4042 件掲載中 月間賞毎月10日発表
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

米津玄師が導いてくれた「カムパネルラ」と「銀河鉄道の夜」の世界

フルスロットルで駆け抜けた米津玄師の暑い熱い夏を振り返り思う事。

推しの存在は偉大である。

私は読書が苦手だった。
子供の頃、夏休み宿題のお決まりである読書感想文を読書せずにどう乗り切るかが毎年の焦点だった。
こんな自分が読書という「文章と向き合う事」を克服しようとしている。
そして恐れ多くも「音楽文」を書きたいと思うとは夢にも思わなかった。

米津玄師

彼は自身を音楽家という。
作詞、作曲、アレンジ、プログラミング、歌唱、演奏、動画、アートワークも手掛ける驚異の才能の持ち主である。

彼を支持し曲を聴く年齢層は
中高生〜20代前半の若者と呼ばれる世代と思っていた。
高校生の子供がいる自分がこんなに夢中になってる事に私が一番驚いている。
SNSで彼の魅力を語るのは若者世代だけではない。
現役子育て世代がたくさんいるという現実に安堵したのは、ほんの数年前である。

私にとって彼の最大の魅力は声と歌詞だ。
そして想定の遥か上をゆく、圧倒的に美しい音楽を世に送り出すたびに度肝を抜かれる。
ニューリリースの歌詞やインタビュー記事が公開されると、まず初見の日本語の意味を調べるのが毎回恒例となる。自分の無知を痛感しつつ調べを進める事が本当に多々あるのだ。
歌詞に難しい言葉を使うのには拘りがあり
読解が容易い簡単な単語には色々な意味を含む事が多く伝えたい意味を端的に表現しようとする結果
難しい言葉が歌詞として使われたりするのだという。

例えば、17年6月にリリースされた7枚目のシングル
「ピースサイン」にある
「衒いも外連も」
初見で分かる人はかなり少数だろう。
衒い(てらい)とは
自分の才能をひけらかしたり実際よりもよく見せる事
外連(けれん)とは
演劇において観客を楽しませる為の奇抜な演出や
ごまかしたりはったりをする事

この2つの単語で大切なモノを守る為に何が必要で不必要かを的確に浮かび上がらせるという卓越した言葉選びのセンスを思い知る。
ゆえに彼の紡ぐ日本語の表現が靱やかで普遍的でとても美しいのだと納得する理由の一つだろう。

2020年8月5日に2年9ヶ月ぶりの発売となった5枚目のアルバム
「STRAY SHEEP」
は発売日前日で100万枚出荷のフラゲミリオンというプロローグで幕を開ける。
全世界の音楽セールスチャートを発表している「WORLD MUSIC AWARDS」のCDアルバムセールス部門8/24付けで第一位となり
「この星の一等賞になりたいの俺は」
という17年2月16日に米津がツィートした自身の夢の一つが揺るぎない事実として確立されたのも記憶に新しい。

そのアルバム1曲目に収録された
「カムパネルラ」
宮沢賢治「銀河鉄道の夜」がモチーフとされるこの曲。
可能な限り読書から遠ざかっていた私が、登場人物の名前だと知ったのは収録曲発表翌日、SNSの書込みからだった。
読書家の彼がこれまでも小説や聖書、十返舎一九の句からも歌詞引用しているのを知りつつ自分の中で見過ごしていたが、なんとしてもリリース前に読みたいとスマホで文書購入するのに迷いは無かった。

今はあまり見かけなくなったカタカナ表記も言い回しもなんとかクリアし読み進める。アプリによるのかもしれないが既読ページがどれくらいで読み終わりまで何%何分か迄が一目瞭然のスマホ読書に驚く自分の不甲斐なさがちょっと情けない。
読み終えた達成感と自分なりの「銀河鉄道の夜」を胸に、フラゲ日に手元に届いたその曲は、私の中にぼんやりとあった白黒のブラウン管テレビがいきなり有機ELディスプレイ搭載の最新映像になったような、天と地ほどの違いだった。その完成度の高さに鳥肌が立ち自分史上の最高傑作を手にした感動で指が震えていた。
歌詞の一言一言が滑らかで繊細でそれでいて切ない。
アルバム作りで一番最後に作ったというこの曲は
15曲目「カナリヤ」制作終了時で納得していたら生まれなかったのかもしれない。
彼が気持ちいいと感じるまま形になり、アルバム1曲目としてのラインナップに相応しい素晴らしい曲となったと思う。

続いて公開となったMV映像の彼は
あまりにも神々しく尊い。
天を仰ぎ叫ぶように歌う姿も
正面を凛と見つめる瞳も
彼の手から剥がれ落ちる黄金の欠片も
横顔の美しさも
歌詞やメロディが作り出す世界観にも
すべてに心を奪われた。
映像には列をなして歩く着物姿の人々が登場するが
黒喪服ではなく礼装、黒留袖であったのに安心した。
カムパネルラの不慮の事故への弔いではなく
まっすぐに進みほんとうの幸福を求めると強く心に決めたジョバンニの成長を祝福し応援する意味があるのかもしれない。
そしてカムパネルラを偲ぶザネリの心情が心に突き刺さる。
この本を読んで本当によかったと思う瞬間だった。

このMVをリアルタイムで視聴し曲を聴ける事がとても嬉しい。
何より彼と同じ母国語を話す事や同じ時代を生きている事に感謝したいと心から思う。

普段、ほとんどメディアに出る事の無い彼だが
2020年夏
ドラマの主題歌担当
テレビのインタビュー出演
ラジオで初のマンスリーパーソナリティ担当、ゲスト出演
恒例となったニューリリースCDについてのラジオ的配信
「ROCKIN'ON JAPAN」9月号での
超ロングインタビューをはじめ
雑誌、プレスサイトのインタビュー、記事掲載
製薬会社のCMソング起用
オンラインゲーム内でのバーチャルイベント開催
アパレルメーカーとのコラボTシャツ発売
等々
怒涛のメディア起用で暑い熱い夏を演出してくれた。
まさに嬉しい悲鳴をあげていた日々であった。
まだ熟読出来ていない掲載記事や
同アルバムアートブック盤に収録された
2019年TOUR「脊椎がオパールになる頃」のフルライブ映像を、彼が次にメディアへ降臨されるまでの間にじっくり堪能したい。

そして私にとって最大の難関「文章と向き合う事」に挑み始め、やっと3冊目を購入し少しずつ読み進めている。
COVID-19新型コロナウィルス感染のリスクを考慮し、お盆は会えなかったが読書感想文を頑なに嫌がる小学生の私を宥めつつ、なんとか宿題を終わらせようと促してくれた母に次に会えた時には、今も健在で居てくれる事の感謝と推しの存在は偉大である事を伝えたいと思う。
  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい