やすよ 言葉の持つ意味や音はもうなくしたよ”(LOVE RECORD)

『君』からもらった曲を全く聞く気になれなかったのである。ここをLOVE LETTERといわなかったのも興味深い。
しかし、時間が経過する中で『君』からもらった「LOVE RECORD」を聞く決心がついた場面が訪れる。その様子が描かれているのが「AGAINST THE WALL」である。この中では『星』がキーワードになる。私達は星の光を認識した場合、それは星が過去に放った光を認識したことになる。この場合の星の光は『君』から過去にもらった「LOVE RECORD」である。

“頭上に渦巻く星が届けた光は 地上の木や石を心を照らすよ
越えなくては前に進めない壁を突き破って 言葉では表せない形を見つけ出すよ”(AGAINST THE WALL)

こうして『堕天使』が立ち直るきっかけを手に入れたタイミングで描かれているのが、

“時間をなくした街 止まった針の上で 迎えを待つ堕天使の 掛ける古いレコードの立てる乾いたノイズが 唯一の確かなもの
そこから何かが変わっていくだろう 壊れた形や消え失せた色 そこにある何かが伝えていくだろう 優しさや悲しみや遠い記憶を“(REMINDER)

「REMINDER=思い出させるための曲」として『古いレコード=LOVE RECORD』が、この世界に響いたのである。しかし、『堕天使』が立ち直るためには当然、『君』がいない世界を受け入れなければならないことになる。

“止まった時間は動き出した そこにまた悲しみが戻った”
“そこはまだ悲しみの中で 失われた美しいものを 取り戻しに行くよ”(TENDER)

ここで、立ち上がった『堕天使』が取り戻そうとしている“失われた美しいもの”について考えなければならないが、『堕天使』が美しいと思っていたものは『君』と一緒にいた時間であり、特に『君』と一緒に音を奏でて歌った時間こそが『美しいもの』と考えられる。
それは、初期衝動をそのまま形にしたような「PLAY THE STAR GUITAR」で『堕天使』が久々に手にしたギターをかき鳴らす姿が浮かび上がってくる。
そして、物語はクライマックスに進む。

“題名のない映画の最後に掛かるレコード”(SAD AND BEAUTIFUL WORLD)

この物語で出てくるレコードは1枚だけで「LOVE RECORD」しかない。しかし、時間経過とともに『堕天使』は「LOVE RECORD」を段々と手放そうとする。それは、手放しても心の中で鳴り続けることが分かったからである。
そして、最後に『堕天使』は『君』との思い出を歌にして物語は終わるのである。

“時計は壊れて時間をなくした街で 季節が変わって風の匂いに足を止めるよ 石畳の坂道を上りきったらそこで待ってるから
ギターを抱えて街外れの小川で 古いボートに乗ってでたらめな歌を歌ったんだ 森を抜ける渓流を遡っていけば仲間達の声がした
LOVE EVERLASTING
LIKE A EVERGREEN
時計は動き出し秋が終わる日に旅立った 季節は巡って風の匂いも忘れてしまうよ 石畳の坂道を上りきったら見下ろす街がすべてだった
LOVE EVERLASTING
LIKE A EVERGREEN“(EVERGREEN)

永遠の愛は色褪せない、と歌い切ったのである。
 
さて、最初の問題(「TITLE」を通して、筆者(ストレイテナーまたはホリエアツシさん)は何を伝えたかったのか)についてだが、全てが上手くいく世界ではないが、何か一つでも美しいと感じるものがあれば悲しい世界でも愛することができる、と解答したい。

ありきたりな解答ではあるが、この物語の本筋が普遍的だからこそ15年経っても愛されている証拠にもなり得る。
 
だが、ここまでの話であれば15年前でも書けた話である。

“過去から未来へ無限に繋がるメロディ”(REBIRTH)

と綴ったストレイテナーは、今も「TITLE」という世界線を違う側面からこの物語を描いているのではないか。そんな疑問が出てくる。そう思って聞き返した時に『2回目のストレイテナーにハマる瞬間』が訪れていた。

例えば、絶望から立ち上がり「EVERGREEN」を書きあげるその前に、『君』の夢を見た時の様子が「DISCOGRAPHY」で描かれている。

“世界の終わりで 『君』が歌い 踊るのを見た
まるで天使のように 透き通った空で
『君』は笑顔で泣いて さよならを言った
『僕(=堕天使)』は目を逸らさずに
ギターで君とのことを歌うことを決意した“(DISCOGRAPHY) (意訳)

絶望からもう一度世界と向き合う決意に至るまでの過程は他の物語でも見ることができる。

“君がいないそれだけ 他に何も変わらない”(Lightning)

と、物語が始まった「Lightning」は『君』の死を受け入れられていない、最初期の物語と言えるだろう。

“すべての色に 光が宿り始め 街は鮮やかに 影を取り戻すんだ
そこに立つ僕は 誰の目に映るでもなく 自分の姿でいたい“(原色)

「原色」は「DISCOGRAPHY」と同じ時期の話ではないだろうか。
そして、「冬の太陽」も悲しみを乗り越えて、逞しく歌った物語である。

“レコードの針が進まなくなったとき 答えが見つかったように君はそこにいた 景色は変わってもあの日見た場所さ その名を知っているのは僕と君だけだった”(冬の太陽)

ここまで時系列にこだわって話をするのであれば、「The Future Is Now」にも触れるべきであろう。

“エピローグに書き残した文が 次への前書きになる”(The Future Is Now)
“過去から未来へ無限に繋がるメロディ”(REBIRTH)

「The Future Is Now」も「REBIRTH」も物語の継続性を描いている、そして、今までの物語を総括するように

“未来をさあ見に行こう 過去も変えていく未来を
いつかきっと解るんだ その未来が今なんだって
光を探しに行こう 影を映し出す光を いつか君が流した
あの涙が今僕を突き動かすよ その笑顔が今僕を突き動かすよ“(The Future Is Now)

「DISCOGRAPHY」で見せた、『笑顔』と『涙』が「The Future Is Now」でも繋がった。
『笑顔』と『涙』という、対極にある2つのキーワードは『悲しさ』と『美しさ』にも繋がるキーワードである。ストレイテナーは対極にある2つを共存させることによりメッセージ性を研ぎ澄ませるのが上手いのである。
 
さて、この物語で描かれた世界は誰か一人の特別なものであろうか。
大切な人がいなくなってしまった世界は、生きていくうえで避けられない現実である。誰にでもやってくるものである。

“題名のない映画”(SAD AND BEAUTIFUL WORLD)

名前を付けるほどではないが、その瞬間に起こる出来事は映画のように記憶に残されていく。この世の中には大小の違いはあるが『悲しさ』は溢れ、受け入れながらも色の無い世界で『美しさ』見つけているのである。
 
話を2020年9月5日に戻す。
新型コロナウィルスの影響により夏フェス等、音楽イベントが中止となった世界。ライブが無くなった日常はまさに色の無い世界である。そんな状況でのストレイテナーの配信ライブ。
当日のライブでホリエさんは、「TITLE」には鳥をモチーフにした曲があり、遠くの誰かに届けたいという気持ちを歌ったものであると語った。当時は誰かにだったが、15年経ちファンの顔を思い浮かべ届けることができるまでになったと、述べた。
ストレイテナーの歌で形作られた鳥達は、無事多くのファンの元へ届けられた情景は、物語で描かれていた色の無い世界でじっとしていた『堕天使』に『君』からの手紙が届いたのと同じで、誰かの物語がいつの間にか自分の物語に昇華し、『君』にもストレイテナーという名前が付いていた。

そこから約1週間、場所は中野サンプラザ。オフライン、現実。
ついに『君』は目の前に現れた。だが、今の世界は『君』と一緒に歌うことができない『悲しい』世界である。それでも、拳を突き上げ、腕を振り、手を叩き、『君』に会えた喜びを爆発させる。

“何を恐れ 何を逃れ 何を惑う 誰も歩いたことのない未知を行こう
触れた感覚を忘れないで 心があれば取り戻せるさ“(Braver)

シングアロングできない世界で、ハンドクラップによって会場が一つになった「Braver」。ライブでホリエさんが『勇気ある者達に贈る』と添えることがあるこの曲は、生の音が鳴り響いていた日常を取り戻すべく努力を惜しまない方々(アーティストや様々なスタッフの皆様)を讃える歌として『美しく』鳴り響いた。

ライブ前に、もし「TITLE」の中からセトリに入る曲があればと予想した時に1曲だけ思い浮かんでいた。「REBIRTH」だ。そして、その予想は的中した。

“羽が折れても飛びつづけた 何をなくしても手に入れるよ
羽が折れても何をなくしても届けるよ“(REBIRTH)

半年以上、もがき続けた者達の魂の『鳥』が私の『心』に届く。

“過去から未来へ無限に繋がるメロディ”(REBIRTH)

15年前に生まれた『鳥』達を知ったからこそ、未来が今となった2020年にストレイテナーが届ける新しい『鳥』達はとても大きく逞しかった。
 
全てが上手くいく世界ではないが、何か一つでも美しいと感じるものがあれば悲しい世界でも愛することができる。
『心』があれば『悲しさ』残るこの世界でも『君』に会うことで『美しさ』を見つけられる。
『心』があれば取り戻せるさ。
 
(“ ”内は直後の( )の楽曲より引用)
 
 講評
ストレイテナーが配信で行ったメジャー2ndアルバム『TITLE』(2005年リリース)の再現ライブを機に、今一度『TITLE』の歌詞世界を掘り下げた文章です。歌詞の隅々まで目を通し、想像を巡らせた「15年後の答え合わせ」でハッとさせるだけではなく、「ひとつのアルバムについてとことん思考する面白さ」も教えてくれました。コロナ禍である時代性を絡めつつ、「今」にしっかりと結論付けているところもリアリティがあって高評価です。
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