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私立恵比寿中学のちゅうおん

秋雨と虫の音と歌声と

9月19日、私は同居人と一緒に久しぶりにライブ会場へと足を運んだ。

1月に参加したエレカシの新春ライブ以降、新型コロナウィルスの影響があり、いくつかの参加が決まっていたライブは開催中止に。
仕方がないことだけれども意気消沈。

それから8ヶ月ほど経ち、やっと私は生の演奏・歌声が楽しめるライブに行けることとなった。

それがスターダスト所属女性アイドルグループ・私立恵比寿中学の『ちゅうおん』である。
この『ちゅうおん』は、2017年・2018年・2020年の計三回開催されている。
私と同居人は初めての参加だ。

屋外ステージで開催され、観客は全員着席していなければならない。
アイドルのライブでよく耳にするコールも無し。
バンドの生演奏と、秋の空に響かせる虫たちの音色と共に、エビ中の歌声に静かに聴き入る為のライブ。
それが『ちゅうおん』である。
 
7年ほど前にエビ中ファンになった私は、少しずつ同居人を洗脳していった。
「エビ中って可愛いアイドルがいてね!」と熱く語るのではなく、静かにエビ中のMVやライブ映像に見入る。
同居人の前でそれを繰り返す。
すると興味を持った同居人は、「何を見てるの?」と私に聞いてくる。
この時を待っていた。ここがチャンスなのだ。
「エビ中っていうアイドルがいるんだけどね」と語りだす私。
時には熱を込めて、時にはしんみりと。緩急をつけて語るのだ。
そしてこの動画を見たら必ず沼に落ちるはずと確信が持てる、厳選した動画のURLを同居人のLINEへと送る。
この時、送るURLの数を多くしてはいけない。
多くても三つほどが適正だろう。
一つや二つの動画なら観ようと人間は思うからだ。
そしてLINEには既読という、私個人としてはあまり好ましくない機能がついている。
未読スルーという技もあるにはあるが、同居人と私は恋人関係にある故、その技は使わないであろうと判断。
必ず既読をつけるはずだ。そして感想を私に送る為に一つは動画を観るはずだ。
そう、URLを送る順番にも気をつけなければならない。
絶対に観るであろう一つ目の動画こそ、一番心を震わせる映像を選択するべきなのだ。
二つ目はその映像とはギャップのあるものを選択し、相手の好奇心を掻き立てさせる。
三つ目は自由に選ぶといい。相手が観るとも限らないので、とにかく自分が好きな映像を選択しよう。
URLを送った後は、絶対に感想を求めてはならない。
感想を求めてしまうと、そこに義務が発生する。義務的な感想ほど無意味なものはないのだ。
ただ待つ。ひたすら待つ。
そして返事が来た時、そこにはエビ中の沼に落ちた同居人の言葉が羅列されるのだ。
 
とまぁ、こんな形で私と同居人はエビ中のファン、つまりエビ中ファミリーの一員となった。
今や私以上に同居人の方がエビ中の虜になっている訳だが、沼に落とさせた甲斐があるというものだ。

そんな私と同居人は、どうしてここまでエビ中にハマるのか。
アイドルとしてキラキラしているから。
とにかく可愛いから。
成長していく過程に涙腺が緩むから。
理由はいくつか存在するが、一番の理由はきっと、「メンバー全員歌が上手いから」だ。

前置きが長くなってしまった。
正直、正直、私は内心「ライブ中のコールうるせぇ」と思う時がある。
それがライブを盛り上げる為に必要なものであると理解しているので、ちょっと嫌だなぁ程度なのだが。
なのだが、うるせぇ。私はエビ中の歌声が聴きたいんじゃ。
会場がホールになると、ファミリーのコールにエビ中の歌声がかき消され、私は何を聴きにきたんだろうと思ってしまったこともある。

そんな私にとって、コール無しの『ちゅうおん』というライブは非常に魅惑的なのだ。
エビ中の歌声だけに集中できる。それがどれだけ幸せなことか。

『ちゅうおん』では彼女たちの楽曲だけではなく、様々なアーティストのカバーも披露される。
予想外の楽曲がカバーされたりするので、エビ中のマネージャーである藤井校長がTwitterで箝口令を敷くのにも納得がいく。

エビ中全員でカバーするだけでなく、メンバーそれぞれがソロでカバーを披露するのも『ちゅうおん』の醍醐味であろう。

真山はOfficial髭男dismの「ノーダウト」。
美怜ちゃんはSuperflyの「タマシイレボリューション」。
ひなたはiriの「Wonderland」。
彩ちゃんはきのこ帝国の「金木犀の夜」。
ぽーちゃんは中島みゆきの「糸」。
りったんは奥田民生の「愛のために」。

バラエティに富んだ選曲で、特にりったんの奥田民生には驚かされた。
りったん持ち前のパワフルさ、りったんらしさ全開の「愛のために」が観客全員の心を掴む。
奥田民生とりったん、意外と根っこは似ているのかもしれない。

初めて聴いた、彩ちゃんが歌った「金木犀の夜」。
私は昔からどうにも、切ない曲にはとてつもなく弱く。
それがあの彩ちゃんの優しく繊細な声で、表情豊かに歌われたらもうね。
随分と長いこと会えないあの人に会いたくもなる、そんな気持ちを呼び起こされてしまった。

『ちゅうおん』の夜の部に参加したので、少しずつ日が暮れていく景色が印象的で。
期待を裏切らないほどの雨女ぶりを発揮したエビ中、強弱をつけながら降り注ぐ雫を全身で浴び、これすらも演出の一つかと思えたものだ。
りななんが楽しそうに笑っているんだろうなと、そんなことも頭に浮かんだ。

ここまでつらつらと綴りながら、そしてたまに音楽文というものを投稿しながらも、実は感想やレポを書くのがとてもとても苦手である。
私が書くと陳腐なものに思えてしまって仕方がない。魅力が最大限に伝わらない。
なのでそろそろ今回の記事を終わらせよう。

私が今の彼女たちの年齢の頃に、彼女たちを知り、好きになり。
それから長い月日が経ち、彼女たちは良くも悪くも、大きな大きな経験を積み重ねてきた。
そんな彼女たちを応援し続け、私も32歳という年齢まで来れたことに少し驚いている。
こんなに長いこと、私は彼女たちから元気をもらっていたのだな。

大人になった彼女たちの歌声には、自分たちの力でやってやるという力強さが根付いている。
秋の雨と虫の音と、そんな素晴らしい音楽に包まれた至福の時間。
もっともっと包まれていたかったから、来年もまた聴けたらいいな。
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