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それはもう、「尊い」そのもの。

藤井 風に重ねた、退職間際のアラサーの心境

これまで感じた以上に、尊かった。

私はこの9月いっぱいで今の職場を去る。これを書いている9月の中旬、業務引継ぎの真っただ中だ。今の職場には部署立ち上げのために入社した。私はその部署の一人目の社員だった。だから、業務やルール、仕組みをガンガン作ってきた。粗削りな状態で運営を始め、社内や顧客からフィードバックがあるたびに手直ししてきた。いま改めて思うが、わが子のような感覚を抱いている。

引き継ぎで私の手から離れていく様は、きっと家を出る子供を見送る母親の気分に近いんじゃないか。

同僚や顧客との別れが近づいていることもあいまって、すこしセンチな気分になっていた。そんなとき、好きなアーティストのMVが公開された。
藤井 風の「帰ろう」だ。
 
彼がまだデビューする前の10代だったころから知っていた。YouTubeに上がっていた動画には、まだ初々しい少年が力強くピアノを弾きながら歌う姿がおさめられている。私が大好きな椎名林檎嬢の曲をよくカバーしていたから、チェックしていた記憶がある。今も公開されているので、時々見ている。
初々しいんだけど、色気もある。

そんな彼がデビューすると知ったとき、胸が高鳴った。その一方で、こんな才能あふれる彼が多くの人に知られてしまうことに嫉妬心も覚えてしまった。
 
本人の解説によると、この「帰ろう」という曲は彼自身の死生観をつづったものだという。私は30歳を超えているが、まだまだ自分が死ぬときのことなんて想像がつかない。まだ死にたくないし、死ぬのは怖い。
「死は終わりじゃない、スタートだ」というこの歌詞を書ける23歳、人生何周目なんだろう。

この曲は別れを控えている私の心に響いた。
今の職場での「私」はここで終わり。ある意味、死ぬわけだ。
私がいなくなったあとも、職場は問題なく回る。実際に、いま後任は危なげなく業務をこなしている。
「私がいなくても、もうだいじょうぶだね」と安心して去っていける。
 
正直に言えば、同僚や上司と衝突することもあった。
「なんで伝わらないんだろう?」「理解されないんだろう?」と悩むことも頻繁にあった。お互い実現したい世界があるのはわかっていた。お互いの正義を貫くためにお互い譲らなかった。ただ、その積み重ねでお互いの価値観を理解できたことも事実だ。

そんな思い悩む日々も、これで終わる。でも、少し寂しいな。
 
顧客へ退職を伝えるべく、挨拶のメールを出した。すると、想像以上に返信があった。
「あなたは貴社サービスの顔でした」
「相談できなくなるのは寂しくなります」
「あなたほど、気持ちのいい対応をしてくれる人には会ったことがない」
 
返信なんてくれなさそうな方からも返信があった。
大量のメールを前に、成仏したかのような感情が生まれている。
 
「もっとこうすればよかった」と未練を残して去っていくと思っていた。この「帰ろう」という曲、身軽にして去っていく様子が描かれている。会社を去る今の私は、想像以上に心が軽くなっている。
今の私の心境にピッタリなので、真っ先に「尊い」という言葉が頭に思い浮かんだ。
  
今の職場での私は、もう終わる。でも、私には次のステージが待っている。
これは終わりじゃなくて、むしろスタート。
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